三百五十一話 突然の襲撃
しかし、事態は急速に動いていった。
教皇国に着いて五日目の早朝。
ズドーン、ズドーン!
「な、なになに?」
「何の音?」
「落ち着いて、騎士服に着替えて武器を準備して」
まだ朝日が昇ったばかりの早朝、突如として聞こえてきた複数の爆発音に僕達は目が覚めてしまった。
あまりの大きな音に僕達は飛び起きると、冷静に指示をするティナおばあさまに従って服を着替えた。
ドンドンドンドン。
突然ドアが激しく叩かれた。
しかし、誰がきたかを確認した近衛騎士のジェリルさんとスラちゃんは、ドアを開けずにそっと僕達の所にやってきた。
口に人差し指を当てて僕達に向けて静かにと、スラちゃんも触手を使ってジェスチャーをしている。
僕も探索を使うと、直ぐにドアの周りにいる人が悪意のある人だと分かった。
ティナおばあさまは、さささとタブレットみたいな魔導具で教皇国で異変が起きたと陛下に連絡していた。
「迎賓館の中は、既に悪意のある人で固められています。ジンさんとシェジェク伯爵とクレイモアさんを拾って脱出しましょう」
僕が小さな声で話をした内容に、全員がこくりと頷いた。
そして、バレないようにジンさんとシェジェク伯爵とクレイモアさんの部屋にゲートを繋いで、爆破された孤児院の代わりの家に避難した。
「くそ、完全にしてやられたぜ。まさか、一斉に重要箇所を制圧してくるとは」
「でも、どうやら防壁の一つの入り口と大教会の周辺を制圧しただけみたいですね。街中には、そこまで悪意のある反応はありません」
孤児院の代わりの家に着くと、中心部から離れているのもあるのか辺りは静穏を保っていた。
爆発音が聞こえたのか、流石に住民は何事かと道に出ていた。
携帯食を食べてお腹を満たしていると、窓の向こうの路地では聖騎士の一行が中心部に向かって走っていっている。
「この様子では、懐古派は皇都を完全に制圧した訳ではなさそうですね」
「なら、こちら側の手に取り戻すチャンスでもありますわ」
シェジェク伯爵とクレイモアさんが、お互いに顔を見合わせて頷いていた。
えーっと、まさかこのメンバーで大教会に突撃するつもりですか?
「あまり大勢で行っても、かえって行動しにくいな」
「なら、このメンバーで動きましょう。あの馬鹿どもに、朝っぱらから叩き起こされたお礼をしてあげないといけませんわね」
「そのとーり。リズ、まだねていたかったのに」
あ、ジンさんとティナおばあさまとリズも怒り心頭だ。
しかも懐古派の事よりも、朝早く起こされた方に怒りの矛先が向いている。
シェジェク伯爵もクレイモアさんも、その通りだとジンさんとティナおばあさまの発言を肯定している。
これはもう僕には止められないぞ。
「と言う事で、アレク君は大教会の前にゲートを繋いでね」
「……はい」
僕は笑顔のティナおばあさまに意見を言う事ができず、ただ単に頷く事しかできなかった。
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