三百六十五話 皇都から帰る日

 皇都に着いて七日目。

 つまりは、僕達が王国に帰る日です。

 とはいえ、毎日の様に王国に帰っていたし、終いには僕の屋敷で寝る事になったからなあ。

 因みに、昨日はルーカスお兄様達も僕の屋敷に泊まっていました。

 僕の屋敷にはルーカスお兄様達の部屋もあるので、たまに泊まりに来ているんだよね。

 

 公式行事ももう無いし、今日も孤児院の代わりになる家の修繕と住む為の準備をしていきます。


「あー、昨日は気疲れする事ばっかりだったからなあ。こういう作業の方が気楽で良いわ」

「そのとーり!」


 謁見服姿でずっと式典に出ていたジンさんは、リズと共に張り切って部屋の修繕を行っていた。

 二人とも、じっとするのが苦手だからなあ。

 家の修繕は殆ど終わっていて、後は荷物を運ぶだけだ。

 昨日行った家具屋にジンさんとリズと行って、新しく出来た二段ベッドを受け取る。

 二階の部屋に二つずつ二段ベッドを設置し、これで大物の設置は完了。

 布団やシーツを敷けば、寝る場所は完成。


「「「おお、すげー!」」」


 孤児院の子ども達は、我先にと自分の寝るベッドを決めていきます。

 皆、笑顔が戻って良かった。

 孤児院が爆破されたばっかりの時は、子ども達はショックを受けた表情だったもんな。


「ここまでして頂き、感謝します。ここからは、街の人と共に孤児院を運営していきます」

「「「ありがとーございます」」」


 孤児院の代わりの家に住む準備ができたので、今日から孤児院の人達はこの家に住むそうだ。

 家の前に子ども達とシスターが集まって、お礼を言ってくる。

 ここからは、少しずつ足らない物を買い足していくという。

 そして、名残惜しそうにしている二人が。


「ぶりちゃ……」

「みかちゃ……」


 あんたら、本当に二歳児ですか。

 手を繋いで別れを惜しんでいるぞ。


「ほら、来月も会うのだから、もうそろそろいくわよ」

「ゔん」


 ティナおばあさまも思わず苦笑しながらも、べそをかいているミカエルの顔をハンカチで拭いてあげていた。

 しょうがないなあといった感じで、ジンさんがミカエルの事を抱っこしていた。

 やっぱりジンさんは、子どもの面倒見が良いよね。


「では、また来月伺いますね」

「「「さよーなら!」」」


 孤児院の人達と別れて、僕達は大教会に向かいます。

 ミカエルは完全にぐずってしまい、ジンさんの胸元に顔を埋めています。


「おやおや、これはどうかされましたか?」


 ミカエルがぐずっているのは大教会に行っても変わらず、案内された応接室にいた前教皇も普段の元気な様子ではないので驚いていました。


「単に、ブリットちゃんと離れるのが寂しくてぐずっているだけですわ。お気になさらずに」

「はは、仲良くなっていましたからな。では、二人が早く会える様に、我々も尽力しないといけませんな」


 ミカエルがぐずっている理由をティナおばあさまがあっさりとバラしていたけど、前教皇は納得した表情になっていた。

 さてさて、この会談が終われば正式に僕達はお役御免になります。

 因みにぐずっていたミカエルはというと、いつの間にかジンさんに抱きついたまま寝てしまいました。

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