二百話 ジンさん達の結婚式の始まり

「それでは、新郎の入場です」


 ジンさんと共にダイアンさんとゴードンさんも入場してきた。

 それぞれ白いスーツを着込んでいる。


「なんだ。ジンよ、ガチガチじゃないか」

「ははは、顔が引き攣っているぞ」

「そこ、うるさいぞ」

「「「ははは」」」


 ジンさんの事を冒険者が冷やかしているけど、それを返すジンさんに余裕がない。

 ダイアンさんとゴードンさんが堂々と入場してきただけあって、余計にジンさんの緊張が目立っている。

 ジンさんのクラスメイトの女性からは、緊張してるジン君が可愛いと言われている程だ。

 ジンさんの妹のリリーさんは、そんな兄の姿にハラハラとしていた。


「それでは、新婦の入場です。皆様、暖かい拍手でお迎え下さい」

「「「わー!」」」


 拍手もあったけど、何故か男性冒険者から野太い歓声が上がっていた。

 レイナさんは商務卿と、カミラさんは父親である宰相の長男と腕を組んでいた。

 ナンシーさんとルリアンさんもそれぞれ父親と腕を組んでいる。

 みんな綺麗なウェディングドレスを着ていてとても綺麗なのだが、それ以上に目立っている人が一人。


「うっうっうっ、ぐず」


 そう、商務卿が盛大に号泣しているのだ。

 これにはレイナさんや他の新婦も思わず苦笑い。

 さっさと新郎に新婦を引き渡してしまおうということで、レイナさんが苦笑しながらズンズンと商務卿を引っ張っていく。

 ジンさんも流石に商務卿の姿を見て落ち着いたのか、商務卿に笑顔で歩み寄って何かを話している。

 しかし、商務卿は涙声で全然何を言っているか分からない。

 ジンさんは商務卿と抱き合ってレイナさんを受けとった。

 あまりにも商務卿がグタグタだったので、カミラさんとカミラさんの父親とは和やかに話をしていた。

 ダイアンさんもナンシーさんを、ゴードンさんもルリアンさんを受け取り、前に進んでいく。

 あ、商務卿が席に戻っていったけど、レイナさんのお兄さんと思わしき二人も号泣していた。


 さあ、気を取り直して結婚式の開始となる。

 司祭様の前に三組のカップルが並んだ。


「それでは、神様に三組の夫婦が誕生する事を報告する」


 神父役の司祭様の言葉で、結婚式が始まった。


「では、汝ジン・フォン・クライシスは、レイナ・フォン・ベリー、並びにカミラ・フォン・ニースを妻とし、終生愛する事を誓いますか?」

「はい、誓います」

「次に、レイナ・フォン・ベリー並びにカミラ・フォン・ニースは、ジン・フォン・クライシスを夫とし、終生愛する事を誓いますか?」

「「はい、誓います」」


 ジンさんとレイナさんとカミラさんの誓いの言葉が交わされた。

 ダイアンさんとナンシーさん、ゴードンさんとルリアンさんも言葉を交わし指輪を交換した。


「それでは、誓いの口づけを」

「「「うっ、うっ」」」


 誓いの口づけをしている時、商務卿の席からは未だに涙声が聞こえてきている。

 もうジンさん達も苦笑するしかない。


「おお、ここに三組の新しい夫婦が誕生しました。皆様、新しい拍手を」

「「「わーあ」」」


 もうこういう号泣者がいる事に慣れているのか、司祭様はあっさりと結婚式を終了した。

 出席者も大盛り上がりでジンさん達を送り出している。

 商務卿とレイナさんのお兄さん達は、何だか全力で拍手している。


 そして全員教会から出て、お待ちかねのブーケトス。

 今回は新婦が四人いるので、ブーケも四つある。


「ルーシーお姉様、リズ、エレノア。あの中に突っ込む勇気あります?」

「「「無理!」」」


 そう、今回チャンスがあると思って沢山の女性がブーケトスに参加しているのだ。

 女性の冒険者やジンさん達の同級生は勿論の事、冒険者ギルドの受付のお姉さんも参加している。

 うん、魔物が逃げ出す位の気迫を感じている。

 今回は流石にリズ達も遠くから見守る事になった。


「準備が出来ましたので、どうぞブーケを投げて下さい」

「「「「そーれ!」」」」


 四つのブーケが女性陣に向けて投げられた。

 うん、女性陣の気合いが更に高まった気がした。


「「「うわー」」」


 リズ達が引いてしまった程のブーケ争奪戦が始まってしまった

 ソフィアさんがブーケトスをした時よりも激しい戦いが繰り広げられていた。

 ブーケをゲットした人が高々とボロボロになったブーケを掲げている。

 うん、おめでとうと言っておこう。

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