三百九十七話 ジェットさんのご両親にご挨拶

 とはいえ、ルーシーお姉様とジェットさんがいくら仲良くても両家が合意しなければならない。

 という事で、会議に参加した人を送るついでに、クレイモアさんとジェットさんの実家に王妃様とアリア様が向かう事になった。

 しかもサイファ枢機卿とシェジェク伯爵も、クレイモアさんの実家に行って二人の事を見届けてから帰るそうです。

 完全に野次馬ですね。


「ジン、子ども達を宜しくね」

「任せたわよ」

「あの、この状況はマジですか?」

「マジよ、頼むわね」


 王妃様とアリア様が不在の間、ジンさんがベビーシッター役になります。

 とはいえリズとサンディとエレノアとスラちゃんも残るので、恐らく大丈夫だろうと思います。

 因みにプリンは僕と一緒に付いてくるルーカスお兄様とアイビー様の護衛をする事に。

 プリンも皆を守るぞと、張り切っています。

 

「じゃあ、あなたも留守番宜しくね」

「お土産は期待しないでね」

「相手方に失礼のないようにしろよ」


 当然ながら、陛下はお留守番です。

 という事で、僕は共和国にゲートを繫ぎます。


「父と母は、午後には屋敷に戻っております」

 

 僕は何回かクレイモアさんの屋敷に行ったことがあって、その際にクレイモアさんのお父さんとお母さんに会っている。

 だから、先ずクレイモアさんと僕がクレイモアさんのお父さんとお母さんにコンタクトを取ることに。


「あら、クレイモアお帰りなさい。それにアレク殿下もいつも申し訳ありません」


 玄関に着くと、直ぐにクレイモアさんのお母さんが僕とクレイモアさんを出迎えてくれた。

 クレイモアさんのお母さんは特徴的な赤い髪をしていて、クレイモアさんとジェットさんの赤い髪はお母さん譲りだとひと目で分かる。

 それにクレイモアさんのお母さんは、クレイモアさんと姉妹だと言われても納得する位若々しい。

 だけど、実際には四十歳をこえているらしい。


「あら、ジェットはどうしたの?」

「お母さん、そのジェットの事で来客があるの。来客を応接室に案内してくれる?」

「良いけど、何だか訳ありみたいだわね」

「そうなのよ。超訳アリよ」

「あはは……」


 クレイモアさんが溜息を漏らしながら、母親に来客の事を告げていた。

 二人のやり取りを見て、僕は思わず苦笑してしまった。

 という事で、全員を呼び寄せて応接室に向かいます。


「は、初めまして。クレイモアとジェットの父です」

「まあまあ、皆様お揃いで。お茶でもどうぞ」


 応接室に集まった面々に、茶髪のダンディなお父さんはかなりビビっていた。

 それに対して、お母さんの方は朗らかに対応していた。

 そして、お母さんは仲良く隣同士で座っているルーシーお姉様とジェットさんの方をチラリと見て、それから僕達に話しかけてきた。


「話というのは、うちのジェットとルーシー殿下の事ですか?」

「ええ、そうですわ。どうやら、お互いにとても気があっているようですの」

「二人ともとても良い感じなので、もっと仲良くなれればと思いまして」

「あら、そうでしたか。普段はおとなしいジェットがあんなにも楽しそうにしていて、母親である私もとても嬉しいですわ」


 クレイモアさんとジェットさんのお母さんと王妃様とアリア様は、既に話の内容を理解している様だ。

 というか、母親同士では既にルーシーお姉様とジェットさんの話が纏まっている様だ。


「今日話した感じですが、ジェットさんはとても誠実な方だと感じました」

「私も同様に感じましたわ。将来の義弟として相応しいと思いますわ」

「まあまあ、ルーカス殿下とアイビー様にも太鼓判を押されるなんて。とても心強いですわ」


 ルーカスお兄様とアイビー様の話を聞いたクレイモアさんのお母さんは、益々笑顔になっていた。

 サイファ枢機卿とシェジェク伯爵も、ニコニコとしながら話を聞いていた。

 ここで気になったのが、ずっと黙っているクレイモアさんの父親の事だ。

 腕を組んで、何やら考え事をしている様だ。


「クレイモアさんのお父さん。ルーシーお姉様とジェットさんの仲は反対ですか?」

「いや、ジェットとルーシー殿下の事は私も大賛成だ。実は別の事で悩んでいてな」

「別の事、ですか?」


 ルーシーお姉様とジェットさんの仲に反対でなければ、クレイモアさんのお父さんは何を悩んでいたのだろうか?


「今年十一歳になるジェットに良い人ができたのに、今年二十六歳になるクレイモアに全く良い人が現れないのだ。クレイモアの父として、何でだろうと悩みのタネなのだ」

「そうね。うちは特に身分を気にする事はないのだけど、それでも一向にクレイモアに良い人が現れないなんてね。下手をすると、ジェットの方が先に孫の顔を見せてくれるかもね」

「お父さん、お母さん、その話って今する事!」

「「「あはは」」」


 若くして共和国のエリートコースを歩く娘の将来の事を、父と母はいたく心配していたらしい。

 父と母と娘のやり取りに、思わず皆も笑いがこぼれていた。

 クレイモアさんの事はさておき、ルーシーお姉様とジェットさんの事は今後とも王国と共和国との間で詰める事になった。

 こうして、僕達王族は全員が良い人を見つけた事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る