二百二十四話 不穏な動きと豊作対応の検討会議

 辺境伯領と王都の五歳の祝いが近づいても、いつも通りに勉強はやらないといけない。


「「「「ふしゅー」」」」


 今日も王城でレイナさんとカミラさんの問題を解いていて、頭から煙が上がっている皆様方。


「ほら、皆まだ頑張らないと」

「サンディは全然平気って感じよ」

「皆とお勉強、楽しいです」

「「「「わたし達は大変なの!」」」」


 どうも初参加のサンディは地頭が良いのもあるが、皆と一緒に何かをやるのが楽しい様だ。

 まあ、他の女性陣はそれどころじゃなさそうだけど。


「まあ、勉強の難易度も上がってきているし、大変なのは分かるけどね」

「アイビーも屋敷でやっていた勉強よりも遥かに難しいのもあるから、苦戦するのは仕方ないですよ」


 レイナさんとカミラさんが苦笑しながら、頭から煙が上がっている女性陣を眺めている。

 因みに、僕とルーカスお兄様は今日の勉強は終わっている。

 なので、閣僚との会議に出ることになった。

 これからも、定期的に会議に参加する予定だという。


「ほら、二人は会議に行くのだから、少し休んだら勉強再開だよ」

「「「「ふあーい」」」」」

「それとも、閣僚との難しい会議に参加する」

「「「「勉強頑張ります!」」」」

「くすくす」


 女性陣は流石に会議に参加するのは嫌らしく、素直に勉強をすると言っている。

 サンディに笑われているけど、もう少し頑張ってもらいたいな。

 そう思いながら、僕とルーカスお兄様は会議室に向かっていった。


「そうか、サンディはそこまで賢いのか。事件がなければ、本当にルーカスの婚約者候補になってた可能性もあるな」

「当の本人は、今やアレク君に一目惚れしていますがな」

「ははは、タイミングが悪かったでしょう。白馬に乗った王子様が自分を助けてくれたのですから」


 会議の冒頭、今日の勉強の様子を伝えたら大人達が好き勝手に言っていた。

 くそう、僕がサンディを助けた場面が色々な所で御伽噺にされている。


「そういえば、サンディの件を絵本にする計画が上がっているとか」

「え!」

「うむ、監修は入るが、闇ギルドの残酷さを伝えるには良い教材だ。めでたしめでたしで終わるのも良い」

「あの」

「事実なだけに人気が出そうですな」


 おい、本当に御伽噺にするのですか。

 僕の抗議も無視されて話が進んでいった。

 ルーカスお兄様が、僕の事を気の毒な目で見ている。

 僕だって、泣きたいですよ!


「しかし、馬鹿な連中の動きが活発になっているのは事実だ。明確なトップがいなくなったから、覇権争いをしている」

「自分達が自爆してくれる分にはありがたいのですが、奴らは必ず周りを巻き込むだろう」

「既に配下の貴族に色々と命令している奴もいるという。軍も警戒にあたっています」


 僕をいじるだけいじって、急に真面目な話をし始めた。

 くそう、場の空気を変える為におもちゃにされただけですか。

 大抵はこの前おじさんやティナおばあさまからも聞いた話だから、目新しい物は無かった。


「国外の事が落ち着いているので、国内に注力しないとならない。この前の様に、闇ギルドが暗躍している可能性もある」

「馬鹿な連中にとっては、闇ギルドは使い勝手の良い道具ですから」

「その代償がどうなるのか、想像する事もできない馬鹿ですからな」


 とはいえ、そんな馬鹿を警戒しないとならないので、軍としてもたまったものではない。

 そして、別の話題へ進んでいく。


「今年は天候が安定したからか、穀物の収穫量が良いな」

「特に南部地域では、安定した収穫が数年続いています」

「灌漑設備を充実させている効果が大きいとの報告です」

「アレク、辺境伯から何か話は聞いているか?」

「はい、辺境伯領に沢山の人が集まってきているので、公共事業として灌漑設備の工事を行なっていると聞いております。工事を行わないとならない場所はまだまだ沢山ありますので、最低でも数年は事業が続きます。また、バザール領でも全く行われなかった農地の拡大を行っていますので、来年以降は更に収穫量の拡大が見込めます」

「うむ、的確な報告だ。穀物の長期保存方法と加工品への開発研究を進めよう」


 この間辺境伯様と話をしたけど、流石だと思った。

 投資をきちんとして、大きなリターンが返ってくる様にする。

 バザール領への支援も行っていて、開発が急ピッチで行われているという。

 特に農民の冬の間の収入確保の為に、既に新たな開発計画を立てているそうだ。

 僕もたまに治癒師として出張する事が決まっている。

 何かあっても現地で治療が受けられるとなると、作業員の安心度も違うという。

 それに税収が上がれば、国としても万々歳だ。


「そして、この際だが各領地の税率と税収を改めて調査する」

「税率が低く申請されているのに、民の暮らしが貧しいと何かあると思いますね」

「その通りだ。ルーカス、よく勉強しているな。税収が低い所にも調査を行い、必要によっては国からの支援を行う」


 この辺も対外的なトラブルが減って国内に注力できるようになったお陰だろう。

 不正を正す意味でも、キッチリとやるという。


 今日の会議はこれで終わり、再び勉強していた部屋に戻った。


「「「「ふしゅー」」」」

「「またか……」」


 相変わらず頭から煙をだしてへばっている四人がいた。

 サンディも少し疲れていたが、大丈夫の様だ。


「アレク君、今日の会議はどうだった?」

「あ、はい。穀物の収穫量見込みや、各領地の税制の調査とかを話しました。ルーカスお兄様もよく勉強していると、褒められていました」

「ほらね、会議に出て寝ているわけじゃないのよ。貴方達が代わりに会議に出る?」

「「「「無理!」」」」


 成程、僕とルーカスお兄様は難しい会議についていけないので寝ていると言ったのがいるみたいだ。

 流石にそれはないから、リズ達はその分しっかりと勉強して欲しいぞ。

 ほら、スラちゃんもプリンもアマリリスも頑張れって応援してるよ。

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