三百七十話 ジンさんが法衣子爵に

 僕達は王族として謁見の間に入場するけど、ミカエルとサンディは貴族当主なので別の入場になる。

 なので、辺境伯様とジンさんにサンディとミカエルをお願いする事にした。


「ミカエル、辺境伯様とジンさんの言う事をちゃんと聞くんだよ」

「あい!」


 これで大丈夫だろう。

 因みに普段は名誉貴族は謁見には呼ばれないのですが、今日はジンさんが表彰対象だから問題ありません。

 後を任せて、僕達も王族用の控室に移動します。


「その内に、エドちゃんとルカちゃんも公式の場でデビューする事になりますね」

「赤ちゃんの内に、周囲への顔見せで出す事はあるわよ。ルーカスがそのパターンだったし」

「そうなると、リズちゃんとエレノアの誕生パーティが近いわね」

「折角だから、二人をお披露目としましょうか」


 おおう、僕の一言でエドちゃんとルカちゃんのデビューが決まってしまった。

 まあ、いるだけで良いし、何もする事はないよね。

 

「皆様、そろそろお時間となります。ご用意をお願いします」

「はーい」


 お、僕達も出番の様だ。

 僕は立ち上がるとリズのドレスのシワを直してやる。

 うーん、今日は何が言い渡されるのかな?


「皆のもの、忙しい中集まり大義である。本日は授与の他に幾つか伝える事がある」

「先ずは知っている人も多いかと思うが、この度ルーカス殿下と教皇国のカレン聖女様との間で婚約が決定した事を報告する」

「「「おお」」」


 謁見が始まると、早速宰相がルーカスお兄様とカレン様との婚約を発表した。

 まあ、この辺はほぼ既定路線だろう。


「更に、バイザー子爵家当主ミカエルと教皇国聖女候補者ブリジットも、婚約する方向で調整をしている。正式に決まり次第、改めて報告する」


 ええ!

 まさかの宰相からミカエルとブリットの件について報告があった。

 これには参加した貴族もどよめきが起きているぞ。


「静粛に。それでは、勲章の授与を始める。此度の教皇国の懐古派とのいざこざを諌めた功績、並びに聖女候補者を襲撃の手から救った功績として、ルーカス殿下、ルーシー殿下、エレノア殿下、アレクサンダー殿下、エリザベス殿下に加えて、ルーカス殿下婚約者アイビー様、ロンカーク伯爵家当主サンディ、バイザー子爵家当主ミカエル、そして名誉男爵ジンに、王国より勲章を授ける」


 ティナおばあさまは別口でもらうそうで、近衛騎士も別に勲章をもらうそうだ。

 僕達は陛下の前に並んで、勲章を服につけてもらう。

 教皇国からの勲章もあるから、服が勲章だらけになってきたぞ。


「そして、此度の大きな功績を持って、名誉男爵ジンヘクロスロードの姓を授けると共に、法衣子爵にする」

「え?」


 ジンさんのびっくりした声が謁見の間に響いた。

 これには僕もびっくりだけど、よく考えたら今まで功績を沢山上げているから何も問題はない。

 教皇国関連で、更に功績を上げるタイミングを狙っていたのかも知れないぞ。

 ジンさんには子爵の証である短剣が手渡され、謁見の間にいた多くの貴族から拍手が送られていた。


「これで本日の謁見を終了とする」


 そして、陛下からの言葉で謁見は終了。

 これはどう見ても、今日の謁見のメインはジンさんが子爵になる事だよね。

 という事で、皆で昼食を食べながら話をする事になりました。


「陛下、何故俺が子爵になるのですか?」

「ジンが打ち立てた功績が溜まっていたからに決まっておる。聖女様を救っただけでなく、教皇国をクーデターから救った功績も大きいぞ」

「ははは、ですよね……」


 ジンさんは分かりきっていながらも、もしゃもしゃとパンを食べながら陛下に自身の叙爵について話を聞いていた。

 閣僚からも全く異論はなかったというし、仮にルーカスお兄様が国王だったとしてもジンさんは子爵になっていただろうな。


「それに、アホな貴族がうるさいのよね。たかが名誉男爵が王子様のお世話とは不敬だ、ってね」

「アホな貴族は、エドガーとルカリオに取り入るつもりなのが顔から溢れ出ていたわ。今回の叙爵は、エドガーとルカリオの為でもあるのよ」

「俺は、二人の王子を悪意から守る為の防波堤ですか」


 正式な貴族となったジンさんがエドちゃんとルカちゃんのお世話をしても、陛下からの命令と言えばお終いだし陛下もその様に言うだろう。

 ジンさんには悪いけど、アホな貴族からエドちゃんとルカちゃんを守る為にも頑張ってもらわないと。

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