三百二十四話 休息日のクッキングショー

「あの、何を作っているのですか?」

「えーっと、自分で好きな具材を混ぜて鉄板で焼く粉ものです」


 調理場でお好み焼きのタネを作っている僕の事を、チセさんが不思議そうに見つめていた。

 リズとサンディとスラちゃんとプリンがバザール子爵領で購入した新しい万能ソースを使った僕の新作を心待ちにしていて、事あるごとにまだーって視線を僕に浴びせていたのだ。

 ちょうど今日は休息日なので、リクエストに答える事にした。

 この世界には鰹節はなかったけど、港町のポートコールに出汁がよく取れる魚があったので買っておいたのだ。

 キャベツもどきの野菜もあったし、長芋の様な粘り気のある芋もあった。

 という事で、お好み焼きもどきを作ります。

 

「お兄ちゃん、良い匂いがしているよ!」

「お庭で調理するから、ちょっと待っていてね」

「あい!」


 出汁の良い匂いに誘われて、リズとミカエルとスラちゃんとプリンが調理場に顔を出している。

 折角のいい天気なので、庭で鉄板を出してバーベキューをしながらお好み焼きもどきを焼くことにします。

 具材は、新鮮な魚介類とお肉をスライスしたもの、とうもろこしや野菜も試してみます。


 早速庭にバーベキューセットを出して、鉄板に油を引きます。

 お好み焼きをひっくり返すコテはないので、フライ返しを使って代用します。

 最初は少量で、試した具材がどんな味になるか検証です。


「野菜がいっぱいで、栄養もバッチリですね」

「調理も簡単ですね」


 侍従のお姉さんがメイちゃんとリラちゃんを抱っこしながら、僕がお好み焼きもどきを作っているのを眺めています。

 調理自体はとても簡単だからね。

 前世でも、バイトでお好み焼きを作っていたっけ。

 いい具合に焼けたら、タネをひっくり返します。


「おお!」


 うまい具合にひっくり返ったので、ここに例の新作万能ソースを塗っていきます。


「お兄ちゃん、とってもいい匂いだよ!」


 リズの言う事もよく分かる。

 万能ソースが鉄板で少し焦げて、とってもいい匂いがしているのだ。

 小さく切り分けてお皿にもって、お好み焼きもどきの完成です。

 さてさて、肝心のお味はというと、


「「「おいしー!」」」


 有り合わせの物で作ったけど、上出来でしょう。

 万能ソースがとってもいい味をしている。

 リズもサンディもミカエルも、勿論スラちゃんもプリンも大満足だ。


「じゃあ、全部の具材を混ぜたミックスを作ってみよう」

「「「おー!」」」


 折角なので、各自でお好み焼きもどきを焼いてみる事にした。

 侍従のお姉さんやノエルさんにクロエさんとノラさんもリズ達についていてくれるので、火傷とかの心配はないだろう。

 ここで美味しそうな匂いに誘われた人が、両側の屋敷から顔を覗かせた。


「美味しそうな匂いが漂ってきているわね」

「ソースの香ばしい匂いがするわ」

「みた事がない料理だな」


 ちょうどお昼前でお腹をすかせていたレイナさんとカミラさん、そして辺境伯様が僕の屋敷を見ていた。

 その声に誘われて、他の人もこちらに顔を出している。


「お兄ちゃんが、新しい万能ソースを使った料理を作ってくれたんだよ!」


 口の周りをソースでベタベタにしたリズが、満面の笑みで答えている。

 その笑顔を見れば、とっても美味しいのは一目瞭然だった様だ。

 わらわらと、屋敷の庭に人が集まってきた。


「ほう、これは様々な具材が入っていていい物だな」

「一度に色々な物が食べられるわね」

「このソースが味の決め手だな。小麦を使った他の料理にも使えそうだ」


 辺境伯様とイザベラ様とジンさんも、お好み焼きもどきは好印象の様だ。

 折角なので、新作の焼肉のタレも試してみる事に。

 お肉を漬けるのと、焼いた肉に漬けるの両方を試してみる。


「これは美味しいわね。焼いた肉に漬けるだけで美味しいなんて」

「タレに漬け込んで焼くと、肉が柔らかくなるわ」


 お肉をバクバクと食べているレイナさんとカミラさんが、焼肉のタレを絶賛している。

 お肉を焼いて漬けるだけなので、とっても気軽に使う事ができる。


「この焼肉のタレは、もう少し高級素材を使って晩餐会でも使える物にしてもいいな」

「そうですね。落ち着いた味にすれば、十分使えます」


 辺境伯様とジェイド様が焼き肉のタレについて話をしているけど、僕なんかよりももっと高度な事を話しているよ。

 いずれにしても、料理は大成功だった。

 しかし、こうなるとティナおばあさまやルーカスお兄様にもご馳走する事になるのだろうなあ。

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