三百三十八話 要人の到着

 昼食は迎賓館で食べる事になったのだが、ここでリズからとある提案が。


「サンディちゃんとミカちゃんも呼んでいい?」

「いいわよ。皆で一緒にご飯を食べましょうね」

「わーい!」


 サンディもミカエルも、僕達とは夜しか会ってないもんね。

 という事で、僕の屋敷から二人を呼び寄せます。


「ねーね!」

「ミカちゃん!」


 夜に会っていたとはいえ、やっぱりミカエルは寂しかった様だ。

 ミカエルは迎賓館に来ると、直ぐにリズに抱きついていった。


「でも、そんなに大変な事があったんですね。無事に到着して何よりです」


 昼食を食べながらさっきのサイクロプスを倒した事を話すと、流石にサンディが驚いていた。

 そりゃ五メートルを超える巨大な魔物と戦うなんて、普通はないからね。

 因みにサイクロプスの素材は、解体した上でこちらに届けてくれるという。

 皮がとても丈夫なので、色々な素材に使えるらしい。

 なので、ありがたく使わせてもらおう。


 昼食をすませてルーカスお兄様達とカレン様を王城に送ったら、サイクロプスとの戦闘もあって流石に疲れてしまった。


「にーに、ねむいよ」

「今日は一緒に寝ようか」

「うん……」


 お昼寝タイムとなったミカエルとリズとサンディも一緒になって、宿泊する寝室のベッドに潜り込みます。

 ベッドはとても大きくて、子どもが四人で寝てもへっちゃらです。

 うーん、僕も眠いなあ。

 さっきの戦いで魔力も沢山使ったからか、皆あっという間に眠ってしまった。

 サンディは、僕達が不在の間ずっと気を張っていたのもあるよね。


「ふあ、よく寝た」


 二時間ほどお昼寝をして、体力も魔力も気力も回復。

 そろそろという事で、帝国と共和国から教皇国に来る人を呼んできます。


 帝国からは、この人がやってきました。


「本当は娘がくる予定だったけど、妊婦だからね。仕方ないから私がきたんだよ」


 と言っても、娘であるケイリさんに子どもができてニマニマな顔のシェジェク伯爵です。

 シェジェク伯爵はとっても強いし、同じ女性だからケイリさんも安心だ。


 共和国からは、この方がやってきました。


「外交担当でもありますし、聖女様も女性という事ですので」


 久しぶりのクレイモアさんです。

 仕事が忙しくて、とにかく大変らしいです。

 僕も知っている人でとても安心です。

 そして、初めて会う人なので、張り切っている人が。


「こんちゃ、ミカでしゅ」

「初めまして、サンディと申します」

「あら、よくご挨拶が出来ましたね」

「しっかりとしていますね」


 サンディはともかくとして、ミカエルは挨拶をして褒められるのが嬉しいのか、初めて会う人には積極的に挨拶をしている。

 そして、大抵は褒めてもらいながら頭を撫でて貰っています。


「ミカエルはバイザー子爵家の当主で、僕とリズとは従兄弟にあたります。サンディはロンカーク伯爵家の当主で、訳あって僕達と一緒に過ごしています」

「アレク君の教育もあって、小さいのにしっかりとしているのね」

「とても良い事ですわ」


 シェジェク伯爵とクレイモアさんは外交担当で僕とリズの境遇を知っているので、サンディとミカエルの事もどんな境遇なのかわかっている様だ。

 あまり多くの事を語らないのはありがたい。


「それにしても、ケイリ様ももうすぐ母親になられますね」

「ええ、今から孫をこの手に抱くのが楽しみですわ」

「とても羨ましいですわ。私なんて仕事が忙しくて、全く出会いがないのですよ」


 そして、ティナおばあさまも参加して大人の女性三人での井戸端会議が始まりました。

 こうなると、話が終わるまで時間がかかりそうだな。

 

「ティナおばあさま、庭にいます」

「俺が見ていますよ」

「気をつけてね」


 ティナおばあさまはお喋りに夢中なので、返事もそこそこにお喋りを再開していた。

 ジンさんも余計な事を言われない様に、僕達に着いてきた。

 さて、庭に出て何をしようかと思っていたら、ミカエルがウエストポーチ型のマジックバックをゴソゴソとしている。

 普段はお気に入りのおもちゃを入れているのだが、一体何を取り出すつもりか。


「じゃーん」

「おい、木剣がおもちゃかよ」


 ミカエルが意気揚々とマジックバックから取り出したのは、ダガータイプの木剣だ。

 ジンさんも意外な物が出てきて驚いているけど、男の子はこういうのが好きだよね。


「いくお、スー!」


 そしてミカエルは、同じく木剣をアイテムボックスから取り出したスラちゃんと撃ち合いを始めている。

 どうも毎朝の僕とリズの訓練を見て、いつの間にかスラちゃんと始めていたのだ。


「おい、もしかしてミカエルは身体強化を使っていないか?」

「そうなんだよ。スラちゃんが教えたんだって」


 ミカエルとスラちゃんの高速の打ち合いに、ジンさんはとても驚いている。

 ミカエルはミカエルで僕達の魔法訓練を見ていて、いつの間にか魔力循環の方法を覚えていた。

 勿論危険だから、ミカエルには魔力放出は教えていないけどね。


「因みにレイナさんとカミラさんも、ミカエルが魔法を使える事を知っていますよ。中途半端に教えるより、しっかりと教えた方が良いだろうって言っていました」

「はあ?」


 ジンさんは、自分の奥さんがミカエルに魔法を教えているとは知らなかった様だ。


「やー!」


 そんなジンさんの戸惑いをよそに、ミカエルとスラちゃんは元気よく木剣を打ち合っていたのだった。

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