四百三十五話 アレク君はまだ六歳

 無事に話し合いも終わったので、リズ達を迎えに行きその足で温泉宿に向かいます。


「おー、これが温泉街」


 温泉街は温泉の湯気が立ち込めているので、まるで雲の中に入る様です。

 温泉街の不思議な光景に、イヨも興味深く辺りを見ています。


「にーに、くも!」

「くもだ!」

「ミカエル、ブリッド、これは湯気って言うんだよ」

「「ゆげ!」」


 ミカエルとブリッドはさっき僕が思った事を言っているけど、それでもミカエルとブリッドの目はキラキラしています。

 とっても不思議な光景だもんね。

 という事で、いつもの温泉宿に到着です。


「あらあら、可愛らしい子がいるわね」

「イヨちゃんだよ」

「そうかいそうかい、ゆっくりと温泉に入りなね」

「はい」


 すっかりと顔馴染みになった温泉宿のおかみさんに、リズがイヨの事を紹介していた。

 おかみさんもイヨの頭を撫でて、温泉に向かう僕達を見送っていきます。


 さてさて、もうそろそろ僕は七歳です。

 という事で、女子更衣室ではなく男子更衣室で着替えをします。


 ガシ。


「お兄ちゃん、どこに行くの?」

「アレク様はまだ六歳です」

「だから、こっち」

「えー!」


 折角男子更衣室に行こうとしたのに、またもやリズ達によって阻止されてしまった。

 そして、僕がリズ達に捕まっている間に、辺境伯様はいつの間にか男子更衣室に消えてしまっていた。

 うう、またもや他の男の人に逃げられてしまったぞ。

 まあ、今回はいつもお風呂に入っているメンバーなので気にしない事にしよう。

 僕はリズとサンディとイヨの着替えを手伝いながら、そんな事を思っていました。


「じゃあ、今日は私がアレク殿下のお着替えをしますね」

「はい……」


 僕はというと、喜々としているチセさんの手によって服を脱がされてしまった。

 しかし、なんで毎回僕を着替えさせる人は全裸なんだろうか?

 せめて水着を着てから、僕の事を脱がせて欲しいです。


「「「ふいー」」」


 以前にも温泉に入った事のあるミカエルは勿論の事、ブリッドとイヨも温泉に浸かって気持ち良さそうにしています。

 温泉はとっても気持ちいいよね。


「マイクとセシルの結婚式の後にも、閣僚は温泉街の温泉に入ると言っていたなあ。確か公衆浴場の方に入ると言っていたぞ」

「閣僚なのに、豪華な宿よりも庶民的な所の方が好きらしいですからね」

「料理も堪能する気らしいし、良い身分ですなあ」


 辺境伯様が愚痴をこぼすけど、今回辺境伯様は新郎の父親なのでとても忙しい。

 因みに、例の服が着れる様に鍛錬と節制をしているという。

 既に辺境伯様の体は仕上がっている様です。


「あなたは油断をすると直ぐに太るのだから、当面は節制して貰いますよ」

「分かっているよ。私だって来賓の前で無様な姿を晒したくないからな」


 イザベラ様が辺境伯様に注意をするけど、前回の事があるから辺境伯様も分かっている様です。

 そんなこんなで、温泉タイムは終了です。

 また皆で温泉に来たいなあ。

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