五百十一話 マジカルラットを我が家で飼うことに
「何だ何だ? お、珍しいな。マジカルラットだな。こいつは魔法が使えるのに動きがそこまで素早くないから、数が少なくて結構貴重な種類なんだぞ」
僕達の所にジンさんもやってきましたが、ぶち模様のあるハムスターっぽいものはマジカルラットって言うんだ。
ミカエルとブリットがかごの中に入っているマジカルラットを興味深そうに見ていると、今度はリズがかごに何かを入れて持ってきた。
まさかだと思うけど、まさかですか?
「今度は体の色が同じのを見つけたよ」
「こいつもマジカルラットラットだな。もしかしたら、俺らが定期的に薬草採取の時にウルフとかを狩っているから生き延びたのかもな」
リズがかごの中に入れてきたのは、キンクマハムスターっぽいマジカルラットでした。
これで、親が四匹に子どもが六匹になりました。
そして、全てのマジカルラットが仲間になりたそうにこちらを見ています。
「ジンさん、マジカルラットって繫殖力凄いですか?」
「いや、それがそうじゃないんだよ。こう見えて年に一回なんだ。まあネズミは直ぐに増えるから、アレクの懸念は分かるがな」
マジカルラットが無限に繁殖して、収拾がつかなくなる事がなくて良かった。
というか、ミカエルとリズは屋敷に持って帰る気満々だから、ここで僕が断ったらぎゃん泣きしそうで怖いな。
「ネズミは食料を食い荒らすが、こいつは頭が良いから餌を適当にやっておけば大丈夫だ。後は、絶対にあのスライム二匹がこいつらを指導するだろうな」
「スラちゃんはアマリリスの時も従魔としての心構えを教えていましたし、絶対に何か教えますね」
という事で、マジカルラットの一家が我が家に来る事になりました。
まだ子どもが小さいので、大きめのバスケットで育てることになりました。
必要なものを市場で購入して、皆で屋敷に帰ります。
「コロコロしていて、とっても可愛いですね」
「ネズミとちがうよ」
「かわいいね!」
一緒についてきたククリさんとメイちゃんとリラちゃんが、大きめのバスケットに入ってもぞもぞと動いているマジカルラットに見入っています。
マジカルラットはバスケットから脱走する事もなく、とっても落ち着いています。
「あと二週間もしたら子どもも独り立ち出来るみたいだから、そうしたら誰の従魔にするか決めようね」
「ミカ、いぱーいかわいがる!」
「ブリもかわいがる!」
既にマジカルラットの子どもを従魔にする気満々のミカエルとブリットは、これからもお世話をするつもりです。
まあマジカルラットは食費がかからないから、育てるのはとっても楽で良いですね。
「可愛いなあ。私も欲しいなあ」
「ノエル、子ども達の前なのですから自重しなさい!」
「あた! じょ、冗談ですよ、冗談」
「ノエルの場合は冗談に聞こえないのよ」
メイちゃんとリラちゃんと一緒になってマジカルラットを見ているノエルさんの呟きは、クラヴィーアさんと同じく冗談に聞こえないんだよね。
まあジンさん曰く、マジカルラットは嫌な人には寄り付かないらしいので、ノエルさんはたぶん大丈夫なのかなと思います。
「ノエルは、マジカルラットを従魔にする前に自分の生活をキチンとしないとね」
「な、何をいっているんですか、クラヴィーア先輩?」
「ククリから色々聞いているのよ」
「ククリ! 裏切った!」
うん、僕もクラヴィーアさんの意見に同感です。
ノエルさんはもっと自分の事をキチンとしないとね。
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