三百七十六話 ブリットのお試しお泊まり その四
二日目は、薬草採取とバイザー領の屋敷に行く事になっている。
今日もルーカスお兄様達やティナおばあさま達は来れないので、ジンさんが僕達の保護者です。
更に護衛として、ポニさん達もついてきます。
カミラさんとクラヴィーアさんとルルーさんも、薬草採取に同行します。
何とクラヴィーアさんとルルーさんは既に冒険者登録済みで、しかも僕達と同じEランクでした。
「私達も、メインは薬草採取やお手伝いです」
「ノブレスオブリージュの一環ですわ。できるだけ誰もが受けない様な低い依頼料のものをこなしていましたわ」
「「おお、お姉ちゃん凄い!」」
成程、ルルーさんとクラヴィーアさんはお金があまり必要ないので、奉仕活動の一種で冒険者活動をしているらしい。
社会勉強の一環としてこういうお手伝いをする貴族子弟は、王都ではそこそこいるという。
僕達はまだ小さいから、お手伝いとかの依頼は出来ないもんなあ。
そんな事を話し合いながら、僕達は冒険者ギルドに到着です。
「お、噂のカップルがきたわね」
「ミカエルちゃんもブリットちゃんも、こっちにきて」
「「うにゅ?」」
冒険者ギルドに到達すると、女性冒険者が直ぐにミカエルとブリットをテーブルに招いていた。
ジュースも用意している辺り、ミカエルとブリットの事を根掘り葉掘り聞くつもりだな。
でも、相手は二歳児だ。
「ミカエルちゃん、ブリットちゃんの事は好き?」
「ちゅき!」
「ブリットちゃんは、ミカエルちゃんの事は好き?」
「ちゅき!」
あえなく尋問終了です。
ミカエルとブリットは、お互いぎゅーっと抱き合っています。
「ははは、私ら二歳児に負けているよ……」
「何? このラブラブ振りは」
「彼氏が、旦那が欲しいよ……」
「「うにゅ?」」
ミカエルとブリットが抱き合っている微笑ましい光景に、女性冒険者はテーブルの上でぐったりと力尽きています。
女性冒険者に春が来るのは、一体いつになるのだろうか。
そんな項垂れている女性冒険者の事を、ミカエルとブリットは不思議そうに見ていました。
手続きも終わったので、皆で薬草採取に向かいます。
ここからは、ミカエルとブリットは昨日と同じくユキさんに乗って森に向かいます。
プリンも護衛についています。
「すげー! Aランク冒険者で子爵様!」
「世界を飛び回っているなんて、凄すぎる」
「俺も、いつかは兄ちゃんみたいに成れるかな?」
「そりゃ、お前らの頑張り次第だろう。俺だって誰だって、最初は誰もが初心者だ」
そして、今日は新人冒険者も三人ついて来ています。
十歳位の男の子で、Aランク冒険者で貴族にまで上り詰めたジンさんの事をキラキラした目で見ています。
ジンさんは、ある意味冒険者の高みみたいな存在だもんな。
そんな談笑をしながら、無事に森に到着。
すると、五頭のウルフが僕達をお出迎えします。
「ジンさん、聖剣使って!」
「私もジンの聖剣に興味があるわね」
「試し切りにはちょうど良い相手か」
リズとカミラさんに促されて、ジンさんは聖剣を抜きます。
「「「おお、すげー!」」」
そして魔力を込めて刀身がキラキラと輝くと、新人冒険者は目を輝かせています。
ふっ。
ザシュ!
「「「み、見えなかった」」」
光の残滓を残して、ジンさんはあっという間にウルフを倒した。
あまりの早業に、新人冒険者にはジンさんの動きを目で追えなかった様だ。
「聖剣には、身体能力強化の効果もありそうですね」
「だが、使い方に慣れないと周りを巻き込むな」
「私には扱えそうにないわね」
「リズも無理だよ」
ジンさんだから聖剣を制御できるのであって、僕達にはとても扱えそうにない。
これには、流石のカミラさんとリズもお手上げだった。
「ほら、新人はこっちに来るんだよ。血抜きの練習だ」
「血抜きが終わったら、リズが薬草採取を教えてあげるよ」
「「「はい!」」」
そして恒例のおばちゃんによる新人冒険者への血抜き講習と、リズによる薬草採取講習が始まった。
新人冒険者もジンさんの凄腕を見たからか、とっても真剣に講習に参加していた。
「あた!」
「ぶりも!」
「良く見つけたわね」
「凄いわね。もっと探しましょうね」
「「あい!」」
ミカエルは数回目の薬草採取だし、ブリットもスラちゃんとルルーさんとクラヴィーアさんが側についていてくれるので直ぐに薬草を見つけていた。
皆楽しそうにしているのが何よりだ。
こうして、皆でワイワイとしながら薬草採取は無事終了です。
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