三百十二話 大人の悪巧み

 辺境伯様との話し合いも無事に終わったので、僕達は再び温泉宿に戻ります。

 この後は温泉に入って夕食なのですが、軍務卿と農務卿が何故か僕達と共に残っています。


「そりゃ、夕食を食べる為に決まっているよ」

「さっきおかみに夕食のメニューを聞いたら、例のボタン鍋と言うではないか。これは食べないとならないな」


 何となく予想していたけど、この前の温泉での話を聞いて夕食を食べる機会を狙っていた様だ。

 というか、二人はいつの間にか田舎味噌とかを購入していたし、後で他の閣僚に自慢する気まんまんだな。

 さて、夕食の前に皆で温泉に入ろう。


「いやあ、ここの温泉は良いものですな」

「全くですな。ティナ様が湯治に訪れるだけの事はありますな」


 当然の様に温泉にも入っている軍務卿と農務卿。

 軍務卿は何となく分かっていたけど、農務卿も年齢の割には鍛えられた肉体だ。

 極楽って感じで、温泉を堪能している。


「そうだ、マイクの結婚式に我々も参加すれば良いな」

「ですな。我々は今回のプロジェクトでマロード男爵領に関わりがあるから、何もおかしくはないな」


 更に二人は、勝手にマイク様とセシルさんの結婚式にも参加すると言い出してきた。

 まあ、元々は辺境伯様とも繋がりがあるし参加する事は問題ないけど、目的は観光の様な気がするぞ。


「「ハッハッハー!」」

「にーに、あやしい!」

「分かったから、指をささないでね」

「あい」


 お酒も飲んでいないのにすっかり上機嫌なおっさん二人組を、ミカエルが怪しいと指差している。

 うん、ここにいる大抵の人は、あの二人が良からぬ事を考えているのが分かっているから大丈夫だよ。


 そして、温泉から上がったらお待ちかねの夕食タイム。

 ボタン鍋ではなく、これはしゃぶしゃぶかな?

 出汁をとった鍋と、薄切りの猪肉と野菜が並べられている。

 醤油と田舎味噌ベースのつけ汁も用意されていた。


「火傷すると危ないので、私がやりますね」

「「「はーい」」」


 僕達子どもの集まっている所は、セシルさんがしゃぶしゃぶしてくれた。

 カレン様も一緒になってしゃぶしゃぶしてくれるけど、子どものお世話が好きそうなのでここはやらせてあげている。

 スラちゃんとプリンも、セシルさんとカレン様がしゃぶしゃぶしてくれたお肉を食べていた。


「これは良いな。自分で好きな分だけ調理ができるのか」

「素材をお湯にくぐらせるだけなのに、とっても美味いな。このつけ汁が良い味しているぞ」


 大人も自分で料理するスタイルに満足している。

 軍務卿と農務卿も、次々と猪肉を平らげているぞ。

 

「温かい料理は良いものね。これなら我が家でも直ぐに出せますわ」

「寒い時期にはとても良いなあ」

「前にお鍋を食べた事あるけど、これも美味しいな」


 イザベラ様とエマさんとオリビアさんも、しゃぶしゃぶを堪能している。

 流石というべきか、イザベラ様は屋敷で出す事が可能かと考えている様だ。

 因みに子どもがいるので、ここでのお酒は禁止になりました。

 とは言え、大人達は既に米酒を購入していて、後でじっくりと味わうらしい。

 農務卿は、結構な本数を購入しているぞ。


「なんだかんだいって、結構疲れたな……」


 王城組とマロード男爵屋敷組を送って行ったら、僕は疲れてベッドに身を投げ出してしまった。

 

「にーに、ねむいよー」

「はいはい、一緒に寝ようね」

「うん!」


 ミカエルはかなり眠たそうだけど、僕も魔法を連発したので少し疲れている。


「「「ジャンケン!」」」


 またもや女性陣がジャンケン大会をしているけど、僕はもう限界です。

 という事で、お休みなさい。

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