五百九十四話 ハンナさんの結婚式情報

 午後からは、場所をバザール子爵領に移します。

 ハンナさんに挨拶に行かないとね。


「皆様、お元気そうで何よりです」


 応接室に案内されると、綺麗なドレスに身を包んだハンナさんがやってきました。

 ハンナさんとは色々な結婚式で顔を合わせているけど、ゆっくりと話をするのは久々ですね。


「そういえば、婚約されたと聞きましたわ」

「はい、復興担当として派遣された方と婚約する事になりまして。お相手も、子爵家の出身で爵位的にも問題ないとの事です」

「そう、それはおめでたい事だわね」


 ティナおばあさまも思わずニコリとしているけど、ハンナさんも前と比べるとだいぶ表情が明るくなったね。


「来年の夏頃に結婚式を挙げる予定です。お世話になりました皆様方に、招待状を送付する予定です」


 来年の夏だと、出産予定の人達も大丈夫だね。

 特にジェイド様とソフィアさんはあのバザール領の事件に直接絡んでいるし、結婚式に参加したいはずです。

 そして、午後から参加するこの人もバザール領での事件の関係者です。


「それなら、閣僚は全員バザール領の事件に絡んでいるし、結婚式に参加しても全く問題ないな」

「全くその通りですな。我々も結婚式に参加できますな」

「えーっと、その……」


 既にハンナさんの結婚式に参加するつもりなのは、午後から参加する農務卿と軍務卿です。

 名目上は新しく出来たバザール子爵領の治療研究所の視察だけど、どちらかというとあの万能ソースの新製品の購入が本当の目的でしょう。


「いやあ、あのソースは軍の行軍訓練でも役立ってるぞ。行軍だと持っていける調味料も限られるが、小瓶に入れれば良いし最近は必ず軍の管理する魔法袋の中に入っているぞ」

「それは、その、バザール子爵領の製品を使って頂きありがとうございます」


 ハンナさんは上機嫌な軍務卿への返答に困っているけど、あのソースをかけるだけで、野菜炒めも美味しくなるんだよね。

 肉にかけて焼くだけでも良いし、乾パンと干し肉だけじゃ士気も下がるから軍の為になっているのは間違いないですね。


「それに、バザール子爵領の開拓が進んだお陰で、王都へ安定的に野菜が供給できている。これはとても大きな功績だ。引き続き、無理のない範囲で開拓を続けてくれ」

「畏まりました」


 バザール子爵領は開拓計画し放題って、前に王都から派遣された人が言っていたよね。

 魔法使いの冒険者も開拓に活躍しているし、これからも農作物の生産は上がるそうです。

 それでも、王都では直ぐに野菜を消費しちゃうんだって。

 そして、僕はある事に気が付きました。


「ティナおばあさま、確かバザール領での事件はルーカスお兄様とルーシーお姉様も調査に参加していましたよね? エレノアもいましたけど、そうなると他の王族もハンナさんの結婚式に参加したいと言い出しそうですが……」

「そうね、ルーカスは貴族の裏側を知るきっかけになったし、結婚式に参加したいと言ってくるはずね。後で誰が結婚式に参加するか、打ち合わせを行いましょう」


 ハンナさんの結婚式は想像以上に大規模になりそうだけど、皆がハンナさんが結婚して良かったねと思っているはずだよ。


「それに、バザール子爵領の料理なら期待できますな」

「全くですな」


 えっと、農務卿と軍務卿が既に料理の期待までしているけど、ここはハンナさんの慶事を皆で祝ってあげましょうね。

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