三百五十二話 あえて堂々と登場
大教会の近くにゲートを繋いで、僕達は物陰から様子を見ています。
司祭服がパンパンの太った男が、口から泡を飛ばしながら兵に詰め寄っている。
間違いなく、昨日怪しいと思った人物の内の一人だ。
「おい、何で宿泊客がいないんだよ!」
「はっ。部屋の中には確かに寝ていた痕跡はあったのですが、何故か誰もいませんでした」
「くそ、気づかれたか。きっと近くにいるはずだ。枢機卿と地方の司教は我が手にある。こちらが有利なのは間違いないのだ」
僕達が迎賓館にいなかった事で、だいぶ焦っている。
きっと反撃されるかもって思っているのだろう。
「主だった人は大教会の中にいますね。枢機卿も大教会の中にいます」
「では、枢機卿達を救い出してお馬鹿さんを倒せばミッションコンプリートだな」
「ええ、実にわかりやすいですね」
ジンさんの意見に皆が頷いた。
そして全員完全武装状態に。
流石に真剣だと殺しちゃうので、木剣を手に持っています。
とはいえ、魔力で強化しているので骨折くらいは覚悟してもらわないと。
そしてクレイモアさんは、ガントレットを両手につけています。
まさかの武道家スタイルだったとは。
そして、僕達は大教会に向かって歩き出します。
「あ、司祭様。来賓が姿を現しました!」
「何!」
ざっざっざっ。
まるで、ダダンダッダダンの音楽が背後に流れそうな感じで、僕達というか僕以外の皆がニヤッと笑いながらあえて存在をアピールする様に歩いていきます。
僕達の堂々とした登場シーンに、逆に兵はビビってしまって後退りをしている。
「な、何をしている! 奴らを捕まえろ!」
「「「はっ!」」」
司祭の声で我に返った三十人くらいの兵が、一斉に僕達に襲いかかってきた。
が、全然僕達の敵じゃなかった。
「おりゃー!」
「セエエエイ!」
「はああああ!」
「はっ!」
木剣を持ったリズとジンさんとティナおばあさまとシェジェク伯爵が、近衛騎士と共に兵をぶん殴っている。
うーん、木剣なのに鉄の鎧がへっこむ程の威力だぞ。
スラちゃんも木剣を振り回して、兵を倒していっているぞ。
「セイセイセイセイ!」
クレイモアさんは、向かってくる兵を文字通りに殴っていく。
うわあ、真剣も拳で砕いているよ。
「プリン、僕達何もやらずに終わりそうだね」
僕はプリンと共に万が一に備えて魔法の準備をしているが、シェジェク伯爵とクレイモアさんの護衛もとても張り切っているので全く出番がなかった。
こうして、一分もかからずに戦闘は終了。
勿論、僕達の圧勝です。
「さて、あなたには聞きたい事が沢山ありますわ」
「素直に答えてくれれば、痛い事はちょっとで済みますわ」
「もし嘘をついたなら、ふふふ、とても悲しい事が起こりますわ」
「あわわわわ……」
尻餅をついている司祭を、ティナおばあさまとシェジェク伯爵とクレイモアさんが取り囲んでいる。
いつの間にか、ティナおばあさまとシェジェク伯爵は真剣を抜いていた。
とっても良い笑顔で司祭を取り囲む三人。
「ぎゃあああああ!」
あえなく、司祭は知っている事を全て話さざるを得ない事になったのだった。
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