三百二話 教会関係者の面会

 今日は教会関係者がカレン様に面会を申し込んできました。

 ついでと言うので、グレアム司祭とサーゲロイド辺境伯も呼び寄せる事になりました。


「おお、聖女様。ご無事で、本当にご無事で何よりです」

「私は聖女様の無事を、毎日神にお祈りしておりました」


 参加者は僕と王妃様と王都の司教様に辺境伯領の司祭様。

 それにグレアム司祭とサーゲロイド辺境伯。

 今日のカレン様は、ベッドから起きてベッドサイドに腰掛けている。

 そんなカレン様の様子を見た教会関係者とサーゲロイド辺境伯は、人目も憚らずに涙を流していた。

 流石に気持ちが高まっているので、一同の気持ちが落ち着くまで待ってから話をする事になった。


「いやはや、失礼しました。年寄りになると涙脆くなってしまって、どうしようもありませんな」

「全くですな。しかし、スッキリしましたぞ」


 司教様に辺境伯領の司祭様が笑っているけど、グレアム司祭とサーゲロイド辺境伯も含めてカレン様は孫やひ孫みたいなものなのだろう。

 そんな感情も混じっていたから、思わず泣いてしまったのだろうな。


「皆様にはご迷惑をおかけしました。こうしてゆっくりですが、リハビリも進んでおります」

「聖女様には最低でも三月いっぱいは、リハビリを優先していますわ。何かやるにしても四月以降ですが、それも聖女様の体調を見てですわね」

「王妃様、勿論でございます。聖女様の体調をなによりも優先にして頂けますか。我々も同じ気持ちです」


 カレン様と王妃様の意見に、グレアム司祭が頷いている。

 カレン様の様子は、カレン様の希望もあって特に隠す事なく王国や教皇国へ伝えられている。

 襲撃事件も公表されていて、両国にとても大きな衝撃を残していた。

 それと共に、懐古派が過激な組織である事も一気に広まった。

 その為に、両国共に懐古派へかなり厳しい視線を向けている事になった。

 襲撃事件を通じて懐古派は三つの派閥にダメージを与えるつもりでいたのに、完全に自分の所に返ってしまったのだった。

 とは言え、懐古派は陰謀だと事件の関与を否定しているという。


「王国も四月に入って暫くは忙しいので、どんなに聖女様の回復が早くても行事に参加頂くのは四月後半になるかと思います」

「私としては、そのタイミングで国境の街とサーゲロイド辺境伯領へ顔を出したいと思っております。折角歓迎をしてくれていたのにこんな事になってしまい、私も心残りでおります」

「私の様なものに気を使って頂き、感謝申し上げます。住民もさぞかし喜ぶ事でしょう」

「サーゲロイド辺境伯としてもとても有難いのですが、先ずは聖女様のお体を優先して下さい」


 カレン様の気遣いにグレアム司祭とサーゲロイド辺境伯は共に感激していたのだが、同時に無理はしないでと言っている。

 とは言え、あと一ヶ月もあれば、カレン様の体調もかなり回復するだろうなと僕は何となく思っているのだった。

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