第五百十話 ハムスターっぽい生き物
入園式が終わると、普段の生活が戻ってきました。
変わったのは、スラちゃんが執務官として張り切って毎日王城に行っている事です。
プリンもたまにバイトとして、辺境伯領の防壁の守備隊と一緒に不審者の取り締まりをしています。
僕はというと、王城で勉強したり会議に出たり、屋敷で勉強したり冒険者活動したりしています。
「薬草をいっぱいとるぞー!」
「「「おー!」」」
今日は皆で薬草採取を行うので、辺境伯領のいつもの森に来ています。
ジンさん達に加えて、クラヴィーアさんとルシアさんとククリさんも一緒です。
リズが元気よく手を上げると、ミカエルだけでなくルシアさんも一緒になって手を上げていました。
「ルシアは昔から子どもに好かれやすいね」
「まあ、その、子どもっぽい所がありますから」
クラヴィーアさんとククリさんがミカエル達と一緒に盛り上がっているルシアさんの事を、その、微妙な言い回しで言っていました。
まあ、ミカエル達も嫌がっていないし、大丈夫でしょうね。
因みに今日はスラちゃんとプリンがいないので、ポニさん軍団が護衛に加わっています。
「薬草が一杯だね」
「たくさーん!」
リズ達は早速薬草採取を始めています。
春だからなのか沢山の薬草がそこら中に生えていて、皆ウキウキしながら薬草採取に励んでいました。
「ほら、ルシアもこっちに来るんだよ」
「えー! 何で私だけ?」
「この前キチンと血抜きが出来なかったでしょうが!」
そして、ルシアさんはおばちゃん恒例の新人冒険者向けの血抜き講座のおかわりを受けていました。
今日は他にも新人冒険者がいるので、さっき倒したウルフの血抜きを一緒にする事になりました。
今日のルシアさんは、薬草採取ではなくおばちゃんの熱血講習を受ける事になりそうですね。
僕は、ポニさんとブッチーと一緒にミカエル達の様子を見守っています。
がさがさ、がさがさ。
「あれ? 何だろう。敵の反応じゃないから、動物か何かかな?」
「ミカ、見てくる!」
「ブリも!」
「ブルル」
薬草を採っていたら近くの茂みががさがさと揺れていたので、ミカエルとブリットとブッチーが茂みの中に入っていった。
危険な反応じゃなかったけど、一体何だろう?
がさがさ、がさがさ。
「にーに、これ!」
「弱ってるの」
「ブルル」
「うん? これはハムスターか?」
ミカエルとブリットが抱いていたのは、ネズミにしてはずんぐりむっくりしている小さな動物でした。
見た目はゴールデンハムスターで、鑑定しても敵と出ていないけど衰弱しているなあ。
「じょうずにご飯がとれなかったって」
「おなかぺこぺこだって」
「じゃあ、さっき採ったさくらんぼをあげようね」
「「うん!」」
僕の話を聞いたミカエルがマジックバッグからさっき採ったさくらんぼをハムスターっぽいものにあげると、ハムスターっぽいものはほお袋にいっぱいさくらんぼを詰め込みました。
というか、ほお袋があるなんてまんまハムスターっぽいなあ。
「おお、すごいすごい!」
「パンパンだよ」
「ブヒヒ」
ミカエルたちがハムスターっぽい行動をとるネズミを面白そうに見ていたけど、ハムスターっぽいものはぴょんとミカエルの手からジャンプをするとまたもや茂みの中に入っていきました。
「「まってー」」
「ブルル」
またもやミカエルとブリットとブッチーがハムスターっぽいものを追って茂みの中に駆け込むと、今度は薬草採取のかごを手にして戻ってきました。
「あかちゃ!」
「いっぱい!」
「ブルル」
「赤ちゃんにごはんを上げていたんだね」
かごの中にはハムスターっぽいものの子どもがいて、さっきミカエルからさくらんぼを貰った二匹がせっせと子どもに与えていました。
皆もかごの所に集まってきたけど、ハムスターっぽいものはどうしようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます