二百七十五話 皆少しはしゃぎすぎ

 無事に王妃様とアリア様のお子様が産まれて、僕達は王城に行くたびに赤ちゃんと触れ合う事に。

 しかし勉強が疎かになっては元も子もないので、とあるルールが設けられる事になった。

 それは勉強が終わった人から赤ちゃんと触れ合える事にしたのだ。

 僕とルーカスお兄様は会議とかに参加する事もあるので、どちらかと言うと女性陣向けのルールとなっている。


「「「カリカリカリカリ……」」」

「いつもこの位真面目にやればいいのに」

「赤ちゃんと遊びたい効果って、とんでもないですね」


 ルカちゃんとエドちゃんと遊びたいパワーで、リズ達は黙々と課題をこなしていっている。

 真面目に勉強をやるリズ達を見て、ルーカスお兄様と僕は思わず本音が漏れていた。

 因みにスラちゃんはあっという間に課題を終わらせて、プリンと共に既にルカちゃんとエドちゃんと遊んでいた。

 スラちゃんはベビーシッターをするのにも慣れているから、王妃様とアリア様からもとても可愛がられていた。


「赤ん坊は寝ているのが仕事だから、当分は大人しいだろう」

「ハイハイし始めたら大変ですよ」

「双子の様なものですから、賑やかになりますよ」


 会議の冒頭の話題もルカちゃんとエドちゃん。

 赤ちゃんの話題だけあって、陛下と閣僚がにこやかに話をしている。

 少し話をした後、話題は教皇国の話になった。


「もう少ししたら、アレクには教皇国に接する辺境伯領に向かってもらう。警備体制を確認するため、軍務卿と外務卿も同行する」

「分かりました」


 いよいよ聖女様をお迎えする準備を始める事になった。

 僕達も色々動く事になる。


「国境での聖女様の出迎えには、アレク達に加えてルーカスとアイビーにも参加してもらう。滞在は王城とし、歓迎会も開く予定だ」

「分かりました。私も準備を進めます」

「日程は一週間後にアレク達が辺境伯領に向かい、三月の初めに聖女様を出迎える事になる。各々準備に抜かりのない様に」

「「「畏まりました」」」


 こうして僕達は、一週間後に辺境伯領に向かう事になった。

 とは言え共和国対応で別の辺境伯領に行ったことがあるし、新しく準備するものも特にない予定だ。

 会議はこれで終了し、僕とルーカスお兄様はルカちゃんとエドちゃんがいる部屋に向かった。


「余も一緒に行くか」


 ちょうど公務の間に入ったので、陛下も僕達と一緒についてくるらしい。

 陛下はノックもせずに赤ちゃんがいる部屋の扉を開けてしまった。

 

「入るぞ」

「父上!」

「「ちょっとまっ……」」


 かちゃ。


「「オギャー!」」

「あっ」


 勢いよくあいた扉の音にびっくりしたのか、ルカちゃんとエドちゃんは大声で泣き出してしまった。

 流石に陛下もヤバいと思ったのか、扉のノブを持ったまま汗をダラダラ流しながら固まってしまった。


「「赤ちゃんが驚くから、必ずノックしてくださいと言っていたはずです!」」

「すまん!」


 ばたん。


 王妃様とアリア様の怒鳴り声が聞こえてきて、陛下は反射的に扉をしめた。

 そう、反射的に勢いよく扉を閉めてしまったのだ。

 扉を閉めてから、陛下はしまったといった表情のまま固まっている。

 僕とルーカスお兄様は、陛下に気づかれない様にちょっとずつ離れていった。


 ガチャ。


「あなた、ちょっと」

「はい……」


 直ぐに扉がちょこっとだけあいて、ドアノブを持ったままの顔が真っ青な陛下は怒り心頭な王妃様に部屋の中に連行された。

 そして僕とルーカスお兄様はとある事を見ていた。

 最初に陛下が扉を開けた際に、しょぼんとした顔で正座をして、ティナおばあさまから説教を受けていたリズ達女性陣の姿が。


「アレク、食堂にいこうか?」

「はい」


 僕とルーカスお兄様は顔を見合わせて食堂に移動した。

 今、部屋に入るのはとても危険だと二人の理解が一致した瞬間だった。


 後で何があったかを王妃様から教えて貰ったけど、怒られても仕方ない内容だった。

 ルカちゃんとエドちゃんが寝始めたタイミングでリズ達がノックなしで部屋に入り、ルカちゃんとエドちゃんが泣き出してしまった。

 そしてようやく泣き止んで寝たタイミングで今度は陛下に起こされたと。

 結局扉にはノックをしてから入ると貼り紙されて、特にルカちゃんとエドちゃんを泣かせて怒られた人達は忘れない様にしていた。

 このルールは当分の間続く事になったのだった。

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