三百二十五話 マロード男爵領での薬草採取
最近は公務が落ち着いている事もあり、僕達はまたもや別の場所での薬草採取です。
今回は何故か同行者が多数います。
ルーカスお兄様達やカレン様にティナおばあさまがついてくるのは分かります。
このメンバーは、辺境伯領でもいつも薬草採取をしていますので。
「いやあ、ここがマロード男爵領か。のどかで良いところだな」
「生薬の研究も進んでいるという。実に興味深い」
そう、今回はマロード男爵領で薬草採取をするのだが、前回一緒に来た軍務卿と農務卿以外の閣僚が全員ついてきました。
えーっと、こんなに沢山の閣僚が王城にいなくて、政務は大丈夫なのでしょうか。
それっぽい事を言っているけど、目的は料理だろう。
この前、王城で軍務卿と農務卿がボタン鍋が絶品だったと自慢していたからなあ。
そして、僕達についてきたのは閣僚だけではなかった。
「マロード男爵領の温泉は、赤ちゃんでも入れるそうよ」
「私も久々に温泉に入りますわ」
そう、王妃様とアリア様がベビーカーにルカちゃんとエドちゃんを乗せて一緒に着いてきたのだ。
もう、最初から温泉に入ると宣言しているぞ。
「ルーカスお兄様、どう見ても皆さん観光目的ですよね」
「仕方ないだろう。特に、母上は子育てでずっと王城に篭りっぱなしだったから」
僕とルーカスお兄様は、もう同行者について深く言及するのは止める事にしたのだった。
「こ、これはこれは皆様勢揃いで」
マロード男爵の屋敷に着いて出迎えてくれたマイク様が、ここに来ている面子を見てびっくりしていた。
当初は僕達だけだったのに、急に同行者が増えてどうもすみません。
閣僚は一応仕事をするというので、このまま屋敷でマイク様とセシルさんと話し合いをするという。
僕達は薬草採取をするのだけど、王妃様とアリア様は温泉に入るという。
「初めてなので、公衆浴場に入ってみたいのですわ」
「良いですね。住民との触れ合いは大切ですね。ミカエルちゃんも一緒に温泉に入りましょうね」
「やたー!」
えーっと、一国の王妃様が住民と一緒に公衆浴場の露天風呂に入るという事になってしまった。
勿論近衛騎士とお世話の侍従はつくけど、街の人は驚くだろうなあ。
お昼になったら温泉街の食堂に合流するという事で、各自それぞれ動く事になった。
「はは、俺はこのメンバーに混じって良いのだろうか?」
「ジンさんは常識人枠なのだから、絶対にいて下さい!」
薬草採取になってから、ジンさんがポツリと呟いていた。
最近ジンさんは、偉い人に会う機会が多いからなあ。
とはいえ、先ずは目の前の課題を片付けないと。
今回の薬草採取の場所は、前にイノシシや鹿を間引いた森です。
「ここは辺境伯領やバザール子爵領と比べても森の中が明るいから、採れる薬草がまた違うぞ」
「本当だ、辺境伯領で少ない薬草がこっちでは沢山生えているよ」
ジンさんの説明にリズが答えている。
確かに生えている薬草の量が、辺境伯領と違うなあ。
「あとマロード男爵領で生薬が盛んなのは、沢山のキノコが採れるからだ。まあ、お前らは初心者だからアレクの鑑定を使って食用キノコを採ることだな」
確かに地面から生えているキノコや、木に生えているキノコがあっちこっちにある。
僕は鑑定を使って、食べられるキノコだけを採っていった。
「場所によって生えている薬草が違っていて、とても面白いね」
「辺境伯領だと珍しい薬草が、ここにはいっぱいあるね」
ルーシーお姉様とエレノアが話しているけど、バザール子爵領の様に隣の領地なのに薬草の生え方が全然違う。
マロード男爵領は山地ってのもあるのかもしれないな。
林業も盛んなので、山も良く手入れされている。
「物によっては根っこを採取するのもあるが、根を採取するのは栄養を蓄えた秋が多いな」
「桔梗とかですよね。確か薬草辞典に書いてありました」
「そういう事だ。この季節は、葉を採るのが中心的だな」
ジンさんの解説もあって、無事に沢山の薬草が採れた。
キノコも沢山採れたし、乾燥して薬にするのもあるという。
僕達はマロード男爵領のギルドに薬草を卸して、資料にも纏めておく。
「ジンも中々の博識ね」
「こいつらの質問に答えられる様に、勉強し直したんですよ」
ティナおばあさまが珍しくジンさんを褒めていたけど、ジンさんも改めて勉強していたのか。
うーん、冒険者の世界は奥が深いなあ。
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