三百六十九話 謁見の日でもジンさんはベビーシッター

 そして、陛下に謁見する日になった。

 僕とリズとサンディは、きっちりとした服に着替えます。

 主役のミカエルとジンさんも、きっちりと謁見用の服に着替えています。


「今回は、私達も来れる人は来る様にとお達しがあったんだよ。何か伝える事があるのかも知れないぞ」


 辺境伯様も、僕達と一緒に王城に向かいます。

 僕達に勲章を授与するだけなら関係者を集めて終わりなので、辺境伯様も来るとなるともしかしたらルーカスお兄様とカレン様の婚約の件が正式に発表されるのかも知れないぞ。

 何はともあれ、僕達は王城に向かいます。


「王城に着くと、毎回こうなんだよなあ……」

「「あうー」」

「「「むうー」」」


 王城に着くと、早速エドちゃんとルカちゃんが精一杯のハイハイでジンさんの下に近づいて、ジンさんに抱っこをおねだりします。

 ジンさんが何回か二人のベビーシッターをしていたら、ジンさんはエドちゃんとルカちゃんのお気に入りになっていました。

 そんなジンさんと二人の王子のやりとりを、恨めしそうに見ているリズ達。

 リズ達は二人が寝ている所を起こしてしまった事があるので、ジンさん程懐かれていないのもあります。


「ふふ、流石はジンね。すっかり二人のお気に入りね」

「二人のテンションも、とっても高いわね」

「勘弁してくださいよ」


 ジンさんがエドちゃんとルカちゃんを抱っこしている所に、王妃様とアリア様がやってきた。

 エドちゃんとルカちゃんはジンさんに抱っこされてキャッキャしているし、王妃様とアリア様の指摘は間違いではないんだよね。


「今日はミカエルちゃんも表彰されるし、頑張らないとね」

「あい!」


 ティナおばあさまがミカエルの頭を撫でていたけど、ミカエルは教皇国での表彰の時も大人しかったし大丈夫だろう。

 ミカエルも気合十分って感じだ。


「うん? くんくん、お前らうんこしただろう!」

「「ふえ?」」


 と、ここでジンさんがエドちゃんとルカちゃんのお尻の臭いを嗅ぎ始めた。

 どうやら、エドちゃんとルカちゃんがうんこをしてしまった様だ。


「あらあら、おしめ代えないとね」

「「うー」」

「もしかして、またこのパターンかよ」

「そう見たいね、ジンにオムツの交換をお願いするわ」


 エドちゃんとルカちゃんにガッツリと抱きつかれたままだったので、ジンさんは諦めて二人を抱いたまま育児室に向かっていった。

 ジンさんは、すっかりおむつ交換のプロになってしまったぞ。


「ふう、ようやく会議が終わったぞ。おや? ジンはどうした?」

「エドちゃんとルカちゃんのおしめを代えに、育児室にいます」

「はは、ジンらしいと言えるな」


 ここに会議が終わった陛下もやってきた。

 ジンさんが不在の理由を聞いて、直ぐに納得していた。

 因みに陛下は、エドちゃんとルカちゃんが寝ている所を何回も起こしているので、二人に嫌われてしまっているという。

 陛下はあまり気にしていない様だけど、内心は凹んでいそうだぞ。


「ふう、やっと終わったぞ。二人ともモリモリとうんこしていたぞ」


 と、ここにエドちゃんとルカちゃんのおしめを代えたジンさんが戻ってきた。

 あれ?

 二人を抱いていないけど、どうしたのだろうか?


「ジンさん、エドちゃんとルカちゃんはどうしました?」

「あの二人は、出すもの出してスッキリしたら寝てしまったぞ。全く赤ん坊というのは気まぐれだな」


 成程、二人はおしめを代えたらスッキリして寝てしまったのか。

 育児室には専用の侍従も常時いるし、警備もバッチリだ。


「ははは。ジンよ、王城に着いた途端に大仕事だった様だな」

「陛下、勘弁して下さいよ。何で俺がここまで懐かれたのか、俺自身も良く分かってないのですから」


 面白そうにジンさんの肩をバシバシと叩く陛下に、ボソリと愚痴を溢しているジンさん。

 ともあれ、これで全員揃ったので謁見の間に移動します。

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