三百三十五話 皇都への道のり三日目
皇都に向けての道のり三日目。
幸いにして昨日この街の毒飴を舐めた子どもも、投薬の効果で完治したという。
「あの毒に治療薬はないと聞いたぞと、捕まえた犯人は言っていました。犯人にとっては、子ども達が回復したのが相当の驚きだったみたいですな」
僕達が出発する前に、見送りに来てくれたバイス司教が犯人について話をしてくれた。
犯人にとっては絶対に助からない毒だと思っていたらしく、僕が立ち寄る村で毒飴を配って僕達を足止めし、街でも毒飴を配る事で僕達の名声を落とす様にしようとしたという。
子どもを狙ったのは単純にターゲットにしやすいと思っただけで、殺害できれば誰でも良かったらしい。
今回の件はサイファ枢機卿経由で皇都にも連絡が行き、不審な人物から食べ物を貰わない事が全ての街に通達されたという。
「とはいえ、懐古派は自分達の思いを叶える為には他人の命なんてどうでも良いのですね」
「今回の件で、より懐古派への警戒レベルが上がりました。無差別殺人になりかけましたので、街の人も懐古派に対してかなり警戒を強めているそうです」
今回の件の毒飴事件の件でサイファ枢機卿と話をしているけど、よく考えると懐古派は目論見が失敗するばかりで自分達の首を絞めているだけの様に思えるな。
そんな事を考えながら、僕達を乗せた馬車は街道を進んで行きます。
途中現れる動物を倒しながら、今日昼食を食べる村に到着します。
「おや? リズ殿下、如何されましたか?」
「もぐもぐ。うーん、何だか変な感じがするの」
サイファ枢機卿の質問に答えながら、もしゃもしゃとご飯を食べながらリズが辺りをキョロキョロと気にしています。
スラちゃんとプリンも、辺りの気配を探っている様です。
三人は何もなければこんなに辺りを気にしないので、僕もティナおばあさまもジンさんも辺りを警戒し始めました。
僕も食事をしながら、辺りを探索していると、いた!
「向かいの建物の陰に、不審な人物がいます!」
こっそりと建物の陰からこちらを伺っている不審者を見つけたので、直ぐに聖騎士と近衛騎士が不審者を取り押さえる為に走り出します。
「くそ!」
黒尽くめの如何にも怪しい風貌の男は、手榴弾みたいな魔導具をこちらに投げて逃走をはかった。
ピカー!
「「「わあ!」」」
突然投げられた魔導具が光り出したと思ったら、辺り一面にオークの大群が現れた。
「貴方達は怪しい人物を追いかけなさい!」
「「「はっ!」」」
ティナおばあさまが、突然オークが現れて戸惑っている近衛騎士と聖騎士に指示を飛ばした。
怪しい人物は追いかけていったメンバーに任せよう。
「とても分かりやすい襲い方だな」
「ええ、この村の防衛力と私達の護衛人数を見込んで、これだけの数のオークをけしかけたのでしょうね」
僕達は素早く武器を抜いた。
目の前のオークは百体以上だけど、オークジェネラルの様な上位個体はいない。
となると、数が多くても僕達の敵ではない。
「わーい、お肉祭りだ!」
「ほはほ。これだけのオークを目の前にしても、リズ殿下にとっては唯の食糧にしかなり得ないのか」
オーク肉が美味しい事を知っているリズとスラちゃんとプリンは、嬉々としてオークの大群に突っ込んでいった。
そんなリズ達の様子を、聖騎士に守られながらも冷静にお茶を飲んでいるサイファ枢機卿が見つめていた。
「うーん、食後の運動にもならないぞ」
「私達を倒すつもりなら、せめてオークの上位種を大量に呼び寄せないとね」
動きの遅いオークなので、ジンさんとティナおばあさまはつまんない様子で次々と倒していく。
僕も魔法でオーク肉が傷まない様にダガーの両手剣で戦うけど、特に抵抗なくオークを倒していく。
「おお、お肉がいっぱいだよ!」
こうして僅か数分で、オークの大群はただの肉と変わり果てた。
スラちゃんとプリンが、嬉々としてオークの後処理をしている。
皆であっという間にオークを倒したから、村の建物にダメージもないし人的被害もない。
良かったと僕達が安堵している所に、怪しい人物を追いかけていたメンバーが戻ってきた。
「申し訳ありません。馬を隠していた様で、まんまと逃げられました」
「これから向かう街の方角に逃げて行きました」
「そこまで分かれば十分だわ。サイファ枢機卿、街に連絡をしてくれますか?」
「畏まりました」
僕達も怪しい人物を追いかける様に、準備を整えて街へ急ぎます。
そしてもう少しで街に着くという所で、サイファ枢機卿の所に街から連絡が入った。
「どうも逃げた不審者は、街で聖騎士に追い詰められてゴブリンを召喚する魔導具を使った様です。しかし上位種はおらずゴブリンも三十匹程しかいなかったので、聖騎士に討伐された上で不審者も拘束されたという事です」
「そう、それは良かったわ。何より街に被害が出なくて何よりだわ」
サイファ枢機卿からの報告にホッとしつつも、僕達は街に急ぎます。
街で捕まった不審者の確認も必要だよね。
「皆様のお陰で、被害が広がらずに済みました。村での対応も含めて、厚く御礼を申し上げます」
不審者の確認も済んで、教会でワーロード司祭と話をする事に。
ワーロード司祭は紫髪の若い女性だったので、とってもびっくりです。
今まで出迎えてくれた人は、枢機卿を含めても殆ど年老いた人だった。
あと、ワーロード司祭はとってもお胸が大きい。
シスター服がぱつんぱつんです。
「不審者の確認も無事に終わりました。聖騎士の対応も素早かった様ですね」
「ええ、昨日の不審者による毒飴事件を受けて街に出入りする人物の監視を強化しておりましたので」
相手が女性ということもあってか、ティナおばあさまが対応してくれた。
因みに不審者が持っていた通行証は正規の物だったのに、あの黒尽くめの怪しい格好で門を通過しようとしたらしい。
着替えれば良かったのに、そこまで頭がまわらなかった様だ。
「しかし、皆様は本当にお強いのですね。付けられております二つ名の通りで、私もとても感激しております」
「私も改めて皆様の強さを拝見する事が出来ました。最前列で戦う姿を見る機会は、とても貴重でしたよ」
「それは羨ましいですね。華麗な剣技でオークの大群を僅か数分で倒す所を、私もこの目で見たかったですわ」
うーん、僕達にとってはオークはとっても退屈な相手だったけど、それでも一般的には強敵になるんだ。
サイファ枢機卿が僕達が戦っている所を再現していて、ワーロード司祭はとても興奮しているた。
「危険度といえば、昨日の毒飴の方が高かったかのう」
「一般人にとっては、百体のオークも十分に脅威かと思われますが」
因みに今日の陛下への報告はかなりあっさりとしたのもだった。
オークごときでは僕達は問題ないと思ったのでしょうね。
レイナさんとカミラさんからは、特に意見はなかった。
ちゃっかりとオーク肉だけ要求されました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます