四百三十二話 少し落ち着いた日

 そして、春になるとアレクサさんもジンさんの屋敷にやってきました。

 アレクサさんは辺境伯領の教会のシスターをしつつ、ルルーさんとクラヴィーアさんと共に貴族の令嬢としての勉強も始めています。

 元々シスターとしての教育を受けていたので、アレクサさんの立ち振る舞いは全く問題ありません。

 何よりも料理や他の家事も出来るので、教える立場のルルーさんとクラヴィーアさんはとても喜んでいます。


「こっちの服が似合っているよ」

「こっちも良いよ」

「そうかな?」


 イヨも屋敷での暮らしにすっかりと慣れて、リズやサンディともよくお喋りをしています。

 今日はイヨに似合う服を、リズとサンディが自分の服を持ってきて選んでいます。

 しかし君たち、なぜ僕の部屋でファッションショーをするのかい?

 僕が部屋を出ようとすると三人とも怒るので、僕は部屋から出ることが出来ません。

 結局、午前中一杯三人のファッションショーに付き合わされてしまいました。


「「「「わーい!」」」」


 午後は、庭で遊ぶミカエル達を見守っています。

 ミカエル達は、侍従のお姉さんの子どもと一緒においかけっこをしています。

 スラちゃんとプリンも、ミカエル達に混じって一緒に遊んでいます。

 元気良く走り回っているミカエル達を見ながら、僕は久々にゆっくりとしています。

 というのも、やはりというかまたもや学園の入園式のスピーチをしたり、外国の要人と会ったりしていました。

 マイクさんとセシルさんの結婚式もあるので、マロード男爵領にも何回か行ってきました。

 勿論、ジンさんとアレクサさんの結婚式の打ち合わせも行っています。

 なにせ、教皇自らジンさんとアレクサさんの結婚式に参加すると言ってきたので、王国や共和国に帝国も来賓の格を合わせる事になったのだ。

 その為に、アレクサさんの望んでいた質素な結婚式とは程遠いものとなるのは確定的になった。

 アレクサさんはもう諦めていたけど、ジンさんはまたもや遠い目をしていたっけ。

 

「にーに、あそぼー!」

「あそぼー!」

「おっと」


 僕がそんな事を思っていたら、いつの間にか僕の側にミカエルとブリッドがやってきていた。

 せっかくなので、僕はミカエルとブリッドに手を引かれながらおいかけっこに参加する事にしました。

 久々に子どもらしい一日を過ごした様な気がするなあ。

 僕はミカエル達をおいかけながら、そんな事を思っていました。

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