三百十一話 辺境伯領での新プロジェクトの進捗状況

 昼食後は、皆で辺境伯様の屋敷に移動して辺境伯領での研究について話をする事になった。

 せっかくなので、妊娠中のレイナさんとカミラさんに加えてナンシーさんとルリアンさんも辺境伯様の屋敷に合流します。


「わあ、お腹が大きいですね」

「出産はまだ二ヶ月程先ですけどね」

「ソフィアさんのお腹には、二人の赤ちゃんがいるんだ!」


 応接室に全員が集まっているけど、カレン様は妊婦のお腹を次々と撫でていた。

 ソフィアさんのお腹はとても大きく、リズじゃなくても双子だろうって皆が予測していた。

 いずれにせよ辺境伯家に一気に二人の子どもが誕生する事になるので、赤ちゃんを迎え入れる準備も大変だという。

 大変だと言っても、侍従も笑顔で準備しているそうだ。


「研究施設は空いている家臣の屋敷を改装して使用する予定です。庭に薬草栽培用の温室も建設しております」


 辺境伯様が皆に進捗を報告している。

 前にあった辺境伯領でのゴブリン騒ぎで更迭された家臣の家を使うそうで、僕の屋敷からもすぐ近くにあるそうだ。


「教会や薬屋にも連絡をしており、ギルドの講師である薬草採取の名人にも声をかけている。断られるかと思いきや、全員新しい事業に前向きな回答を得ております」

「アレク君とリズちゃんの存在もあるけど、ジンの存在も大きいわ」

「え? 俺の存在ですか?」


 イザベラ様の話にジンさんはびっくりしていた。

 辺境伯様もうんうんと頷いているけど、一体何があったのだろう?


「今回この事業を行うきっかけになったのが聖女様襲撃事件だけど、聖女様の救出作戦でジンが現場指揮を取っていた。辺境伯領の住民にとって、地元の人が活躍したのが嬉しいのだろうな」

「的確に治療方法を見抜いて、アレク君やリズちゃんだけでなくその場にいた王族全てに指示を出していた。ジンが頑張ったなら、俺らも頑張ろうって言っていたわよ」


 成程、ジンさんは地元の人にも人気があるから、じゃあ俺もってなったんだ。

 僕やリズよりもジンさんの功績が大きいんだね。


「どんな薬草が必要かとか、どこでその薬草が採れるかはレイナやカミラにも話を聞けるわ。皆妊娠していても、話し合いとかは参加しても大丈夫だわ」

「本当は薬草採取とかもしたいけど、流石にダメか」

「研究施設の温室で土いじりでもしてますかね」


 レイナさんやカミラさんは妊娠してからはずっと屋敷にいて大人しくしているのがかなり退屈らしいが、こればっかりは仕方ないよね。

 適度な運動を兼ねて、温室の土いじりをやってもらおう。


「ふわあ、むにゃむにゃ」


 因みにミカエルはお昼寝の時間なので、ソフィアさんに膝枕をしてもらってスヤスヤと寝ていた。

 

「王都や他の辺境伯領では、今回の事業の準備にもう少し時間がかかる。ホーエンハイム辺境伯は、先行して色々と進める予定だ」

「辺境伯領の駐屯地からも、医務官を研修の為に派遣する。近衛騎士も何人か派遣する予定だ」


 農務卿と軍務卿からも、辺境伯領で事業を始める為に必要なリソースを投入するという。

 いずれにしても、辺境伯領がまた活性化する要因にもなりそうだ。

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