五百五十話 大忙しの屋敷の捜索

 僕とルーカスお兄様は、ナイツ子爵邸の応接室で待機します。

 現場は、オーガスさんが指揮してくれます。

 レイナさんもティナおばあさまもいるし、大丈夫でしょう。


「さて、誰が一番最初に駆け込んでくるか、だね」

「僕はやる気満々だったリズが、最初にやってきそうな気がします」

「はは、それはどうだろうね」


 僕とルーカスお兄様は、侍従が出してくれた紅茶を飲みながら皆が来るのを待っています。

 因みに、この紅茶はちゃんと鑑定して大丈夫なものです。

 お菓子も普通に美味しいし、何だか屋敷の人たちが僕達を主人みたいに扱ってくれます。


「その、子爵様と嫡男様は乱暴な方で、気に入らないと紅茶の入ったカップを私達に投げつけたり、お菓子の入ったお皿を床に叩きつけたりしてきました」

「えっ、怪我はしてないのですか?」

「実は、屋敷にいるほぼ全ての侍従が怪我を負っております……」


 僕も実際に対面したから分かるけど、ナイツ子爵と嫡男は横暴な感じだったよ。

 魔獣化する前から、人格的に駄目な人だったんだね。

 僕もルーカスお兄様も、思わずびっくりしちゃいました。


「アレク、治療してやってくれ。怪我をしたままでは、キチンとした仕事も出来ないだろう」

「分かりました。直ぐに対応します」

「過分なご配慮、感謝いたします」


 ルーカスお兄様の指示も出たので、僕は順番に応接室に入ってくる屋敷の使用人の治療を始めます。

 僕としても良い暇つぶしになるので、とっても助かります。

 しかし、侍従が来る度にお菓子とかを持ってくるので、テーブルの上がお菓子だらけになっちゃいました。


 とてとてとて。


「にーに、るーにーに、見つけたよー!」

「変なのあった!」

「これは、私も見てびっくりしたわ」


 応接室に一番乗りでやってきたのは、宝物を見つけたという表情のミカエルとブリットにちょっと困り顔のティナおばあさまでした。

 ミカエル達は嫡男の寝室で探し物をしていたはずだけど、一体何を見つけたのかな?

 ミカエルから何かのメモを受け取ったルーカスお兄様が、びっくりした表情をみせました。


「アレク、確かにとんでもない物だぞ。薬の運搬を依頼した冒険者の一覧だ」

「えっ、あっ、確かにこれはとんでもない物ですね。ミカエル、これはどこにあったの?」

「うんとね、ベッドの下にあった!」

「ベッドの下か。確かに子どもの目線じゃないと分からないね」


 ルーカスお兄様も思わず苦笑するけど、僕は若干兵の確認が不足しているんじゃないかなって思ったりもして。

 と、ここでティナおばあさまが応接室に並んでいる侍従を観察していました。


「はあ、成程ね。色々な箇所に怪我をしている訳ね。侍従の動きがぎごちないわ」

「はい。なので、僕が治療をしていました」

「そう、治療は続けても問題ないわ。もしかしたら、街の人の医療体制にも問題があるかもね」


 流石はティナおばあさまです。

 チラッと侍従の動きを見ただけで、怪我をしているのを把握していました。

 今は街の事まで手が回らないけど、街の人の治療も検討しないとね。


「いたくなーい?」

「大丈夫?」

「はい、すっかり楽になりました。ありがとうございます」


 ミカエルとブリットはと言うと、僕とティナおばあさまの話を聞いて怪我をしている侍従の治療をしていました。

 やっぱりミカエルとブリットは、とっても優しい子だね。


「にーに、行ってくる!」

「行ってきまーす!」

「気をつけてね」


 そしてお菓子を食べて元気満々になったミカエルとブリットは、ティナおばあさまと一緒に再び屋敷の捜索に戻っていきました。


「お兄ちゃん、何か見つけたよ!」


 おっと、応接室にリズ達が駆け込んできました。

 そろそろ、皆も色々な物を見つけそうですね。

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