三百十話 新プロジェクト立ち上げ

「にーに、おきて!」


 ペシペシ。

 ペシペシ。


「うーん、いま起きるよ……」

「おきて、おきて」


 ミカエルは朝早いんだよね。

 寝ている僕の上に乗って、僕の顔をペシペシと叩いてきた。

 僕の横には、リズとサンディが寝ていた。

 どうやら二人が、昨晩のじゃんけん大会に勝った様だ。

 僕は二人を起こさない様に、ミカエルを抱っこしてベッドから起きて行った。

 スラちゃんとプリンは、何故かジンさんと一緒に寝ているな。

 僕とジンさん以外は全員女性なので、ある意味間違いの無い選択だろう。

 

「おはー」

「あら、もう起きちゃったの?」

「起きたというか、起こされました」


 ミカエルのオムツを変えてから一緒に食堂に行くと、おかみさんが朝食の準備をしていた。

 僕とミカエルは食堂の席に着いて、おかみさんからジュースを貰っています。

 今日の日中は皆でとある所に行くので、しっかりと朝食を食べないと。

 

「あー、ここにいた!」

「いつの間にかいなくなって、びっくりしました」


 おっと、他の人達も起きてきた様だ。

 どうも起きたら僕がいなくて、びっくりした様だ。

 リズとサンディが文句を言いながら、僕の隣に座ってきた。

 さあ、皆で朝食を食べよう。


 王城から皆呼び寄せるのだが、今回は軍務卿と農務卿に司教様も一緒です。

 ついでに、マロード男爵の屋敷からマイク様とセシルさんに、イザベラ様とエマさんとオリビアさんを呼び寄せます。

 それはこの後向かう所に関係しています。

 皆がやってきたのは、温泉街にある薬屋です。


「ここは私が湯治に来ている際にもよく利用したの。その人に合わせた生薬を処方してくれるのよ」

「聖女様襲撃事件で、改めて薬による治療が注目されているのだ」

「治癒魔法だけでは治せない病気の治療の研究も進める予定だ」


 ティナおばあさまと軍務卿と農務卿が僕達に話をしているけど、確かにカレン様が襲撃された時はジンさんが毒消しポーションを使う様に言っていたよね。

 

「つまりは、治癒魔法と薬草を組み合わせた治療を行う研究機関を作るのじゃ。教会としても救える命が増える事は喜ばしい事じゃ」

「そこで、幾つかの街の薬屋に調合方法を纏めてもらっているのよ。門外不出の調合方法もあるから、強制はしないけどね」


 司教様とティナおばあさまが今後の方針について話してくれた。

 魔法と薬草を組み合わせた新しい事業になりそうだ。


「そうなると、俺ら冒険者にもメリットが出てくる。どの薬草が必要かが分かれば、必要な量を集めて適正価格で買い取ってもらえる」

「勿論、薬草の栽培も研究する。栽培可能なら、農家にとってもメリットとなるぞ」


 ジンさんの見解に農務卿が付け加えた。

 確かにどの薬草がどれだけ必要かがわかれば、冒険者としても活動しやすいよね。

 因みにカレン様は、病後の体に良い生薬を処方してもらった様だ。

 店主から薬を受け取っていた。


「最初は王都と各辺境伯領で研究を進めるわ。我が辺境伯領では、マロード男爵領の薬屋とも連携を進めるのよ」

「王都と辺境伯領は人口も多いし、研究もしやすそうですね」


 イザベラ様も既に辺境伯領でも動いていると言ってくれた。

 先ずは大きな都市での研究だよね。


「因みに、このプロジェクトは新たな王族としてルカリオとエドガーが産まれた記念として行う事にする。弟に箔をつける意味もあるんだ」

「ルカちゃんとエドちゃんの為なら、リズも協力するよ!」


 リズに合わせて、スラちゃんとプリンも触手を上げていた。

 ちょうど良い名目もあるので、いい機会になりそうだ。


「辺境伯領はジェイドとマイクに任せる予定よ。調整する事も沢山あるし、領主になる為の勉強も兼ねているわ」

「私も時間ができましたら手伝う予定です」


 イザベラ様とセシルさんもこの件について前向きに動いている。

 いずれにせよ、このプロジェクトが進んでいけば良いなあ。

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