三百六十四話 新たなターゲット?

 最後の公式行事の就任式は午前中で全て終わったので、午後は孤児院の代わりになる家の修繕を行います。

 昼食を食べて家に向かうと、そこには多くの人が待っていてくれた。


「俺らも手伝うぞ」

「早く子ども達をこの家に住ませてやらないとな」


 街の人も、孤児院の子ども達の事が気になっている様だ。

 早速、皆で外壁や屋根の補修に入った。

 僕や子ども達は、各部屋の清掃の続きを行います。


 トンカントンカン。


 部屋の中で、トンカチを叩く音が響きます。

 一部の部屋では、床の補修も行っています。

 スラちゃんとプリンとヒカリが何故か木屑も消化してくれるので、ゴミも出なくて経済的です。

 そんな中、僕はティナおばあさまとシスターと共に街のとある場所に向かいます。

 三人で向かったのは、家具屋さん。

 二段ベットやテーブルなどを購入する為です。

 

「いらっしゃい、待っていたぞ」


 話がついているのか、直ぐに店の主人が出迎えてくれた。

 因みに、既に教皇国から家具購入のお金は支払われています。

 僕達は主人の案内で、店の奥に向かいます。

 そこにはテーブルの他に、二段ベッドが三つ並んでいました。

 シスター用のベッドもあります。


「すまんな。残りの二段ベッドは急いで作っているが、明日になりそうだ」

「分かりました。残りの分は、また明日伺います」


 今日も孤児院の人は僕の屋敷に泊まる予定だし、明日になれば二段ベッドも揃うのだから問題はなかった。

 僕はアイテムボックスに、全ての家具を収納した。


「おお、たまげたぞ。こんな大量の家具を一気にしまう事ができるなんて。流石は、双翼の天使様だ」

「ははは……」


 家具屋の主人はかなりびっくりした様で、目から目玉が飛び出しそうなほど驚いていた。

 とりあえず、家に向かわないと。


「アレク君のアイテムボックスには、どのくらいのものが入るのかしら?」

「どのくらいでしょうか? スラちゃんやプリンのアイテムボックスにどのくらい入るかも試した事はないので、今度試してみるのも良いかもしれませんね」


 家に戻る道でティナおばあさまと話をするけど、アイテムボックスにどんな制限があるのだろうか?

 僕自身も興味はあるけど、先ずは目の前の事を片さないとね。


「先ずは何の家具を出しましょうか?」

「では、台所にテーブルと椅子をお願いします」

「分かりました」


 僕はシスターから大体の位置を指定して貰って、アイテムボックスからテーブルと椅子を取り出す。

 微調整は、人の手で行います。

 ついでに、食器棚なども設置します。


 一階の部屋には、ブリットみたいな小さな子どもの二段ベッドとシスター用のベッドを設置します。

 後は二階の部屋に二段ベッドを設置するのだが、まだ床の修繕が終わっていないので後回しにします。

 その間に、街の人から寄付された食器や服などを洗っていきます。

 少しずつ、人が住む為の環境が整ってきた様だ。


 とはいえ、午後から始めたので今日はここまで。

 明日は、朝から続きを行う事にします。

 今日は領地に戻るというので、シェジェク伯爵とクレイモアさんは帝国と共和国に送って行き、一旦残りのメンバーは僕の屋敷に移動します。


「教皇国への滞在も、明日で終わりですね」

「そうね。色々とあったけど、何とか収まったわね」


 今日も辺境伯様の屋敷に移動して、皆で夕食です。

 気になるのはアホスタイル枢機卿の出身地だけど、他国の事だからあまり手出しはできない。

 ヤークス新教皇に、懐古派への対策を頑張ってもらうしかないだろう。


「おお、そういえば本日付けで全貴族にルーカス殿下と聖女様の婚約の件が周知されたぞ。ここにいる人が、教皇国から勲章を授与された事も併せて周知された」

「となると、またアホな貴族の動きには注意しないといけませんね」

「うむ。残念な事に、アホな貴族はいくらでも生まれてくる。当面は、婚約者のいないルーシー殿下にアプローチをしてくるものが増えるだろう」

「それは、嫌だな……」


 辺境伯様の指摘に、ルーシーお姉様がゲンナリとした表情をしている。

 そっか、ミカエルもブリットという有力な婚約者候補がいるから、明確に相手がいないのはルーシーお姉様だけなんだ。

 アホな貴族からルーシーお姉様へのアプローチが増える可能性は、かなり高い気がするな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る