二百十八話 アイビーの祖父
エレノアとリズの誕生日パーティの日。
僕は王妃様とルーカスお兄様と共にとある人との会談に参加する事になった。
目の前には、アイビー様と老人が座っていた。
老人と言いつつも、着ているスーツがムキムキの筋肉でパンパンになっていて、白髪の髪と立派な髭を蓄えている。
「アレクサンダー殿下、お初にお目にかかる。カーセント公爵と申す」
「ご丁寧にご挨拶頂き恐縮です。アレクサンダーです。アイビー様には、いつもお世話になっております。本日はエリザベスが参加できない非礼をお詫びいたします」
「うむ、噂に名高い神童と聞くが、実際に会うと神童では表現しきれない物を感じるな。それにエリザベス殿下は今日の主役ではないか。何も問題はあらんぞ」
何だか物凄く評価されたけど、カーセント公爵は鋭い視線で僕を見つめている。
流石は軍の中枢にいる人だ。
「アレクサンダー殿下とエリザベス殿下には詫びないといけない事がある。ご両親が亡くなりお二人が行方不明になった際、当時の軍務卿として事件を解決出来なかったのだ。本当に申し訳ない」
「カーセント公爵様、顔を上げて下さい。こうして僕もリズも無事に生きております。事件も解決出来ましたし、両親に花を手向ける事も出来ました」
「ありがとうございます、殿下は本当にお強い方だ。そんな方がルーカス殿下を補佐して頂けるのは、この国にとっても大きな財産となりましょう」
カーセント公爵も、僕達と両親の事件の事がずっと心に残っていたんだろう。
僕に話した事で、だいぶホッとした顔をしていた。
「ルーカスもアイビーも、アレク君と接してからはとても良い影響が出ています」
「その様だ。アイビーも前とあった時とは目つきが違う。ただ事件を通じて何かを見ただけではない」
王妃様の発言に、カーセント公爵が頷く。
そして、アイビー様が言葉を続けた。
「おじいさま。私は先日のポートコールの事件に携わる事が出来ました。その時にルーカス様とアレクより話があり、平民の置かれている環境、お金を稼ぐ事の大切さ、我々貴族は何をしないとならないか考える機会がありました。私は如何に恵まれた環境で育ったのか、ノブレスオブリージュについても考える事をしました」
「考える事はとても大切だ。考える事すらできない様では、それはもはや貴族とは言えない。ノブレスオブリージュも然りだ。アイビーは若くして考える機会を得る事ができた。そして素晴らしい考えを持つ友人に出会えた。これからもそうした縁を大切にしなさい」
「はい、おじいさま」
やはりカーセント公爵は閣僚を務めただけあって、考えがとてもしっかりとしている。
前に王妃様が話していたけど、王妃になるにはその者の家族の事も考えないといけないと。
カーセント公爵とアイビー様は、そこの所は申し分ないだろう。
もう一人の金に執着している伯爵とは大違いだ。
「歓談中失礼します。ロンカーク伯爵が王妃様とルーカス様に是非面会にと申しております」
ここで、侍従が面会を告げる来訪があったと報告した所、ここにいる人が一斉に渋い顔をした。
間違いなく、名前の出たロンカーク伯爵が娘をルーカスお兄様の嫁にとうるさい伯爵なのだろう。
「良い機会です。私とアレクくんで会談に出ましょう。どちらにせよ、ルーカスとアイビーはエレノアとリズの手伝いもあるのだから」
王妃様がとんでもない提案をしてきたぞ。
何でルーカスお兄様じゃなくて、僕が会談に参加するの!
と、ここで更に追加参加者が入ってきた。
「奴には余からも言わないとならない事がある。ついでに出よう」
「私も言いたい事があるのよ。勿論、娘ではなく金ピカ伯爵にね」
「奇遇ね。私も言いたいのよ、色々とね」
「陛下にアリア様、ティナおばあさままで……」
部屋に入ってきたのは、王族の大人達。
えーっと、この面子に僕も加わるの?
「アレク殿下なら十分にあの伯爵をやり込めるだろう。惜しい事は、私がその現場にいないという事だ」
「なら、公爵も参加すると良い。素晴らしい物が見れるぞ」
「参加を許可して頂き有難う御座います」
えーっと、陛下とカーセント公爵がニヤニヤとしているぞ。
何にせよ、この大人達は碌でもない事を考えているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます