二百四十三話 出兵準備
女性陣が放火犯に激おこでちょっと不穏な空気だけど、放火の事実をマロード男爵に伝えないといけない。
ここで好き勝手やったら、それこそ僕達が貴族主義って見られちゃうよ。
「ティナおばあさま。僕、マロード男爵の屋敷に行って事情を話してきます」
「そうね、兵を寄越してもらった方が良いわね。スラちゃんとプリンちゃんを、お馬鹿さんの監視に向かわせましょう」
「分かりました」
ティナおばあさまとも話ができたし、スラちゃんとプリンも直ぐに主犯の泊っている宿に向かっていった。
と、ここでジンさんが僕の事をちらりと見てレイナさんとカミラさんに話しかけた。
ジンさんはどちらかというと、女性陣のプレッシャーから離れたくてこの現場から逃げたい様だぞ。
「よし、俺もついて行こう。こんな時だから、アレクを一人で行かせるのは危険だ。説明をするのに大人も必要だろう」
「ジン、頼んだよ」
「アレク君に何かあったら承知しないよ」
おお、カミラさんがちょっと厳し目にジンさんに話をしている。
それ程、目の前の放火犯に激おこの様だ。
せっかく温泉を堪能して美味しい食事も食べたのに、全て台無しだもんね。
宿の周囲は近衛騎士が警戒しているし、宿の他の宿泊客の安全は確保されている。
何より、こういう時に一番突撃しそうなリズに事件に慣れていないサンディがまだ起きてこないのが一番の安全な事だ。
という事で、僕はマロード男爵の屋敷にゲートを繋いだ。
屋敷前に到着すると、直ぐに門番がジンさんに話しかけてきた。
この門番、ジンさんとは顔見知りの様だ。
「おや、ジン殿ではないですか。こんな夜更けに如何なされました?」
「おや? 何やら焦げ臭い匂いがしますね?」
「俺達が泊まっている温泉街にある木こりの宿が放火された」
「「えっ?」」
そっか、ジンさんは初期消火をしていたから、若干焦げ臭い匂いがしているんだ。
ジンさんが放火の事実を告げると門番はかなりびっくりした様子で、一人が直ぐに屋敷に駆け込んでいった。
すると、直ぐにマロード男爵を連れてきたよ。
自領内で放火と聞いてか、マロード男爵はかなり慌てていた。
「アレク殿下、ジン殿。温泉宿で放火があったと報告を受けましたが、一体何があったのですか?」
「僕達の宿泊していた宿が放火されました。何とかボヤでおさまりました」
「放火犯を捕まえたが、この後主犯を捕まえる予定だ」
「何と、そんな酷い事が......」
僕とジンさんが簡潔に説明したけどよりによって王族が宿泊している宿での放火事件なので、マロード男爵も絶句していた。
しかし、直ぐにマロード男爵は頭を切り替えて行動に移った。
「直ぐに兵を率いて現地に向かいます」
「すみません、お願いします」
「すまんな、俺らは一旦宿に戻ります」
「いえ、これは我が領で起こった事件です。私が動くのは当然の事です。むしろ皆様のお手を煩わせてしまって、逆に申し訳ないです。おい、何人か先行して行くように」
「「「はっ」」」
マロード男爵も事の大きさに段々と怒りが増してきたようだ。
門番を通じて直ぐに出兵の指示を出していた。
僕とジンさんはマロード男爵に援軍を頼むと、準備ができた先行兵と共に再びゲートを使って温泉宿に戻った。
「あ、ジンにアレク君お帰り。どうだった?」
「無事にマロード男爵に報告出来ました……」
「先ずは先兵を連れてきた。更に男爵が援軍を連れて来てくれるってよ……」
「そう、それは良かったわ。じゃあ、直ぐに動かないとね」
温泉宿に戻るとレイナさんとカミラさんが出迎えてくれたので、マロード男爵の屋敷での事を報告した。
報告したのだが、僕とジンさんはそれ以上に現場の放火犯の事が気になって仕方なかった。
「あの、放火犯の顔が腫れているのですが……」
「ああ、こいつら温泉の覗きまでしていたんだよ」
「本当にお馬鹿さんね。バレればどうなるか分かるもんだけどね。ああ、肝心の尋問の方もばっちりよ」
「そ、そうでございますか......」
おお、ジンさんが恐る恐るレイナさんとカミラさんに何があったか聞くと、プンプンして答えてくれた。
そりゃ覗きをされたら僕でも怒るけど、ちょっとやり過ぎの様な気もするよ。
レイナさんとカミラさんは、これくらいは当たり前の様に答えているけど。
「アレク君、男爵と話できた?」
「はい、先兵を付けてくれました。更に兵を引き連れて直ぐに駆けつけてくれるそうです」
「そう、それは良かったわ。ふふ、お馬鹿さんにはきっちりとお仕置きしてあげないといけませんね」
僕もティナおばあさまから声をかけられたけど、ティナおばあさまも未だに激おこ継続中だ。
いつの間にか寝巻きから完全武装に着替えているあたり、ティナおばあさまのやる気が凄いな。
よく見ると、レイナさんとカミラさんに冒険者のお姉さん達、そして近衛騎士の皆さんも完全武装をしている。
いつも薬草採取で一緒になっているおばさんも冒険者服に着替えているけど、宿のおかみさんも今度は剣士の様な服装に着替えている。
宿の中に残った近衛騎士も、着替えて準備万端だそうだ。
まだ寝間着のままの僕とジンさんは……
はい、直ぐに着替えて準備します。
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