五百十五話 密売組織の動向
今日も王城で会議を行っていて、議題は闇ギルド関連になっています。
あの人型を保った魔獣の事件の捜査は軍が主体で行われていますが、闇ギルドがアジトとして使っていたと思われる所に既に人は誰もおらず書類も全て抹消してありました。
スラちゃんも念入りに部屋中を探したけど、何も見つからなかったそうです。
三男は薬の後遺症で意識が混濁している時もありますが、供述からドクターの関係者が薬を渡した事が判明しました。
三男は強くなりたいと思い薬に手を出したそうですが、薬を飲んでからは記憶が曖昧な所もあるそうです。
とはいえ、自分が手を出した事の重さは重々承知していて、テシウス伯爵夫妻も子どもの暴走を止められなかった事を重く受け止めており処分を甘んじて受け入れるそうです。
「密売人から薬を手に入れていたのは間違いない。逆に言うと、密売人に接触すれば誰でも薬を手に入れられるという事だ」
陛下は少し困った様子で話をしていて、閣僚も同様の表情だった。
今までは闇ギルドの活動方針に同意したり何かしらの反感を持っている人が薬に手を出している事が殆どだったのに、これからは一般市民も薬に手を出す可能性が出てきたのだ。
「貴族に周知するのは勿論の事、各ギルド組織にも密売人を見かけたら報告する様に通知をだそう。何もしないよりかは良いだろう」
「意外と、各ギルドから上がってくる情報の中に貴重なものが入っているかもしれませんな」
陛下と宰相が話をするけど、本当に意外な所から情報が出てくるかもしれません。
ともあれ、入園式を貴族の子弟が魔獣化して襲ってきたという事実があるので、特に入園式に参加した貴族は捜査に協力的だそうです。
「テシウス伯爵家は一段階降格で当主は交代、三男は強制労働刑が無難でしょう」
「そのくらいの刑罰が妥当だな。まあ、当面三男は治療が必要だかな」
貴族にも闇ギルドとの関わりをしたら、これくらいの罰が出ると知らしめなければならない。
ここで、僕は陛下にある事を提案しました。
「陛下、三男には魔獣化した場合の解毒薬開発の協力をさせる事は可能でしょうか? 状態異常回復魔法で魔獣化を解除させる事ができるのが確認できていますので、軍と治療研究所が協力すれば解毒薬が作れるのではないかと考えています」
「アレク、良い提案だぞ。実はその件は既に動き出している。三男には定期的に血液を提供させて、解毒薬がどの様な効果が出るかを検証させる予定だ」
陛下は、僕にニヤリとしながら質問に答えていました。
既に手を打っているなんて、やっぱり公務の時の陛下は流石です。
解毒薬が開発できれば、魔獣化した人が現れても僕達がいなくても何かしらの対応はできますね。
「密売人というキーワードが出てきましたので、軍も密売組織と売人の追跡に全力をあげております」
「地道な捜査が必要だ。引き続き行う様に」
軍務卿が今後の捜査方針を伝えた所で、会議は終了となりました。
「うーん、何でそこまでして強くなろうとしているんだろう?」
「人は他人の才能に嫉妬する生き物よ。努力する才能があれば良いけど、手軽に強くなるとしればその方法に手を出すわ」
今日も会議に参加していたルーシーお姉様が、会議室からの帰りに疑問を口にしていました。
ティナおばあさまがルーシーお姉様の疑問に返事をしていたけど、確かに今までも安易に力を求める人がいたもんなあ。
そんな事を思いながら、僕はリズ達が勉強している部屋に向かいました。
「「「「あー」」」」
「こら、ちょっと、全員上に乗るな!」
そこには、小さな子ども達に押し倒されているジンさんの姿がありました。
寝っ転がっているジンさんの顔を、ルカちゃん達とレイカちゃん達が何故かぺろぺろと嘗め回していました。
「王国最強の冒険者も、赤ちゃんには勝てないですね」
「実際にはそんなもんよ。強さなんて一時的になんだから」
僕とティナおばあさまは、赤ちゃんに襲われているジンさんの様子を苦笑しながら見守っていました。
まあ、この位の争いはとっても可愛いものですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます