四百二十二話 ブレイクランドの病院での治療

 翌日は砦の事に対応する為に改めて教皇国に行くのだが、同時にイヨの事を引き取る事にもなっている。

 王城にいるティナおばあさまを迎えに行くと、何故か騎士服をバッチリ着込んだエレノアの姿があった。


「今日は私も一緒についていきます」


 エレノアはやる気満々って感じだけど、絶対にイヨがどんな人かを見る為だろう。

 昨日僕は頑張ってエレノアにイヨの事について説明したけど、まだエレノアは納得していないみたいだ。

 エレノアの同行を断ると暴れそうだし、街は特に危険って事もないのでティナおばあさまの判断でエレノアも同行する事が決定です。

 その代わりに、近衛騎士の護衛が厳重になります。


「エレノアも女の子ね」

「そうね、可愛らしいわ」


 あの、レイナさんとカミラさん。

 エレノアは昔からこんな感じでしたよ。

 僕は思わずはぁって溜息をつきながら、教皇国にゲートを繋いで向かいます。


「前線からの報告では、予想以上に懐古派を押し込めている様です」

「そうなんですね」


 ブレイクランドの教会の応接室で、僕達はレリーフ枢機卿から懐古派がいる砦を巡る戦況を聞きます。

 思ったよりも懐古派を押し込めているので、僕達も一安心です。


「ただ、怪我人が多く出ているので、治療の手が不足しております。申し訳ありませんが、治療の手助けをして頂けると非常に助かります」

「ええ、良いですよ。幸いにして治癒魔法が使える人が多いですので、全く問題ありませんわ」

「ありがとうございます。可能でしたら、皇都から聖女様をお連れ頂けますか? 聖女様も、是非治療に参加したいそうです」


 僕達は王国でもたまに軍の病院で治療をしているし、ティナおばあさまの言う通り全く問題ない。

 カレン様も傷ついた兵を治療したいと思っているので、早速皇都からカレン様を連れてきてブレイクランドの病院へ向かいます。


「はい、痛みはどうですか?」

「良くなりました。聖女様、ありがとうございます」


 軍の病院に着いた僕達は、早速治療を開始します。

 わざわざ聖女様が前線に来て治療しているだけあって、治療を受けた兵は感激していた。

 ヒカリも、カレン様と一緒になって怪我をした兵の治療をしていきます。

 勿論、エレノアもスラちゃんとプリンもカミラさんも治療を行います。


「おばあちゃん、どのくらいまで治していーい?」

「折角だから、全力で治療しても良いでしょう」

「分かった!」


 沢山の人が怪我をしているので、僕達もティナおばあさまに許可を貰って全力で怪我した兵の治療にあたります。

 と、僕達が治療をする前にアレクサさんに頼んで、兵に注意してもらいます。


「えっと、これから双翼の天使様が全力で治療をしますが、治療結果はあまり公表しない様にして下さい」


 アレクサさん自身もなんでこんなアナウンスをするのか不思議に思っていましたが、僕達の治療結果を見て貰えば分かるはずです。

 先ずは、右腕を肘から先を切断してしまった兵の治療です。


「お兄ちゃん、オッケーだよ」

「よし、やってみよう」


 ぴかー!


「「「えっ?」」」


 僕とリズの合体魔法で、兵の失った腕が元に戻ります。

 治療を受けた兵は勿論の事、アレクサさんや他の人もかなり驚いています。


「リズ、魔力は大丈夫?」

「全然平気だよ。どんどんと治療しよう!」

「こ、これは。確かに治療結果を漏らす訳にはいけませんね」


 兵の失った腕を元に戻す程の治療をしてもピンピンとしている僕とリズを見て、アレクサさんは治療の結果と共に秘密を漏らさない様にしないとと思ったらしい。

 勿論、周りの兵も先程のアレクサさんの言葉の意味を理解した様だ。

 しかし、残念ながらもう一つ奇跡が起きてしまった。


 ぴかー!


「おお。足が、足が元に戻ってるぞ!」

「ははは、相変わらずこの聖剣はぶっ壊れ性能だなあ」

「ジ、ジン様の聖剣も物凄いですね」


 ジンさんの聖剣は聖属性なので、試しに治療ができないかと聖剣を発動したのだ。

 そうしたら、僕達の合体魔法とほぼ同じ位の治療効果が出たのだ。

 これにはアレクサさんもびっくりです。


「むー、ジンさんに負けないもん!」

「リズよ、治療は競争ではないぞ」


 ジンさんの聖剣にリズが対抗意識を出して、僕を引き連れて次々と兵を治療していった。

 実はスラちゃんとプリンの合体魔法もあってか、半日でほぼ全ての重傷者を治療出来た。

 そして、ブレイクランドの軍の病院では、双翼の天使様と導くもの様が奇跡を起こしたとされたのだった。

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