二百四十四話 ムノー子爵の泊る宿に突撃
「皆様、お待たせして申し訳ございません」
「いえ、夜分遅くにお手を煩わせました。マロード男爵も良く来てくれました。さあ、ならず者を捕まえに行きましょう」
「はい。よし、貴族が泊まる宿へ何人か向かうように」
「「「はっ」」」
僕とジンさんと一緒に来てくれたマロード男爵領の兵に木こりの宿の警備を任せていざ本丸へとなったタイミングで、マロード男爵も騎馬兵を連れて駆け付けてくれた。
ティナおばあさまはマロード男爵を労いつつも、直ぐに行動に移した。
貴族が泊まる宿へ向かうのは、僕とティナおばあさまとジンさんとカミラさんとレイナさん。
それに近衛騎士のジェリルさんとランカーさんが同行する事に。
冒険者のお姉さん達と他の近衛騎士は、僕らの宿泊する宿の護衛に回った。
マロード男爵側はマロード男爵に加えて騎馬兵が八騎。
更に先行して四騎が先行して貴族の宿泊する宿に向かっている。
そして忘れてはならないのがこのお二人。
「あほにはしっかりと落とし前を付けてもらわないと」
「うちの宿に手を出すなんて、見上げた根性だね」
冒険者のおばさんと宿のおかみさんも、当然の事の様に参加する。
「では、これからムノー子爵の捕縛を行う」
「「「おー!」」」
夜中なので煩くならない程度に、マロード男爵の掛け声を元に声をあげる。
というか、ムノー子爵が主犯って断定するのに僕が放火犯を鑑定する必要もなかったけどね。
放火犯と宿に押しかけた人物は一緒だったらしいし、マロード男爵曰く僕達以外にこの温泉街に泊っている貴族ってムノー子爵しかいないらしい。
という事で、皆で貴族が泊まる用の豪華な宿に向かいます。
とは言っても、僕達の泊まってる宿の直ぐ側なんだけどね。
「御館様、周囲に異常はありません」
「ご苦労、警戒を怠らない様に」
「はっ」
直ぐに目的の宿に到着し、先行していた騎兵がマロード男爵に周囲の異常なしを報告する。
一緒に来た八騎の騎兵も周囲の警戒に参加し、これでムノー子爵が逃げ出す事は不可能となった。
そして僕達は豪華な作りの宿に入っていく。
すると、直ぐに宿の主人と思われる人物が姿をあらわした。
おや?
主人は大分慌てた様子でマロード男爵に声をかけていったぞ。
「あ、領主様丁度良い所に。夜分遅くですが、これから兵に助けを求めようと思っていた所です」
「どうした主人? 随分と慌てているが、何かあったか?」
「はい。ムノー子爵が、宿の従業員の女性をお酌させるために無理やり連れて行ったんです。そして全く帰ってこないのです」
「なんと!」
「「「ふざけた野郎だ!」」」
うわー、ムノー子爵はレイナさんとカミラさんにお酌を断られたので宿の従業員に手を出したのかよ。
この話を聞いて、女性陣の怒りのボルテージがマックスに近くなったぞ。
口調がとんでもなく荒くなっている。
女性陣の怒気に、僕とジンさんはとっても怖くなっているよ。
と、ここで先行して宿に忍び込んでいたスラちゃんとプリンが僕の前に姿をみせた。
「あ、スラちゃんとプリンだ。部屋が大変みたい」
「よし、直ぐに向かおう。主人、マスターキーを」
「既にここに」
スラちゃんとプリンが、部屋が大変だと伝えてきた。
僕もスラちゃんとプリンの言いたい事は何となく分かる。
僕の話を聞いてきて、マロード男爵が宿の主人に声をかけていた。
「行くわよ!」
「アレク君も早く!」
「あ、はい」
待ちきれない様子でティナおばあさまと宿のおかみが走り出した。
僕も慌てて後をついていく。
ドタドタドタ。
夜中の宿の廊下を、人が駆け抜ける音が響く。
ムノー子爵はスイートルームに泊まっているという。
「あ、止まれ止まれ!」
「ここは通さないぞ!」
「止まれ、グハァ」
「「「邪魔!」」」
三階に上がると、スイートルームの前で兵が三人僕らを通さない様に立ち塞がっていた。
だが、ティナおばあさまと冒険者のおばちゃんと宿のおかみによって吹き飛ばされた。
うん、三人とも飛び蹴りって凄いなぁ。
兵は鼻血を出して完全に伸びていた。
「よし、開きました」
「いくぞ、突入だ!」
「おりゃー!」
扉の前を守っていた兵がいなくなった隙に、宿の主人がマスターキーでスイートルームを開ける。
そしてマロード男爵の号令を受けて、ジンさんとジェリルさんとランカーさんが部屋に突入していく。
続いて、僕達も部屋に入って行った。
「と、とま、どわあ」
「邪魔!」
部屋に入って直ぐに執事っぽい人が僕達を止めようとしてきたが、ジンさんの鉄拳を顔面にうけて無力化された。
更に数人の人物が待機していたが、直ぐにジェリルさんとランカーさんが無効化する。
「くそ、開かねえ」
「スラちゃん、お願い」
スイートルームの寝室には鍵がかけられていて、ジンさんがガチャガチャやっても全くドアが開く気配がない。
そこで以前も鍵のかかった部屋の侵入経験のあるスラちゃんが、ドアの僅かな隙間から侵入して部屋の鍵を開ける。
「「「いくぞー!」」」
ドアが開いた瞬間、ティナおばあさまと冒険者のおばちゃんと宿のおかみさんが寝室に突入した。
「な、何?」
「あ、貴様らは誰だ!」
「失礼ですわよ」
寝室の中は異様な光景だった。
ベッドにはこの宿の従業員と見られる女性三人が、着衣が乱れた状態で意識を失っていた。
そして、中年の太った男性に同じく太った若者に太った女性が裸でソファに座りながらお酒を飲んでいた。
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