二百一話 催し物の始まり

「なんだよ、これは?」

「これは私も聞いていないよ?」

「私も知らないよ」


 ブーケトスを終えたジンさん達は、とある物を目の前にして困惑していた。

 そう、オープンタイプの馬車がどーんとあったからだ。

 これって、この間ジェイド様とソフィアさんの結婚式でも使ったものでは?

 と、ここで数人の冒険者がこちらにやってきた。


「ハハハ、俺達からのプレゼントだ」

「領主様に相談したら、綺麗にして返してくれれば良いと許可されたぞ」

「皆貴族だし、パレードしても問題無いだろうって言っていたよ」

「「「えー!」」」


 ジンさん達が辺境伯様の方に視線を向けると、辺境伯様とイザベラ様がサムズアップしていた。

 それを見たジンさんとレイナさんとカミラさんは、ガクッと肩を落としていた。


「ほらほら、さっさと乗りな」

「ナンシーとルリアンもだよ」

「「えー! 私達もですか?」」

「当たり前だ。街の人も楽しみにしているぞ」


 ナンシーさん達とルリアンさん達も馬車に乗せられた。


「「「「うわー、カッコいいな」」」」

「なら、今すぐ替わるぞ」

「「「「頑張って!」」」」


 リズ達も馬車はカッコいいと思ったらしいが、乗るのは嫌な様だ。

 直ぐに僕の所にかけてきた。


「よし、出発!」

「「「わあー!」」」


 馬車は、何と騎士団長の部隊が警護しながら引っ張っていく。

 ジンさん達は流石に諦めて、沿道に向かって手を振っていた。

 沿道からも、凄い歓声があがっている。


「凄いね。ジンさん大人気だ」

「凄いね!」


 僕とリズもびっくりするくらい、ジンさん達は街の人から多くの声援を受けていた。

 余りにも声援が多いので、レイナさんとカミラさんも少し赤くなりながら手を振り返していた。

 しかも、ジェイド様とソフィアさんの通ったコースよりも長い距離を進むという。


 という事で、皆で教会からギルドに向かいます。

 ゲートを繋ぐと皆に言ったのですが、すぐ着くしこの冒険者の数に喧嘩を売る相手はいないと言うことで皆で歩いて行く事に。

 途中閣僚が寄り道をして出店とかで買い物をしていたけど、買い物をしたいからゲートを繋がなかっただけの様な気もする。

 

「おお、昨日よりも綺麗になっている!」

「今朝飾り付けを追加でしたのよ」


 ギルドに入ると、昨日の飾り付けから更に追加になっていた。

 昨日も飾り付けを手伝ってくれた冒険者のお姉さんが説明してくれた。

 そこに他の冒険者が茶々を入れてきた。


「このくらいしないと、女子力アピールできないからな」

「ハハハ、違いない」

「ちょっと、余計なことを言わないでよ!」


 ワイワイしている冒険者をすり抜けて、僕とリズは個室で侍従服に着替えた。

 すると、何故か一緒に個室に入ってきたティナおばあさまをはじめとしてルーカスお兄様にルーシーお姉様とエレノアが侍従服に着替え始めた。

 護衛できているジェリルさんやランカーさんも、執事服みたいな侍従服に着替えている。


「ティナおばあさま、なんで侍従服なのですか?」

「ふふふ、こういうのも楽しいと思ってね。それにレイナとカミラには、ルーカス達もお世話になっているし」

「先生の結婚式のお手伝いをするのも良い経験かと思いました」


 こう言われると何も返せないので、そのまま手伝って貰う事に。

 大人の人は優雅に料理を運んでいて、僕達は台車に料理を乗せて運んでいく。


「華の騎士様に接客されるとか、孫の代まで自慢ができるわ」

「違いないね!」


 主賓が来ていないのに既に一杯始めている冒険者達は、ティナおばあさまに接客されて上機嫌だ。


「何やっているのだよ、お前らは……」

「アレク君やリズちゃんはともかくとして、ティナ様も一体何をされているのですか……」


 ここに、パレードから帰ってきたジンさん達が登場。

 ティナおばあさまに接客されて上機嫌の冒険者に加えて、接客しているティナおばあさまの事を何しているのと言う目で見ていた。

 しかし、既に酔っ払っている冒険者達の暴走は止まらない。


「いよ! 主賓の登場だ!」

「はいはい、前に行ってね」

「ちょっと、押すなよ」


 ジンさん達の背中を、冒険者達が押している。

 そして、強引に席に座らせた。

 何はともあれ、披露宴の開始だ。

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