五百四十三話 ピエロの声
ジンさんとレイナさんがナイツ子爵と嫡男を縛り上げて、スラちゃんが長距離転移で二人を王城に連れて行きました。
「さて、主犯を押さえたし、後は屋敷の捜索を行わないとな」
「でも、どうせ何も残っていない気がするわ」
「ふふふ、その通りだ」
「「誰だ!」」
ジンさんとレイナさんが話をしていると、部屋の中に謎の声が響き渡りました。
皆が一斉に部屋の中を見渡すけど、誰かが部屋の中に現れた気配はない。
でも、この人だけは直ぐに状況が分かったみたいです。
「この声、ピエロか!」
「流石はティナ様ですな。その通りでございます。しかし、声だけで直接お会い出来ないのは私も残念です」
ティナおばあさまが部屋の空中を見つめていたけど、確かにこの声は僕も聞いた事のあるピエロの声だった。
という事は、前に映像だけでピエロとドクターが現れた事があったけど、その時と同じ状況なんだろう。
「先ずは、ナイツ子爵領の制圧おめでとうございますとお伝えします。しかも、各地に魔獣を発生させたのに全て撃退されてしまいました。新たな薬をお作りになるとは、流石で御座います」
「それはどうも」
ピエロの丁寧だけど人を馬鹿にした声が部屋の中に響くけど、やっぱり各地に魔獣が現れたんだ。
ティナおばあさまは、真剣な顔を崩さないで部屋に響くピエロの声に答えていました。
「どうせ直ぐに分かりますが、ここはただの薬物供給の拠点の一つ。潰された所で痛くもかゆくもありません。回復魔法を反射する素材の開発のテストも行えたし、我々としても大変満足です。では、またお会いしましょう」
「ピエロ、逃げる気か!」
ティナおばあさまの怒号が部屋中に響き渡るが、ピエロの声が再び聞こえる事はありませんでした。
ティナおばあさまは少し目をつぶって、そして皆に指示を出しました。
「これ以上考えてもしょうがない。予定通り追加の兵を呼び寄せて、屋敷と街の制圧を行いましょう」
「ティナおばあさま、この侍従はどうしますか?」
「王城で事情を聞いてもらうわ。あなた自身に罪はないけど、色々と話を聞かせて貰わないとならないのでね」
「承知いたしました。私も主様の罪を把握しておりましたので」
という事で、一旦王城にゲートを繋いで兵を呼び寄せました。
現場はジンさん達とスラちゃんに任せて、僕達は一度王城に戻ります。
「ねえおばあちゃん、リズ達がまた宝探しをするよ」
「そうね、屋敷を完全に制圧したら皆に手伝って貰いましょう」
今は闇ギルドの構成員が残っているかもしれないし、現にスラちゃんがどんどん長距離転移で拘束した構成員を王城に連れてきています。
それよりも、各地で何があったかを確認しないといけないですね。
丁度兵の詰め所に軍務卿がいたので、話を聞いてみましょう。
「はあ。アレク、ミカエルとブリットに勝手に飛び出すなと言ってやれ」
えーっと、何だか軍務卿が疲れた表情をしているけど、この分だとミカエルとブリットが何かをやらかした可能性が高いぞ。
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