三百十三話 カレン様のリハビリ炊き出し
マロード男爵領で処方された生薬の効果もあり、カレン様はだいぶ調子を取り戻した。
少しずつ活動を再開するとの事で、先ずは炊き出しを行う事になった。
たが、王都で炊き出しをするとかなりの人が集まって大変なので、そこそこの人が集まる辺境伯領で炊き出しを行う事になったのだ。
「いやあ、久々に動けるわ」
「体がなまっていたんだよね」
「あの二人とも、屋敷の家事を手伝ってくれても良いんだよ?」
ジンさんの心からの呟きを無視して、レイナさんとカミラさんが軽く体を動かしている。
今日はルリアンさんとナンシーさんも炊き出しに参加する様だ。
「ソフィアさんも参加するんですね」
「私がエマとオリビアを妊娠していた時は、もう少し先までは外で動いていたわ」
今日はソフィアさんも炊き出しに参加するので、まだ学校が休みのエマさんとオリビアさんと談笑していた。
しかし、流石はイザベラ様。
双子を産んだ先輩として、色々と判断している様だ。
「ブッチー、護衛よろしくね」
「ヒヒーン」
念の為という事で、ポニさん達も一緒に着いてくる事になった。
ポニさん達は聖女様襲撃事件の現場にもいたし、事情もわかっていてやる気満々になっている。
王城からはルーカスお兄様とアイビー様にルーシーお姉様とエレノアが参加。
大人達は会議があるので不参加です。
とはいえ近衛騎士もいるし、このメンバーならゴブリンキングが現れても瞬殺しそうだな。
妊婦さんが何人もいるので、教会まではゲートを使わないで皆で歩いていきます。
となると、街の人から普通に僕達に声がかかってきます。
「お、アレク君か。久々だな」
「リズちゃんも大きくなったわね」
この辺はまだいい。
僕達はこの街の住人なのだから。
「ルーカス様も婚約者と一緒か」
「相変わらず仲が良いわね」
「領主様とジンの所は、もう少ししたら赤ん坊が生まれるな」
「子どもが生まれたら、皆でお祝いしましょうね」
ルーカスお兄様達もこの街によく来るので、街の人からも好意的に見られている。
更に今年は出産ラッシュになりそうなので、辺境伯領はお祭り騒ぎになりそうだ。
「良い街ですね。適度な距離で、街の人が私達に接してくれています」
「私にも良くしてくれますわ。とても居心地が良いですの」
すっかり仲良しになったカレン様とイザベラ様が、並びながらにこやかに談笑していた。
僕とリズが王族だと分かってもこの街の人は普通に接してくれているから、恐らく聖女様が来たと分かっても普通に接してくれるだろう。
教会に着くと、司祭様と手伝ってくれる女性陣が集まっていた。
炊き出しに必要なある程度の準備はしてくれている様だ。
「聖女様、ようこそいらして下さいました」
「聖女様を心より歓迎いたします」
「司祭様、シスター、本日はよろしくお願いします」
司祭様とシスターが、カレン様と挨拶をしている。
その間に、僕達は炊き出しの準備を進めて行きます。
「今日は私も炊き出しをしようかな?」
「包丁を持つのも久々ですね」
何故かレイナさんとカミラさんが、包丁を取り出している。
レイナさんとカミラさんが包丁を持つのを見て、ジンさんとたまたま治療にきていた冒険者が慌ててレイナさんとカミラさんを止めに入った。
「お前ら、包丁持って何するんだ!」
「王都での惨劇は俺も聞いているぞ!」
「また、まな板ごとぶった斬る気かよ!」
「「えー」」
レイナさんとカミラさんはかなり不満そうにしているけど、ジンさんと冒険者の判断は正解だと思う。
レイナさんとカミラさんは、しぶしぶ包丁をしまって治療の方に移動して行った。
レイナさんとカミラさんがいたスペースに、僕とスラちゃんが移動する。
そして、野菜を切り出していく。
「二人とも、まだ小さいアレクとスライム以下の包丁さばきはどうかと思うぞ」
「スラちゃんは魔法使っているけど、二人はそれ以前の問題だな」
「「はい……」」
レイナさんとカミラさんは、治療の方に移っても女性の冒険者から色々と言われていた。
ナンシーさんとルリアンさんはある程度包丁が使えるし、ソフィアさんは料理がとても上手。
なので、余計にレイナさんとカミラさんの包丁さばきの酷さが分かってしまうのだ。
「お待たせしました。あれ? 何でレイナ様とカミラ様があんなに落ち込んでいるのですか?」
「特に気にしなくて良いですよ」
「はあ」
司祭様との話が終わってカレン様がこちらに来たけど、どうも落ち込んでいるレイナさんとカミラさんの事が気になる様だ。
ジンさんが軽く流したので、多分大丈夫だと思いたい。
ともあれ、炊き出しと治療を開始します。
今回は、治療に魔法だけでなく生薬も使って行きます。
「辺境伯領での炊き出しは、とても機能的ですわ」
「役割分担をキチンと決めておりますので。それに炊き出しにくる方は困っている人が多いので、兵や行政官がどんな事に困っているか意見を聞いております」
「とても素晴らしい事ですわ。教皇国でも、是非参考にいたします」
辺境伯領での炊き出しは、行政も一枚噛んでいるからな。
直ぐに、治療に生薬を使い始めたのが良い例だろう。
どの様な症例にどの様な治療が効果的かの情報収集もしている。
イザベラ様の説明に、カレン様はとても感心していた。
「リズちゃんの聖魔法は私よりも高威力ですし、ここに生薬を併用したら大抵の怪我や病は治せそうですね」
「リズちゃんがいつも炊き出しの時にいる訳ではないので、できるだけリズちゃんに依存しない様にしております。とはいえリズちゃんは自ら積極的に治療を行うので、リズちゃんがいる時は治療の効果が高いのは事実ですわ」
僕達は公務で不在の時もあるから、教会や他の人が治療する事もある。
だけどリズは人当たりも良いから、喜んで治療するんだよね。
こうして無事に炊き出しは終了して、治療時のデータも結構取れた様だ。
「お前らは包丁を使わない料理から始めないと。子どもにお菓子を作るのが目標だな」
「「頑張ります……」」
因みにレイナさんとカミラさんは料理の勉強の一環としてお菓子作りをする事が決定した。
お菓子はキチンと分量を計れば間違いなくできるはずだから、きっとレイナさんとカミラさんでもできるはず。
先生役はソフィアさんがしてくれる事になったので、生まれてくる子どもの為にも頑張ってほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます