四百八十五話 楽しめた人と楽しめなかった人

 そろそろ王城に陛下達を送らないといけないので、一旦マロード男爵領の屋敷に戻ります。

 因みに、陛下の体についたオイルを流し終えたジンさんは、疲れ切ってげっそりとしていました。


「「「ただいまー」」」

「お帰りなさい」


 屋敷に戻ると、セシルさんが出迎えてくれました。

 そのまま、子ども部屋になっている応接室に向かいます。


「う、うう……」


 応接室に行くと、何故か項垂れていた商務卿の姿があった。

 何となく予想がつくけど、念の為にレイナさんに商務卿が落ち込んでいる理由を聞いてみよう。


「レイナさん、レイカちゃんはご機嫌ナナメのままですか?」

「そうなのよ。お父様がレイカに謝ろうとしつこくしていたから、レイカがお父様の顔を叩いてしまったのよ」

「うぅー」


 商務卿は朝もレイカちゃんにしつこくして泣かれたのに、またもやしつこくしていたのか。

 そりゃレイカちゃんも怒っちゃうよね。

 レイナさんの腕の中にいるレイカちゃんは、まだ不機嫌な表情をしていました。


「ほほほ、今日は良い気分転換になったぞ」

「そりゃ、おじいちゃんはずっとガイルと遊んでいたもんね」


 一方の宰相はというと、ガイルちゃんと遊べてご機嫌です。

 ガイルちゃんは遊び疲れたのか、カミラさんの腕の中ですやすやと眠っています。

 商務卿と違って、ひ孫とたっぷり遊べた様です。


「よし、そろそろ帰るぞ。商務卿も重要課題が待っているのだから、王城に戻ったら気持ちを切り替える様に」

「うぅぅ、はい……」


 お肌ツヤツヤの陛下がぐずぐずしている商務卿に声をかけているけど、果たして商務卿は復活するのか。

 ちょっと心配になりつつ、王城にゲートを繋いで皆を送りました。

 ついでという事で、ティナおばあさまも王城に帰りました。


「リズは午後はどうする?」

「皆と遊ぶ!」


 辺境伯様一家は夕方に帰るので、僕達も夕方まではマロード男爵領に滞在します。

 という事で、午後は皆でミカエル達子ども軍団と遊ぶ事にしました。


「にーに、追いかけっこしよー」

「「「しよー!」」」


 昼食後、僕達は早速庭に出てきました。

 ミカエルを先頭にして、子ども軍団は追いかけっこをする気満々です。

 と、ここでイザベラ様がインターセプトしてきました。


「あなた、ミカエルちゃん達と追いかけっこをしましょうね」

「うぇ? 何でだ?」

「ふふふ、理由を聞きたいですか?」


 むに。


「ふふふ」

「いや、いい……」


 イザベラ様は、ニッコリしながら辺境伯様のお腹のお肉を摘んでいた。

 辺境伯様は汗ダラダラになり、ガックリとしてからミカエルの元に向かいました。


「じーじ、行くよ!」

「よし、こい」

「「「きゃー」」」


 とはいえ、そこは父であり祖父でもある辺境伯様です。

 子どもの扱いは抜群に上手です。

 ミカエル達も、いつも接している辺境伯様なので遠慮なく走っていきました。

 そして、ミカエル達がお昼寝の時間になるまで辺境伯様は走り続けていました。

 勿論、僕達も追いかけっこに参加しましたよ。


「うわあ、わざわざありがとうね」

「とっても嬉しいよ」

「えへへ」


 ミカエル達のお昼寝に合わせて、僕達は辺境伯領に戻ってきました。

 そして夕食は侍従のお姉さんと一緒に、リズが狩ったイノシシを使ったボタン鍋にします。

 お姉さんの為にとリズが頑張ったのを聞いたので、侍従のお姉さんもとっても喜んでいます。


「ねーねー、赤ちゃんもーすぐ?」

「そうね、新年になったら産まれるわよ」

「楽しみにしていてね」

「うん!」


 お鍋を食べながら、ミカエルが侍従のお姉さんに質問しています。

 侍従のお姉さんのお腹も、とっても大きくなっています。

 僕の屋敷がより一層賑やかになるのも、もうすぐだね。

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