四百八十四話 爆睡陛下

「「「こんにちわ」」」

「あらまあ、いらっしゃい」


 木こりの宿に到着すると、いつもの女将さんが僕達を出迎えてくれました。

 木こりの宿では、日帰り温泉に加えて薬草を使ったオイルマッサージを始めたんだって。


「あら、アレク君。森での活動は終わったの?」

「はい。中々の収穫だったので、早めに切り上げました」

「そうかい。そりゃ良かったな」


 丁度カウンター前の長椅子でティナおばあさまと冒険者のおばちゃんが、仲良くおしゃべりをしていた。

 冷たい飲み物を飲んでいるから、温泉はもう出たみたいです。


「あれ? 陛下は?」

「ふふふ、中々面白い事になっているわ」


 ジンさんが、陛下がどこにいるかをティナおばあさまに尋ねたら、いたずらっ子の様なティナおばあさまの笑顔があった。

 何かあったのかな?

 僕達は、長椅子から立ち上がったティナおばあさまの後をついていきます。

 そして、ある部屋の前につきました。

 部屋にはマッサージ室って書いてある。


「私よ。入るわ」

「あ、はい。今ドアを開けます」


 部屋の中からジェリルさんの声が聞こえました。

 そして部屋のドアが開くと、衝撃の光景が。


「ぐがー、ぐがー」


 陛下は、ベッドにうつ伏せ状態で爆睡しています。

 パンツいっちょで寝ていて、背中や足はオイルを塗られたのかテカテカしていました。

 

「「「ぷぷ、ぷぷぷぷ」」」


 ジンさんだけでなく、リズ達も爆睡している陛下を見て笑いが堪えられない様です。

 ジェリルさんやランカーさんも、対応に困って苦笑していました。


「マッサージは終わったんだけど、全然起きないのよ。よっぽど疲れが溜まっていたのね」

「まあ、国務はとっても激務ですし、疲れは溜まりますよね」


 ティナおばあさまも、仕方ないって感じで陛下を見ています。

 でも、時間がないんですよね。

 実は、陛下とマロード男爵領に来ている閣僚は午前中いっぱいで王城に帰る予定なんですよね。


「スラちゃんが、お尻に触手を突き刺そうかって言っているよ」

「流石にそれは可哀想だわ。でも、どうやって起こそうかしらね」

「あ、僕に良い方法があります。試してみますね」


 リズとスラちゃんがとんでもない事を提案してくるけど、流石に陛下相手にそれはまずいでしょう。

 ティナおばあさまもどうしようかと思っていたけど、ちょっと良い方法を思いついたぞ。

 僕は陛下の耳元に顔を近づけます。 


「お客さん、閉店時間ですよ」

「うご!」


 ばっ。


 僕が陛下の耳元で閉店時間だと言ったら、陛下は思いっきりガバッと起き上がった。

 そして、訳が分からずに辺りをキョロキョロと見回しています。


「「「あはは、あははは!」」」

「いーひひひ、は、はらいてー」


 当然皆は飛び起きた陛下の姿を見て、爆笑しています。

 ジンさんなんて、お腹を抱えて笑いすぎて苦しそうです。


「こ、ここは。はっ、マッサージの最中に寝てしまったのか」

「くふふ、そうですわよ。それにしても、酷い格好よ」

「服を着たままマッサージなんて受けられないだろうが」


 爆笑している皆の姿を見て、陛下は開き直ったぞ。

 パンツいっちょで堂々としていると、ある意味清々しいぞ。


「それとジン、笑いすぎだ。罰としてオイルを洗い流すのを手伝え」

「えー! 何で俺だけなんですか?」


 そして一番爆笑していたジンさんを、陛下が部屋の外に引きずっていきました。

 あーあ、流石にジンさんは笑いすぎたかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る