二百二十二話 ソフィアさんの懐妊発覚

「うーん、まだ分からないね」

「そうだね」

「まだ妊娠が分かったばかりだからよ」


 エレノアとリズが、ソフィアさんのお腹に耳をあてていて、それを見たジェイド様が苦笑している。

 今日は元々辺境伯領で行われる五歳のお祝いの話し合いをする予定だったのだが、別のお祝いもあるのでお兄様とお姉様もやってきた。


「ジェイドとソフィアにも子どもができたのね」

「まだ二人とも子どもだと思っていたが、時が過ぎるのは早いな」


 辺境伯様とイザベラ様がしみじみと話をしている。

 そう、ソフィアさんが第一子を妊娠したのだ。

 王妃様とアリア様はだいぶお腹が大きくなってきたけど、ソフィアさんはまだ妊娠初期で見た目は普通の人と変わりない。

 なので、リズとエレノアは不思議に思いながらソフィアさんのお腹を触っていた。


「それにしても、アレクくんの周りはいつも賑やかだね」

「新たなお嫁さん候補もできたし、いつも女の子がいっぱいで華やかね」


 そして、今日はいつものルーカスお兄様とルーシーお姉様とエレノアに加えて、アイビー様とサンディもいる。

 更には実家の事情聴取の関係でシェーンさんが不在なので、ミリアも一緒に来ているのだ。

 僕とルーカスお兄様以外は全員女の子なので、華やかっていうのもあるけどやかましいって側面もある。

 しかもここにいる全ての女の子が王族か次期王妃候補か貴族当主という、とんでもない構成になっている。

 勿論、近衛騎士もついてきているのだが、近衛騎士も何故か全員女性。

 とっても肩身が狭いのは、気のせいではないだろう。


「先に話を進めておくか。と言っても、着飾って教会に集まってお祈りをした後、うちの庭でパーティをやるだけだ」

「この前の結婚の簡略版ですね」

「移動も纏めてゲートを使うし、警備も厳重に行う。安全対策には気を使うよ」


 今回参加する五歳児は、全部で百人ほどで家庭の事情で参加できない人もいるという。

 参加者で僕とリズが最上位だけど、いつも冒険者の時にあっている保護者も多いのであんまり不安はない。

 因みにサンディも一緒に参加するというのだが、冒険者として何回か街の人に会っているので大丈夫だろう。

 という事で、今日の話し合いは終了。

 リズ達はまだワイワイと騒いでいるけど、ソフィアさんの負担になってはいけないので、全員で僕の屋敷に移動する。


「にーに、ねーね!」

「ミカちゃん、ただいま!」


 屋敷に戻ると、最近活発に動いているミカエルがトテトテと小走りでやってきた。

 リズがミカエルを抱っこすると、ミカエルはほにゃっと笑っている。


「「「か、可愛い!」」」


 ミカエルと接する機会の少ないアイビー様とサンディとミリアは、ミカエルの笑顔に釘付けになっている。


「はーい、外から帰ってきたら、皆手を洗いましょうね。おやつを用意していますよ」

「ちゃんと手を洗った人には、ご褒美をあげようかな?」

「「「はーい、直ぐに洗います」」」


 侍従のお姉さんが皆に声をかけると、素直に話を聞いて手を洗いにいった。

 因みに侍従のお姉さんも本当にお腹が大きくなっていて、辺境伯領での五歳の祝いが終わったら出産かなって言っていた。

 一気に赤ちゃんが二人も増えて、この屋敷も賑やかになりそうだ。


「しかし、ミリアの件もサンディの件もうまく落ち着きそうで良かった」

「そうですね。こうして笑っていられる様になって良かったですね」


 ルーカスお兄様とドタバタしている女性陣を見つめているが、ミリアとサンディの件は大体片付いた。

 ミリアの所はシェーンさんとシェーンさんの両親が積極的に捜査に協力して、捜査がかなりスムーズに進んだ。

 その功績も考慮されて、多額の罰金と当面役職や領地が持てないという罰はついたが男爵家は維持される事となった。

 サンディの所は、実は嫁に入った実家が伯爵家を乗っ取る計画を立てていたらしく、闇ギルドと共に計画の実行をしていた事が分かった。

 これは王都ではセンセーショナルに報じられて、大きな話題を呼んだ。

 サンディの伯爵家は伯爵家としてはお咎めなしになり、夫人の実家が厳罰に処された。

 とはいえ、偽物のロンカーク伯爵が不正に蓄えた財産は全て没収となり、ほぼ全ての侍従も不正に携わっていたので解雇されている。

 唯一サンディの世話をしていた侍従のみ、僕の屋敷に着いてくる事になった。

 サンディの王都の屋敷は当面国で管理して、ある程度サンディが大きくなってから改めて引き渡される予定だ。


「お兄ちゃん、こっちで一緒におやつ食べよう!」

「私、ルーカス様の部屋が見たいですわ!」

「「今行く」」


 僕とルーカスお兄様は顔を合わせて同じセリフを言ったことにクスリと笑ってから、それぞれ呼ばれた方に歩いていった。

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