三百十四話 辺境伯領での研究拠点の様子
王都に先行して、辺境伯領での治療研究施設が着々と進んで行っている。
温室はまだ作成中だけど屋敷の中の改装が終わったので、早速研究が始まっている。
辺境伯領だけでなく周辺の領地からも研究者が集まっていて、当初の予定通りに軍や近衛騎士からも何人かこちらにやってきている。
「ノエルさんは魔法だけではなく、生薬も研究しているのですね」
「はい、昔病気で治療した事で興味を持っていました」
近衛騎士から、ノエルさんが辺境伯領にやってきた。
魔法も上手だし生薬の研究もできるなんて凄いな。
因みにノエルさんは、僕の屋敷に滞在する事になった。
リズとサンディにスラちゃんとプリンもノエルさんが屋敷に滞在する事を喜んでいた。
ミカエルも新しいお姉さんが増えて喜んでいる。
「「あうー」」
そして僕達がいる応接室には、侍従のお姉さんの子どもであるメイちゃんとリラちゃんも一緒にいた。
まだハイハイはできないけど、二人ともとっても元気に育っている。
ノエルさんはメイちゃんを抱っこして、顔がニマニマになっていた。
リラちゃんはリズとサンディが交互に抱っこしています。
「ノエ、あかちゃかわいい?」
「ええ、とっても可愛いですわ。ミカエルちゃんも可愛いですよ」
「えへへ」
最近言葉が上達してきたミカエルが、赤ちゃんを抱っこしているノエルさんとお喋りをしていた。
ミカエルもお兄ちゃんっぽくなって、メイちゃんとリラちゃんの様子を良くみているんだよね。
因みに研究には、元違法奴隷のクロエさんとノラさんも参加する事になった。
最初は僕の屋敷で侍従をしながら何をするかで悩んでいたけど、対人恐怖もだいぶ良くなったので週に何回か屋敷のお世話をしつつ薬草のお世話をするそうだ。
研究者って総じて私生活がだらしない人が多いので、辺境伯様もクロエさんとノラさんが参加する事に賛同していた。
「僕もたまに研究所の様子を見に行きます。生薬に限らずポーションの作り方にも興味があるので」
「リズも見に行くよ」
「サンディも行きます」
「アレク殿下なら、皆さん歓迎しますよ」
という事で、ちょうどメイちゃんとリラちゃんがおねむの時間になったので、ミカエルとスラちゃんとプリンも連れて皆で研究所に向かいます。
研究所に着くと庭には大きな温室ができていて、大工さんが温室の中で作業をしていた。
「温室も外観はできているのですね」
「すごー」
「街の皆様が協力してくれてますので、予定よりもかなり早く進んでいます」
トンカンと中から音がしている温室を横目に、僕達は研究所の中に入っていきます。
すると、クロエさんが僕達を出迎えてくれた。
洗濯カゴに洗った物がいっぱい入っているぞ。
「あら、アレク君いらっしゃい」
「凄い洗濯物の量ですね」
「本当だよね。毎日汚れ物が凄いのよ」
「洗濯物を干すのを手伝いますか?」
「大丈夫よ。ついでだから、どの汚れは石鹸と生活魔法のどちらが落ちやすいかを調べてやるわ」
そして、クロエさんは裏庭の方に消えていった。
うーん、洗濯を研究するなんて、クロエさんにピッタリの現場なのかもしれないぞ。
「研究者は白衣が汚れていても気にしない人がいますから。クロエさんとかがいてくれて本当に良かったです」
クロエさんの背中を見つめながら、しみじみと答えるノエルさんが印象的だった。
そして、とある部屋に案内されると、レイナさんとカミラさんが薬草採取の講師のおじいさんと何やら話をしていた。
そこにミカエルが突撃していく。
「レナ、カミ!」
「あら、ミカエルちゃんじゃない。アレク君もいらっしゃい」
「施設見学にきました」
「ちょうど良かったわ。アレク君やリズちゃんにも関係ある所よ。来て見てね」
「「はーい」」
カミラさんに手招きされて、テーブルの周りに集まった。
テーブルの上には、普段僕達が良く採る薬草が並んでいた。
「これはね、どの薬草が冒険者が採りやすいかを確認しているのよ」
「今テーブルに並んでいるのは、辺境伯領で良く採れる薬草ね」
「そうですね。いつも採る薬草です」
「辺境伯領ではこの薬草が採れるけど、地方によっては採れる薬草が違うのよ」
「へえ、それは面白そうですね」
僕達は辺境伯領でしか冒険者活動をしていないので、他の領地でどんな薬草が採れるかは全く分からない。
確かにここはAランク冒険者のレイナさんとカミラさんの出番だよね。
「もう少ししたらだけど、バザール領やマロード領で採れる薬草の確認もするの」
「その際は、アレク君やリズちゃんも一緒に講師のおじいさんと行ってもらうよ」
「僕のゲートがあれば、直ぐに移動できますからね」
「ふふふ、薬草採取ならリズにお任せだよ」
妊娠中のレイナさん達はゲートを使う事ができないので、確かにここは僕達の出番だろう。
リズもスラちゃんもプリンも、やる気になっている。
その頃には、教皇国の件が収まっていると良いなあ。
別の部屋に案内されると、理科の実験道具みたいなのが並んでいた。
ここは生薬だったりポーションを作る所なのだろう。
おお、研究者の白衣が汚れているなあ。
これではあの洗濯物の量は納得だ。
「ここは薬草の成分をどうやって抽出するかの研究をしています」
「そっか、煮出してポーションにするか乾燥して細かくするのかを調べているのですね」
「その通りです。鑑定持ちの人が多いので、結果も直ぐに分かります」
成程、ここは本当に研究所って所なんだ。
ここで新薬が作られていくんだな。
とはいえ、リズ達には退屈な所らしいので、次の場所に移動します。
「ここは生薬の調合方法を纏めている所になります。ここで書類にした物は王都の研究所に送られます」
「生薬の作り方を統一しようとしているのですね」
ここでは研究者が文献を調査したり聞き取りをしながら、所定の用紙に色々と書き込んでいっている。
書いているだけ面白くないのか、リズ達は完全に飽きてきているぞ。
「まだ稼働していない所も多くありますので、今はこの位ですね」
研究所の見る所は終わったので、屋敷に戻ります。
個人的には温室が見たかったなあ。
「研究者はどこに住んでいるのですか?」
「研究所の二階に住んでおります。起きて直ぐに研究ができる最高の現場だと言っています」
「そ、そうですか……」
本当に研究が好きな人なんだな。
とは言え、生活はしっかりとしてもらいたい。
因みに研究所の後半の説明が暇だったので、屋敷に帰ってきたらリズ達はミカエルとお昼寝しにいってしまった。
流石に話を聞くだけでは退屈だったよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます