二百二十三話 親戚からの五歳のお祝いお茶会

 僕達の五歳の祝いも近くなり、是非お茶会に招待したいという誘いが増えてきている。

 絶対に僕とリズに婚約者を紹介する気満々だろうと、ティナおばあさまは殆どの誘いを断っていた。

 今日はその中でティナおばあさまに断られなかった数少ない貴族の屋敷に向かう予定。

 折角なので、サンディも一緒に行くことに。


 先ずはおじいさまおばあさまのお家こと、グロスター侯爵家に馬車で移動する。

 因みに同乗者はリズとサンディとティナおばあさま。

 そして侍従と近衛騎士が護衛についている。

 スラちゃんとプリンと共に、リズとサンディは馬車の窓から王都の景色を眺めていた。


「ようこそグロスター侯爵家へ」

「皆様、お待ちしていました」


 馬車から降りると、おじいさまとおばあさまが僕達の事をニコニコと出迎えてくれた。

 一緒に次期侯爵家夫妻とになると思わしき男女が、小さな子どもを抱いていた。

 この子が侯爵家の孫になるんだ。


「初めてお目にかかります。グレックスと申します」

「妻のナオミです。この子は息子のアーノルドですわ」

「あうー」

「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。アレクです」

「リズです」

「サンディです」

「はい、良くご挨拶が出来ました」


 ナオミさんが、順に挨拶した僕達の頭を撫でてくれた。

 すると、抱いていたアーノルドちゃんが僕達の頭を撫でるふりをして笑いを誘っていた。

 早速中庭に移動して、皆でお茶会を始める事に。


「甘いお菓子も用意しているわ」

「「わあ、ありがとう!」」


 リズとサンディは、紅茶よりも一緒に出されたクッキーに目が向いている。

 因みにまだアーノルドちゃんが小さいので、グレックス夫妻は屋敷の中に戻っていった。


「その子がサンディちゃんか。話には聞いているが、アレク君の所に居れば安全じゃ」

「そうね、今まで辛いことがあったけど、これからがとても大切よ」

「はい、有難う御座います」


 おじいさまとおばあさまが、サンディの事を気にかけながら話をしている。

 未来を向くように言う二人の言葉を、サンディは真剣に聞いていた。

 その様子を、ティナおばあさまもにこやかに見ていた。


「しかし、三人とも五歳か。大きくなったのう」

「リズ、大きくなった?」

「そうよ。最初にあった時よりも、ずっと大きくなっているわ」

「そうなんだ!」


 成長って、自分じゃ中々実感出来ていないよね。

 リズは、おじいさまとおばあさまから頭を撫でられてご機嫌だった。


「アレク君は相変わらずの活躍だな」

「国内外問わずの活躍ね。共和国での活躍も聞いているし、とどまる事を知らないわね」

「でも、周りの方に支えられているのも大きいです。勿論リズやスラちゃんにプリンにも助けて貰っています」

「アレク君はどんな場面でも冷静で、それでいて功績を上げてもおごらない。だから活躍できるのじゃな」

「仲間を大切にするのはとても大事よ。これからも忘れずにね」

「はい、忠告有難うございます」


 おじいさまとおばあさまは、僕の活躍を喜んでいるけどそれでいて忠告もしてくれる。

 この辺は身内っていうのもあるだろうな。

 これが知らない貴族だったら、僕の事をおだてて気を引こうとするだろう。

 僕にとって、あまり会えないけどおじいさまとおばあさまの存在はとても大きいんだな。


 一時間ほど中庭でお茶を飲みながら話して、僕達は侯爵家を離れて次の目的地へ。

 お次はブリックス子爵家へ向かう事に。

 そう、今日は僕達にとって親戚にあたる所に向かうのだ。

 グロスター侯爵家から下級貴族の屋敷が立っている地域に向かうと、直ぐにブリックス子爵家に到着。

 ここでも、おじさまとおばさまが僕達の事を待っていてくれた。


「ブリックス子爵家へようこそ」

「おじさま、おばさま、お待たせしました」

「大丈夫よ。さあ、皆で移動しましょうね」

「「はーい」」


 おじさまとおばさまは、早速僕達の事を中庭に招待してくれた。

 すると、そこには成人を迎えていると思わしき男性と女性が待っていた。


「紹介するよ。嫡男のジャクソンと婚約者のマリアーナだ」

「初めまして、ティナ殿下、アレク殿下、リズ殿下、サンディ嬢。ジャクソンともうします」

「同じく婚約者のマリアーナです」

「アレクです。宜しくお願いします」

「リズです」

「サンディと申します」


 おじさんが紹介してくれたのは、おじさんの息子と婚約者だった。

 とてもカッコいいのに、僕達にも丁寧に挨拶してくれてかなりの好印象だ。


「二人は来年結婚式を挙げる予定なんだよ」

「そうなんですね。僕達も、その時は是非お祝いさせてください」

「リズもいっぱいお祝いするよ!」

「わざわざ有難う御座います」


 招待状は改めて送ってくれるそうなので、僕もリズもサンディも結婚式をとても楽しみにしている。

 そして話は進むが、やはり僕の話題が多くなった。


「アレク君の事はこの国の注目でもあるが、逆に狙われる可能性もある。その危険性は常に頭に入れないとならない」

「闇ギルドだけでなく、国内の貴族からも狙われる可能性もありますね」

「残念な事に、ベストール侯爵の力が落ちたことで貴族主義の間では権力争いが激しくなってきている。暫くは事件が起きることを警戒しないとならない」


 確かに最近起きている旧ベストール侯爵一派の事件は、資金ぶりだったり凶悪さも増している。

 僕達の事を恨めしく思っている人もいるはずなので、警戒するに越したことはない。

 何か派手なことが起きてもおかしくないと、おじさんは言っている。


「気をつけないといけないのが、王都での貴族の五歳の祝いね。今年はアレク君だけでなく、貴族主義の子が多いのよ」

「リズ殿下とエレノア殿下がおりますので、王家に取り入るチャンスと一斉に子作りをした結果です。だが、既にアレク殿下が婚約者としているので、貴族主義の連中の恨みがアレク殿下に向く可能性もあります」


 ティナおばあさまとおじさんが僕に忠告してくる。

 そっか、エレノアとリズが生まれることは貴族の中では周知の事実。

 何とか関係をと思っていた所に、僕が現れたのか。

 うーん、子どもよりも大人の方が何かしてきそうだな。


「五歳の祝いは厳重な警備を行うわ。手荷物検査も行う予定よ」

「最近、色々な事件がありましたからね」

「今回は少し警戒しているの。子爵の言った通りに、馬鹿な一派が不穏な動きを見せているのよ」


 王城への帰り道、僕はティナおばあさまから五歳の祝いについて話を聞いていた。

 何事も無ければと思うが、僕も望みは薄いと思っている。

 因みにリズとサンディは、いつの間にか寝てしまっていた。

 リズはともかくとして、サンディは初めて会う人ばっかりだから疲れてしまったのかな?

 僕は二人の頭を撫でながら、馬車の窓から見える景色を眺めていた。

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