五百九十一話 ジンさんが心配お兄ちゃんモードです
次の目的地は、ブランダーク男爵領です。
僕達は、屋敷に行ってランディさん達に挨拶をします。
「皆さん、お待ちしておりました。昼食も準備できておりますので、食堂に移動しましょう」
早速ルルーさんが僕達を出迎えてくれました。
というか、ルルーさんは正妻なのに未だに侍従服だよ。
お腹ペコペコのリズ達は、昼食の話が出てテンションが上がっています。
「ルルー、体は大丈夫か? 何か困った事はないか?」
「お兄ちゃん、心配し過ぎだよ。前からブランターク男爵領に来ていたし、何も心配する事はないわよ」
おお、ジンさんが世話やきモードになっているよ。
それだけ、離れて暮らしている実の妹の事が心配でたまらないんだね。
「ジン、あまりしつこくするとルルーに嫌われるよ。ルルーもいい大人なんだから、たまに連絡するくらいでいいんだよ」
「そ、そうか? うーん……」
「ふふ、お兄ちゃんらしいね」
レイナさんから注意を受けても、ジンさんはまだ納得できていないみたいです。
そんな兄の事を見て、ルルーさんも仕方ないなあといった表情です。
「いつも妹の心配をするお義兄の気持ちは、私にはよく分かりますわ。私に全く連絡をしてくれないレイナお姉様とは大違いですわ」
「ち、ちょっと、クラヴィーア何言っているのよ!」
今度は食堂の前で待っていたドレス姿のクラヴィーアさんが、実姉であるレイナさんにツッコんでいました。
皆が、レイナさんをジト目で見ていますよ。
「ふふ、では午後も頑張らないといけないので、リズちゃん達はいっぱい食事を食べないとね」
「「「はーい」」」
ここはルルーさんが上手く話題をそらせてくれたので、そのまま食事の話にしちゃいましょう。
食堂のテーブルには、既に料理が並べられていました。
「あれ? ランディは?」
「まだ仕事が終わらないのよ。景気が良くなって、人も増えてきたのよ」
「先に食べちゃって良いわ。許可は貰っているのよ」
ルルーさんもクラヴィーアさんも、仕方ないって感じです。
継続して忙しいなら、辺境伯領から応援を頼んでも良いかもね。
「「「もぐもぐもぐ、お肉おいしいーよー!」」」
「それは良かったわ。今日は鹿肉の生姜焼きよ。今の時期は鹿も猪もよく出るから、冒険者とブランターク男爵兵に頼んで間引いているのよ」
本当に美味しそうに食べているリズ達を見て、ルルーさんもニコニコとしています。
とっても美味しい料理で、僕もいっぱいお肉を食べちゃいました。
と、ここでジンさんがまたもや心配お兄ちゃんモードになってしまいました。
「なあ、もし害獣駆除が大変なら、俺がやってやるぞ。それこそ、魔物溢れがまた発生したら大変だ」
「お兄ちゃん……」
「お義兄様……」
ジンさんのこの発言に、流石のルルーさんとクラヴィーアさんも呆れてしまいました。
カチャ。
「お義兄様、心配して頂くのはありがたいですが、今は冒険者も兵も増えてきました。万が一の時には、お義兄様にちゃんと救援要請をしますので」
「そ、そうか……」
と、ここでやっと仕事が終わったランディさんが食堂に入ってきました。
良いタイミングでジンさんの話の腰を折ってくれたので、主に大人達はホッとしています。
そんなジンさんに、レイナさんとカミラさんがとある提案をしました。
「ジン、そんなに心配なら薬草採取の時に適当にならない程度に害獣駆除をしたら?」
「薬草は研究所がある辺境伯領に持っていかないといけないけど、害獣ならブランターク男爵領の冒険者ギルドに卸せるわ。それなら、ブランターク男爵領のためにもなるわ」
「そうか、そうだな!」
流石レイナさんとカミラさんです。
ジンさんのテンションが一気に回復しました。
元々薬草採取の護衛は襲ってくる動物や魔物を倒すのが仕事だから、適度に害獣駆除をする分なら大丈夫だね。
「お兄ちゃん、冒険者や兵がやる仕事は残しておいてね」
「いや、しかし……」
「お、に、い、ちゃ、ん!」
「……はい……」
ジンさん、腰に手を当てているルルーさんに怒られてまたどよーんってしちゃったよ。
確かに、他の人の仕事を奪っても仕方ないよね。
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