三百二十二話 教皇国への道のりの話
「聖女様、お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです」
「ええ、この通りすっかり良くなりました」
カレン様の体調が良くなった事を教皇国に戻って報告していたサイファ枢機卿が、再び王国にやってきた。
サイファ枢機卿は、殆ど完調に近いカレン様を見て目を細めていた。
そして、教皇選挙に絡む事で報告もあるという。
早速カレン様も含めて会議となった。
「まず聖女様が無事に復調していると報告した所、教皇国内でも安堵として受け止められております。ただ、現在も治療中の為、聖女様が教皇国に戻られるのは選挙のタイミングで良い事になりました」
教皇選挙に絡んでカレン様もすることがあるというので、こればっかりは仕方ないですよね。
「教皇選挙の日程も発表されました。七月の半ばに投開票となります。アレク殿下においては、一週間ほど教皇国に滞在して頂ければと。なお、国境より五日ほどで皇都に着きます」
「分かりました、その様に対応します」
教皇国へは、大体二週間の滞在になるのか。
帝国にもその位滞在したし、久々に馬車の旅になるな。
「あと、アレク殿下には申し訳ないのですが、教皇国に着きましたら帝国と共和国の要人を迎えて頂けますと助かります。やはり懐古派が何をするかわからない状況ですので」
「その位は問題ありません。安全の為にも、僕が迎えに行った方が良いでしょう」
何となく予想はしていたので、この位は全く問題ない。
恐らくカレン様も、このタイミングで迎えに行くのだろうな。
「ふむ。なら、アレク達の誕生パーティが終わったら出発だな。辺境伯の所の子どもも出発までに生まれるだろう」
陛下も僕のスケジュールを言ってくれたけど、当分はこんな感じだろう。
少し平和な日々が続きそうだ。
「陛下、ご提案頂きました新事業につきまして、教皇国も喜んで参加したいと思っております。救える命が増える事はとても良い事です」
「うむ。帝国と共和国からも良い返事が来たので、教皇国の参加も歓迎する」
魔法と生薬を研究する事業には、多くの人が携わる事になった。
実は辺境伯領にも、帝国から研究者がやってきている。
国の垣根を超えた一大事業になりそうだ。
ということで、会議はこれにて終了です。
僕とルーカスお兄様とカレン様は、皆がいるルカちゃんとエドちゃんの部屋に移動します。
「あ、お兄ちゃんだ」
「何しているんだ?」
「皆で、ヒカリちゃんに魔法の使い方とか色々教えているの」
皆でこの前カレン様の従魔になった白い小さなスライムを取り囲んでいた。
スラちゃんとプリンとアマリリスが、ヒカリと名付けられたスライムに何かを話しているようだ。
「ヒカリちゃんね、回復魔法だけでなくて光魔法と聖魔法も使えるの!」
「それは凄いね。スラちゃんの様な万能タイプじゃなくて、プリンの様に特殊タイプなんだね」
スラちゃんもプリンもアマリリスもヒカリを褒めているけど、肝心のヒカリは少し恥ずかしそうにしている。
「私は聖魔法しか使えないので、ヒカリの存在はありがたいです。もし私に何かあっても、私は攻撃魔法が使えないので」
「あれ? リズは聖魔法のホーリーアローが使えますよ。練習すれば使えるのでは?」
聖魔法にもリズが使う様な攻撃魔法があるし、魔法剣も使っている。
練習すれば、カレン様も自分の身を守る事ができるんじゃないかな。
「なら、最低でも自分の身を守る事ができるように訓練してみましょう。きっと役に立ちますよ」
「そうですね、今回の襲撃事件の事で自分の無力さが身に染みました」
ティナおばあさまの提案で、カレン様も訓練をする事になった。
攻撃魔法を覚えなくても、防御魔法を覚えるだけでも自分の為になるよね。
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