百九十三話 髪は女の命

「そう、結婚式の準備のお手伝いをするのね」

「そうなんだよ。とても楽しみ!」


 次の日、王城に行った時にリズとスラちゃんとプリンがティナおばあさまに一生懸命に説明していた。

 あの、リズとスラちゃんはともかくとして、プリンは打ち合わせの時はずっと寝ていたでしょうが。

 リズは結婚式の準備がかなり楽しみの様で、全身で楽しみを表現していた。


「リズちゃんが飾り付けしてくれたと分かったら、ジンも喜んでくれるよ」

「うん、頑張るよ!」


 すっかりやる気になっているのは良いのだけど、僕としては気になっていることがある。

 またもやティナおばあさまのベッドの上に、沢山の衣装がどーんと並べられているからだ。

 これからイベントがあるから、どう考えてもその分の衣装だ。


「今日は夏用の冒険者服に、陛下の誕生日パーティの服と、新しい侍従服を用意したのよ。五歳の祝いの服はもう少し待っていてね」

「ティナおばあさま、何故侍従服もあるのですか?」

「うふふ、本当にたまたまよ。この間共和国に行った時に着ていたでしょ? ちょっと小さいかなって思ったのよ」


 確かにこの前共和国に行く道中で、僕とリズは侍従服をきていたけど、そこまで小さくないと思ったよ。

 あ、既にリズは諦めの境地にいる。

 そして、スラちゃんとプリンは、私関係ないよと言いたげにベッドの上で寝ていた。

 プリンはともかくとして、スラちゃんは狸寝入りだろう。


 それから二時間、僕とリズはまたもや着せ替え人形になっていた。


「うう、疲れたよ……」

「お疲れ様ね。あ、リズちゃんは誕生日パーティの服もあるから期待していてね」

「あ、うん。分かったよ、おばあちゃん」


 流石に着せ替え人形になって疲れてしまったので、ティナおばあさまのベッドでお昼寝をする事に。

 その際にまだまだ試着する物があると聞いて、リズは少しうんざりとしていた。

 もうそろそろお昼寝時間を少なくしないといけないけど、流石に今日はぐっすりと眠っていた。


「これくらいなら、まだまだ大丈夫だよ。うちのお母さんとおばあちゃんは、本当に色々と服を用意していたのよ」

「へー、そうなんだ」

「兄弟や親戚が男の子ばかりで、一人だけ女の子ってのも影響したわ」


 屋敷に戻ると、久々に辺境伯様の屋敷で夕食に招待されたので、リズがお昼の事を話していた。

 ソフィアさんの所はもっと凄い事になっていたと聞いてびっくりしていた。

 そりゃ、男の子ばかりの所に女の子が一人いたら、母親やおばあさんは可愛がるだろうな。


「男の子はあまり服のバリエーションは多くないけど、女の子は色々あるからね。私もエマとオリビアに色々と服を買ってあげたわ」


 そして僕達の話に加わるイザベラ様。

 辺境伯様とジェイド様は、少し苦笑いをしている。

 女性のオシャレに対する熱意は凄いからな。


「リズちゃんは髪が短いし結ぶ必要もないけど、髪が長い人はリボンとかもいっぱい持っているのよ」

「あ、そういえば侍従のお姉さんも色違いのリボン持っていたよ」

「そうなのよ。髪の毛に命をかけている女性もいるからね」

「そうなんだ」


 そういえば、髪の毛を色々とアレンジしている人もいるよな。

 僕は男だから髪は短い方が楽で良いけど、その辺りは考え方が違うよね。

 リズ、何で僕の事をじーっと見ているのかな?


「お兄ちゃんって、女の子の服も似合いそう」


 あの、リズさん?

 知っての通り、僕は男ですよ。

 何で女性ものの服が似合うっていうんですか。

 ほら、イザベラ様とソフィアさんがキラキラした目で僕を見ているよ。


「そうね、アレク君は美形だし、女装しても似合うかもね」

「この頃の男の子って、女の子より可愛い子もいるからね」

「あの、僕は男なので女装はしませんよ」

「「「えー!」」」


 だから、三人揃って何でそんなに残念そうな表情をするんですか?

 僕は若干貞操の危機を感じつつ、その日は何とかやり過ごしたのだった。

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