二百九十八話 陛下への報告

 僕達が王城に着いたら、直ぐに会議室に通された。

 事が事なだけに、こればっかりは仕方ないよね。


「聖女様については、二十四時体制で看護にあたっている。また、当面は面会も限定して出来る限り不審者との接触を減らす様にしてある」


 陛下の報告に一度頷いていた。

 先ずは聖女様が目を覚ます事を優先にしないとね。


「しかし、診察した医務官がジンの対応を褒めていたぞ。あの毒は魔法では治療し難いものと報告を受けている」

「たまたまです。昔依頼を受けている際にレイナがヘビに噛まれて出血が止まらない時があり、たまたま手持ちの毒消しポーションで症状が落ち着いた事がありました」

「ふむ、たまたまか。では、今回はそのたまたまに感謝しないとならないな」


 あ、だからジンさんは聖女様の出血が止まらないのを見て毒消しポーションを飲ませる様に指示を出したんだ。

 陛下も、ジンさんの的確な指示に関心していた。


「サーゲロイド辺境伯も、色々と準備をしてもらったのにすまないな」

「いえ、聖女様が無事であれば何も問題ありません。あの様な子どもに何という非道な事をしたのかと思うと、私はとても残念でなりません」

「懐古派は、老若男女関係なく自分達に邪魔な者は等しく悪だからな。余も子どもが被害にあった事に対しては、とても残念な思いだ」


 聖女様は、何も悪い事をしていないのに被害にあった所がポイントだよね。

 教皇国側も、この点はかなり憤りを感じているらしい。


「こちらも暫くは警戒にあたる様にしよう。聖女様の殺害に失敗した懐古派が、次の一手を打ってくる可能性も否定できない」

「早速王都の巡回を強化しましょう。主要都市や貴族にも通達します」


 こうして会議は終わり、サーゲロイド辺境伯を領地に送ってからようやく一息つく事ができた。

 王族専用の食堂に、ジンさんも参加しての昼食です。

 王城にいたルーシーお姉様とエレノアも、僕達と一緒に昼食です。


「ティナおばあさま、今日はジンさんがいてくれて本当に良かったですね」

「そうね。冒険者としての知識が役に立ったわね」

「朝連れて行かれた時は、まさかこんな事になるなんて思わなかったですよ」


 ジンさんはもぐもぐしながら話していたけど、今回の事で王国でも教皇国でもジンさんの評価が鰻登りだ。

 

「ティナおばあさま、僕達はこの後どうしますか?」

「今日は夕方まで待機ね。当分は明日から朝から王城に来る事になるわ。ジンも今日は夕方までは待機してもらうわよ」


 こればかりは仕方ないよね。

 いつ聖女様が目を覚ますかわからないもんね。


「だから、皆はお昼食べたらお勉強ね」

「「「えー!」」」


 そしてリズ達は、思わぬ勉強タイムにガックリとしていた。

 更にジンさんはというと……


 カラカラカラ。


「「キャッキャ!」」

「何故、こんな事に……」


 ルカちゃんとエドちゃんの子守りをする事に。

 帝国に行った時もそうだったけど、ジンさんって本当に赤ちゃんに好かれるなあ。

 何故だという表情をしているジンさんに音の鳴るオモチャで遊んで貰って、ルカちゃんとエドちゃんはとってもご機嫌だ。


「ジンは本当に子どもの扱いが上手ね」

「明日からも、ベビーシッターをお願いしようかな」

「えっ!」


 子守りから解放され、ほっと一息ついた王妃様とアリア様の一言にジンさんはびっくり。

 こうして、ジンさんも明日から僕達と一緒に王城にくる事が確定したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る