三百二十一話 皆でワイワイと薬草採取

 歓迎式典から数日が経過し、式典で大泣きしたミカエルも幸いにしてケロッとしています。

 歓迎式典で暴走したムノー男爵は厳しい取り調べを受けていて、新事業からも貴族主義の連中は一掃されたという。

 これで王都の研究所もようやく稼働する事になった。


 そして今日は研究の一環として、皆で薬草採取を行います。

 ルーカスお兄様達に加えて、カレン様とティナおばあさまとジンさんも一緒に参加します。

 ノエルさんだけでなく、ジェリルさんとランカーさんも護衛についています。

 折角という事なので、ミカエルも一緒に薬草採取に参加します。


「ブッチー、ミカちゃんをよろしくね」

「ヒヒーン」


 ミカエルはたまにポニさん達と遊んでいるので、いつの間にか上手に乗れるようになっていた。

 念の為にという事で、スラちゃんとプリンも一緒にブッチーに乗っています。

 先ずは皆でギルドに向かいます。


「お、聖女様が来たぞ!」

「聖女様、この前は治療して頂き有難う御座います」

「やっぱり聖女様だけあって、とても美人よね」

「わわ!」


 ギルドに入った瞬間、カレン様は冒険者に囲まれてしまった。

 この前の炊き出しの時に、冒険者の治療をしていたからなあ。

 握手を求められたり感謝されているけど、特に危なくないしアイビー様も側にいるのでお任せしておこう。


「何でこんな人数になるんだよ……」


 ギルドで薬草採取の手続きをしていざ出発となったら、暇していた冒険者がゾロゾロと僕達についてきた。

 僕達を除いても三十人はいるぞ。

 

「ははは、いいじゃないか。皆新しい事業に興味を持っているんだよ」

「いて、おばちゃん痛いよ!」


 笑いながら、おばちゃんがジンさんの背中をバシバシと叩いていた。

 いずれにしても、沢山の人が協力してくれるのはありがたい。


 そして、集団は薬草採取を行う森に到着し、大きいイノシシが僕達をお出迎え。


「大きいなあ……」

「ちょっと怖いかも……」


 これだけの大人数が参加するので、折角という事で新人冒険者も薬草採取に参加しているのだが、若い女性などは大きなイノシシを見て少し怖がっていた。


「よし、さっさと倒し……」

「ぶち!」

「ヒヒーン」

「おい、ミカエル!」


 そしてジンさんがイノシシを倒そうと剣を抜こうとした所で、ブッチーに乗ったミカエルがイノシシに突っ込んで行った。


 ズドーン!


「相変わらず凄いな。イノシシが宙に舞ったぞ」


 ジンさんも驚いているけど、イノシシはプッチーの魔法障壁を展開した突進でノックアウトされていた。

 そして、トコトコとプッチーに乗ったミカエルが戻ってきた。

 スラちゃんとプリンも一緒になって触手を上げていた。


「にーに、たおした!」

「ミカエル、危ないから勝手に突っ込んじゃダメだよ」

「はーい」


 今日はブッチーがいたというのもあるだろうな。

 素直に返事をしていたから、よしとしておこう。


「ほら、新人と初心者はこっちに来な。折角だから、血抜きを教えるよ」

「「「はい……」」」


 そして、もう恒例となったおばちゃんによる新人向けの血抜き講習が始まった。

 スラちゃんも一緒になって教える様だ。

 想像以上に大きいイノシシにびっくりしながらも、新人はおばちゃんから血抜きのやり方を教えて貰っていた。


「じゃあ、俺らは薬草採取を始めるか。どんな薬草が採れるかも記録しろよ」

「「「おー!」」」


 ジンさんの掛け声で、僕達は薬草採取を始めます。

 冒険者も辺りに散らばって薬草を採り始めました。


「薬草はこうやって採るんだよ!」

「「「へえ」」」


 リズは新人がいるといつも薬草採取を教えているし、新人も素直に話を聞いている。

 いつもの光景だな。


「カレン様、薬草採取が上手ですわね」

「教会で薬草採取をする事がありますので」


 アイビー様が言う通り、カレン様は薬草採取がとても上手だ。

 アイビー様の従魔であるアマリリスが素早く薬草を見つけるのもあるけど、それでも手早く採取していく。


「ぶち、くさおいし?」

「ヒヒーン!」


 ミカエルはというと、ブッチーの側にいてブッチーが草をもぐもぐと食べているのを興味深そうに見ていた。

 女性の冒険者が近くにいて話しかけているみたいだし、大丈夫だろう。


 こうして大人数というのもあって、あっという間に薬草がいっぱい採れた。

 どの種類が生えているかもキチンとデータとして取れたし、研究で沢山の薬草を使うから多い分には全く問題がない。

 ギルドに戻って換金したら、その金額に新人がびっくりしていた。

 沢山薬草を採ったからね。

 そして、もう一つびっくりする事が。


「この子がカレンお姉ちゃんのフードの中に入っていたんだ」

「ええ、びっくりしましたわ」


 プリンが僕のフードの中に入っていた様に、カレン様のフードの中に小さいスライムがちょこんと入っていたのだ。

 僕も見た事がない真っ白な小さなスライムだ。

 小さな白いスライムは、カレン様の手のひらの中でスヤスヤと寝ていた。

 スラちゃんとプリンとアマリリスが、白いスライムを興味深そうに見ている。


「へえ、珍しいな。回復魔法が使えるホワイトスライムだ」

「おお、カレンお姉ちゃんにピッタリだ!」

「そうですね、大事に育てますわ」


 聖女様が使徒する回復魔法を使うスライムなんて、ちょうど良いイメージだよね。

 名前は後で付けるとして、カレン様は早速従魔登録を行った。

 そして、ミカエルがブッチーと共に倒したイノシシだが、五十人前以上は軽くある。

 

「おにくたべる!」


 ミカエルがこう言っているので、うちの庭で今日の参加者を集めてバーベキューをする事になった。


「うーん、働いた後のお肉は最高だね」

「頭脳労働は疲れるよ」

「お前ら、ちょっと働いただけだろうが!」

「「失礼な!」」


 今日は研究所で働いていたレイナさんとカミラさんもバーベキューに混じっているけど、ジンさんと息の合った夫婦漫才をしている。

 そして三人とも、夫婦漫才の後で冒険者に突っ込まれている。

 

「おにくおいしー!」

「良かったね」

「うん!」


 ミカエルはというと、お肉を口いっぱいに頬張って満足そうだ。

 僕が口の周りを拭いてやるけど、新鮮なお肉だからかミカエルは美味しそうに食べている。


「教皇国に行くまでは、一週間に一回は薬草採取をしましょう」

「そうですね、辺境伯領の研究は進んでいますから」


 こうしてティナおばあさまの提案もあって、公務の合間に積極的に薬草採取を行う事になった。

 そして、たまにはこうして皆でワイワイするのも良いよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る