三百話 聖女様との初めての会話
聖女様と僕達が話ができるようになったのは、聖女様が目が覚めてから一週間後だった。
聖女様がほぼ寝たきりの状態から何とかベッドから起き上がれる程に回復できたので、このタイミングで話をしようとなったのだ。
「失礼します」
「どうぞ入って下さい」
医務室の中からは初めて聞いた聖女様の声が聞こえてきた。
僕達が医務室に入ると、聖女様がベッドから体を起こしていた。
顔色がだいぶ良くなっているので、調子は良さそうだ。
僕達もベッドサイドに置いてあった椅子に座って、聖女様に話しかけていく。
「お加減はどうですか?」
「はい、日に日に良くなっております。これも皆様が私を助けてくれたお陰です」
「それは良かった。私も聖女様が襲われた現場におりましたので、とても心配しておりました」
ルーカスお兄様が口火を切って話をしているけど、聖女様もスムーズに話せているから僕も一安心です。
「ご紹介が遅れました。私はルーカスと申します。横にいるのが婚約者のアイビーです」
「アイビーですわ。聖女様がご無事で何よりですわ」
「アイビー様も私の治療をして頂いたとお聞きしました。その節はありがとうございました」
アイビー様も聖女様とにこやかに話をしている。
僕達が聖女様を助けた状況は既に説明してあるそうなので、話はスムーズに進んでいく。
「そして、私の妹のルーシーとエレノアです」
「聖女様、ルーシーと申します」
「私はエレノアです。よろしくお願いします」
「ルーシー様にエレノア様、どうぞよろしくお願いします」
ルーシーお姉様もエレノアも今日は控え目に自己紹介をしている。
普段だったら、元気いっぱいで話をするもんな。
「そして、双翼の天使と言われているアレクとリズ、ロンカーク伯爵家当主のサンディです」
「聖女様、アレクサンダーと申します。どうぞアレクとお呼び下さいませ」
「エリザベスです。リズって呼んでね。あと、スラちゃんとプリンちゃんとアマリリスだよ」
「ロンカーク伯爵家のサンディです。よろしくお願いします」
「まあ、噂に名高い双翼の天使様ですか。この度は命を助けて頂き、ありがとうございます」
リズはいつも通りの自己紹介だ。
リズがニコニコとしているので、聖女様もニコニコとしていた。
「そして、僕達の冒険者の師匠でもある名誉貴族のジンさんです。聖女様をお助けする時に、現場指揮も取られておられました」
「えっと、こいつらと比較すると全く大した事はないですよ。ジンです、聖女様ご無事で何よりです」
「ジン様の事も聞き及んでおります。王家や帝国の皇族の方からも信頼が厚いと」
「えーっと、俺は普通の冒険者なので……」
うん、聖女様にもジンさんの事が誇張されて伝わっている様だ。
ジンさんは、またもや遠い目をしているぞ。
「聖女を仰せつかっております、カレンと申します。どうぞカレンとお呼び下さい。この度は私の命を助けて頂き、本当にありがとうございます」
聖女様、もといカレン様は僕達に向けて改めてお礼を言ってきた。
本当に襲撃関係で色々とあったから、話はあえて別の事にした。
「ティナ様、皆様可愛らしくてとっても素敵ですわ」
「ええ、その気持ちは良く分かりますわ。ルカリオとエドガーにも合わせてあげたいので、近い内に対面させますわ」
「お産まれになられたばかりという王子様ですね。私赤ちゃんがとても好きで、よく慰問先で赤ちゃんを抱かせてもらっているんです」
おお、聖女様とは違うカレン様本来の姿が出てきたぞ。
確かにルカちゃんとエドちゃんは、誰からの目で見てもとても可愛いよね。
「ティナおばあさま、今度王城にミカエルを連れてきましょうか。会話もできるし、ちょうど良いかと思います」
「そうね、たまに王城にはきているけど、ミカエルは人見知りをしないからきっと大丈夫だわね」
流石にルカちゃんとエドちゃんはまだ首の座っていない赤ちゃんなので、タイミングを見てミカエルを連れて来る事が決まった。
こうして、カレン様との初めての対面は和やかな内に終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます