五百四十二話 何とか撃破

 僕は状態異常回復魔法を反射した侍従を鑑定したけど、普通に鑑定できた。

 屋敷の侍従であるのは間違いないし、状態異常も表示されない。

 きっと、あのメイド服に何か秘密があるんだね。


「ははは、お前らはここで死ぬのだ!」

「死ねー!」

「ぐっ、魔法障壁を」


 ズドーン、ズドーン、ズドーン。


 ナイツ子爵と嫡男が、侍従を盾にしたまま僕達目掛けて魔法を乱射してきます。

 ジンさんの掛け声を合図にして僕達は魔法障壁を張るけど、魔獣二人分の魔法なので結構な威力があります。


「くそ、このままではジリ貧だな。何とかして、侍従を引きはがさないと」


 下手に攻撃をすると侍従に当たっちゃうので、こちらも迂闊な行動を取れない。

 どうしようかと思っていたら、すすすとナイツ子爵と嫡男の後ろに回り込むものが。


 しゅっ、ぐさ。

 バリバリバリ!


「「あー!」」


 スラちゃんとプリンがナイツ子爵と嫡男の背後にこっそりと回って、電撃を帯びた触手を二人のお尻に突き刺しました。

 うん、魔獣化してもあれは痛いよね。

 というか、何でスラちゃんは悪い人のお尻に触手を突き刺すんだろうか。


「とー!」

「吹き飛べ!」

「「ぎゃー!」」


 ずどーん。


 このタイミングを見逃す僕達ではありません。

 リズとレイナさんが、ナイツ子爵と嫡男の顔面目掛けてドロップキックをくらわせました。

 ナイツ子爵と嫡男はドロップキックをもろにくらい、派手に吹っ飛んでいきました。


「大丈夫?」

「は、はい。ありがとうございます」


 その瞬間を逃さずに、ティナおばあさまが侍従をこちらに連れてきました。

 ティナおばあさまは侍従をお姫様抱っこをしていて、とってもカッコいいです。

 と、ここで僕はアイテムボックスから秘密兵器を取り出しました。


「えーい、これでもくらえ!」

「「ぐあーーー!」」


 僕がナイツ子爵と嫡男に投げつけたのは、一見するとポーションが入ったただの瓶です。

 実は治療研究所が開発した、状態異常回復を治すポーションです。

 今後普通に発売する予定なのですが、魔獣化した者にも効果があるのではないかと思い数本サンプルを貰いました。

 効果はてきめんで、瓶が割れて中の液体を浴びたナイツ子爵と嫡男はかなり苦しみ始めました。

 そして、追撃とばかりにジンさんがキラリと聖剣を抜きました。


「これでもくらいやがれ!」


 きらーん。


「「ああーーーー!」」


 聖剣から発せられた状態異常回復魔法を浴びたナイツ子爵と嫡男は、更に苦しみもがき始めました。

 もうここまで行けば大丈夫でしょう。

 僕とリズは、再び魔力を溜め始めました。


「「いけー!」」

「そんな、馬鹿なーーー!」

「世界の王になるという目標がーーー!」


 ドーン。


 今度は僕とリズの合体魔法を弾く事も出来ずに、ナイツ子爵と嫡男は派手に倒れました。

 再び鑑定すると、瀕死状態だったけど状態異常は元に戻っていました。

 スラちゃんが二人に回復魔法をかけていたから、問題なさそうですね。


「あー、またおじいちゃんになっちゃったよ」

「どう見ても魔獣化の薬の反動ね。うーん、まともな事情聴取が出来るかちょっと不安ね……」


 ナイツ子爵と嫡男は、入園式で暴れたあの三男と同様に髪は真っ白になって太っていた体は痩せこけてしわだらけになってしまいました。

 ティナおばあさまのいう通りに、二人は意識を取り戻してもまともに話せる状態なのかちょっと不安です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る