三百七十七話 ブリットのお試しお泊まり その五

 午後からはバイザー領の屋敷に行くのだが、ここで参加者がちょっと変更に。


「久々に本職の仕事です」


 と、ノエルさんが近衛騎士として、僕達の護衛として参加します。

 昨日も研究所に泊まっていたし、生薬と回復魔法の研究が忙しいという。

 ノエルさんとバトンタッチで、カミラさんとクラヴィーアさんとリリーさんが赤ちゃんの世話の為に屋敷に戻ります。

 という事で、バイザー領の屋敷に向かうのは、僕とリズとサンディにミカエルとブリット。

 僕達の保護者役として、ジンさんとノエルさんが同行します。

 メンバーも揃ったので、いざ出発です。


「わあ、おっきーおうちだ!」

「ここがみかのおうち!」


 元伯爵家の屋敷だから、ブリットはかなり大きい屋敷にびっくりしています。

 ミカエルは月一でバイザー領の屋敷に来ているので、もう慣れたものです。

 トコトコとブリットと手を繋ぎながら、屋敷の玄関扉をノックします。


「ミカエル様、お帰りなさいませ。可愛らしいお嬢様と一緒ですわね」

「たじゃーま。ぶりちゃだよ!」


 玄関扉を開けて出迎えてくれた侍従長も、ミカエルとブリットの様子を見て微笑んでいる。

 ミカエルもここが自分の屋敷だと分かっている様で、バイザー領の屋敷に来る時は必ずただいまと言っています。

 僕達は、いつもの応接室に案内されます。


「ミカエル様が勲章と二つ名を獲得する程の活躍をされた事に、我々家臣一同とても喜んでおります。更には街の人々も、ミカエル様の事を一目置くようになりました」

「成程ね、前領主は犯罪者で新領主はまだ幼児だ。住民も不安だった訳だな」

「ジン様の仰る通りになります。しかし、ミカエル様が大活躍し奥様候補もできたとなり、一気に情勢が良くなりました」


 侍従長とジンさんが話をしているけど、大きな不祥事があった領地なだけに住民は不安に思うよね。

 ミカエルの活躍がバイザー領の安定にも繋がって、僕達も一安心だ。


「その内、バイザー領でもミカエル様のの事を覚えてもらう為に炊き出しなどをした方が良いですね」

「幸いにして、ミカエルは回復魔法が使えるし今日も活躍していた。下地はあるから、秋くらいには一度バイザー領で炊き出しをしても良いだろうな」

「是非ともお願いします。ミカエル様の顔を見れば、街の人も更に安心するかと」


 ノエルさんとジンさんの提案には、僕も賛成だ。

 街の人もミカエルの人となりが分かるし、ミカエルも将来の領主として顔を覚えてもらう事にも繋がる。

 この辺は、帰ったら辺境伯様とも話をしておこう。

 

「「スー」」


 そしてミカエルは午前中の炊き出しでの治療を張り切っていたからか、ブリットと共にいつの間にかスヤスヤと寝息をたてていた。

 リズとサンディも、ミカエルとブリットと一緒になって寝ていた。


「皆様、とても仲が良いですわね」

「一緒になって遊んでいますからね。寝る時も、いつも一緒です」


 侍従長も目を細めて、仲良く寝ている四人を見ていた。

 成長しても、皆仲良くして欲しいものだ。


 こうしてブリットのお試し宿泊は無事に終了。

 

「またね!」

「バイバイ!」


 直ぐに会えると分かっているので、ミカエルもブリットも笑顔でバイバイしていた。

 次に二人が会うのは来月かな。

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