三百五十話 警戒しながらの就寝

 先ず僕が屋敷に行って、チセさんに事情を話した。


「大丈夫ですよ。イザベラ様からもしかしてと言われていましたから。準備はできています」


 流石は辺境伯夫人様だ。

 辺境伯様をこき使うだけでなく、周りの事にも気を遣っていたとは。

 既に部屋の準備もできているというので、サンディとミカエルと共に孤児院の人々を僕の屋敷に招待します。


「ここが、ミカちゃのおうち?」

「にーにとねーねのいえ!」


 孤児院の子ども達は、ワイワイしながら屋敷の中に入って行きます。

 ミカエルはブリットとすっかり仲良くなって、手を繋いで屋敷に入っていきます。


「ふーん、あの子がミカエルちゃんの事を好きになった子ね」

「聖女様候補らしいわね。相手としては不足ないわね」

「目の前で身を張ってカッコ良く守ったんでしょ?」

「良いわね。私もそんな風に守ってもらいたいわね」


 そして、手を繋いで屋敷に入る二人を見守る妊婦の方々。

 その表情はうっとりとしていた。


「あの、レイナさんにカミラさん。ナンシーさんにルリアンさんも、一体何をしているのですか?」

「いやあね、イザベラ様が皆に話していたんだよ」

「とっても微笑ましい所を聞いたってね」

「それに、二つ名が付くほどの活躍もしたんでしょう?」

「勇敢なる天使様ね。確かにミカエルちゃんにピッタリね」


 タイミング的にイザベラ様とブリットは合っていないから、辺境伯様経由で情報が漏れたんだな。

 辺境伯様はミカエルに二つ名がついた瞬間も、僕達と共に医療施設で一緒だったし。

 そして、レイナさん達も僕の屋敷に入って行った。

 ミカエルとブリットの様子を、生温かい目で見守るつもりだな。


「チセさん、僕達は明日屋敷に戻れるか分からないので、宜しく頼みます」

「お任せください。ただ、周りの人の暴走は止められないかも知れませんが……」


 僕とチセさんは、顔を見合わせて苦笑していた。

 ここはレイナさん達の常識に期待しよう。


「お兄ちゃん、お帰り!」

「ただいま」

「特に問題はなかった?」

「特には。お邪魔虫が何人かいますけど」

「それは仕方ないわ。そのくらいなら問題ないでしょう」


 教皇国の迎賓館に戻り、出迎えてくれたリズとティナおばあさまと男女していた。

 まあ、確かにミカエルとブリットは大変だけど、実害があるわけじゃないからお任せとしておこう。


 それよりも、迎賓館で気になる事が。


「やはり、地方から来ている司教や司祭に怪しい人が紛れていますね」

「集団で怪しい人がいるよ!」

「既にサイファ枢機卿にも連絡しているわ。特定の地方の人物が全員怪しいのは、何か引っかかるわね」


 僕の屋敷にサンディやミカエルに孤児院の人々を送っていった際に、迎賓館にやってきた地方からのとある一行。

 ドス黒い悪意がプンプンとしていたので、スラちゃんとプリンに一向の様子を見てもらったのだ。

 

「どうも、問題になっているアホスタイル枢機卿の出身地の司教や司祭らしいわね。教皇国の中でも、かなりの高地にある所らしいわ」

「その情報だけで、既に怪しさ満点ですね。アホスタイル枢機卿の影響が及んでいるのは間違いないですね」


 アホスタイル枢機卿は、懐古派と繋がっていて既に実権を剥奪されている。

 その事実は広く知られているのに、悪意を隠さずに堂々とやってきた。

 これは、明日の教皇選挙は大荒れの予感がプンプンとしているぞ。

 スラちゃんとプリンは、夜な夜なアホスタイル枢機卿の影響のある人を監視するという。

 シェジェク伯爵やクレイモアさんにも情報を共有して、僕達も警戒しながらベッドに入った。

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