四百五十二話 襲撃された人の正体
さてさて、このよく分からない状況を確認する為に、刺されていた二人に話を聞くことにします。
「大丈夫ですか? 私は王国王族のティナです」
「ああ、良かった。手紙が届いたんですね。僕はランディ、ブランターク男爵家の当主です」
ティナおばあさまの手で起こされたのは、やはりブランターク男爵家の当主だった。
ランディ様は何とか半身を起こして、話を始めました。
「実はそこの執事が横領している事が分かったので追求していたら、いきなりナイフで刺されました」
「私はちょうどその場面に遭遇しまして、同じく執事に刺されました」
ランディ様と侍従の話を聞いたティナおばあさまは、怒り心頭です。
タブレットで情報を王城に伝えた後、組み伏せられている執事に丁寧だけど冷酷な口調で話し始めました。
「貴方の身柄は王城に送られる事になりました。殺人未遂もありますが、どうやら先代の頃から横領していたのでしょう。まあ、厳しい取り調べを受ける事を覚悟してください」
「ぐっ」
拘束された執事は、王城の軍の施設にゲートを繋いだ後連行されました。
そして、数人の兵が代わりにやってきて、屋敷の捜索を手伝ってくれるそうです。
ともあれランディ様と侍従は出血した後なので、ベッドに運ばれました。
ランディ様は、ベッドから身を起こして僕達に話しかけました。
「僕は三月に学園を卒業したばかりで、他に兄弟はおりません。そして、学園卒業と時を同じくして両親が相次いで亡くなりました」
「その辺りは王城にも連絡があったわ。確か、突然死だとか」
「はい、胸を押さえて急に倒れました。まあ、かなり太っていて今まで贅沢三昧をしてきたツケが回ってきたのでしょう」
ランディ様の話を聞く限り、両親は心臓病だったのだろう。
太り過ぎは良くないですね。
「その後、帳簿を調べたらかなりの借金を背負っている事が分かりました。その為、屋敷にある売れるだけの物を売却しました。しかし、売却額と実際に返済された額が違うので再度調べたら、執事が横領していた事が分かりました」
「そうこうしている内に、沢山の動物や魔物が現れた訳ね」
「はい、執事は様々な所から横領を繰り返していて、防衛費も横領していました。その為に、かなり前から十分に動物や魔物を狩ることが出来ていませんでした。そこで僕は信頼する兵に手紙を託して、辺境伯領に向かってもらいました」
「そして、執事を追求したら執事が蛮行を働いたって訳ね。大変だったわね。でも、その判断は正しかったわよ」
ティナおばあさまが、優しく話しながらランディ様から事情を聞いてくれた。
恐らく、執事は相当前から横領を繰り返してきたはずだな。
「実は数日前から商隊の往来が滞っていました。往来が減った背景に執事が絡んでいるのか分からないのですが、餓えている人もいたので炊き出しを行っておりました」
「いい判断だわ。あなたはきっと良い領主になるわ。今は私達に任せて、あなたはしっかりと療養して下さい」
「はい、ありがとうございます」
まだ学園を卒業したばっかりなのに、ランディ様はかなりしっかりとした人物だ。
両親の反面教師とはいえ、今の危機を乗り切ればブランターク男爵領の未来は明るいだろう。
ランディ様にはしっかりと養生して貰って、その間は僕達が頑張らないといけないな。
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