百九十話 お墓参り

 今日は少し暗めの服を着て王城に向かいます。

 リズも同じ様な服を着ています。

 

「さあ、行きましょうね」

「「はい」」


 ティナおばあさまも同じ様な服を着ています。

 そして王城の中の裏庭に行きました。


「あなた、久しぶりね。今日は孫が会いに来てくれたわ」


 何故このような格好をしているのかというと、ティナおばあさまの旦那さんにお花を手向ける為なのだ。

 この前の十年前の事を聞いて、僕とリズもティナおばあさまと一緒にお花をあげる事になった。

 そして、ここにはリズの両親も一緒に眠っている。

 僕とリズは、リズの両親のお墓にも花を手向けて祈りを捧げた。


「おばあちゃん、おじいちゃんってどんな人だった?」

「とても優しい人だったわよ。色々な人に分け隔てなく接する人だったわ。動物にも好かれていたわね」

「何だか、リズに似ているね」

「ふふ。そうね、そう思うとリズちゃんにそっくりね」


 ティナおばあさまは、少し笑いながらリズの頭を撫でていた。

 リズに似た人なのだから、とても明るい人だったのだろう。

 少しだけど、リズのおじいちゃんがどんな人か想像できた。

 そんな事を思っていたら、ティナおばあさまがある提案をしてきた。


「そうだわ、アレク君のお父さんとお母さんのところにもお花をあげないとね。今度日程を調整しないと」

「そうですね。僕もバイザー子爵領の事は、何となく避けていた様な気もします」

「アレク君の気持ちも分からなくはないけど、ここは一回きちんとしないとね」

「はい」


 という事で、日程を調整してバイザー子爵領へ向かうことに。

 ミカエルも一緒に帰って、久しぶりに実家に帰省します。


「わあ、こんな所だったんだ」

「僕達が住んでいた所はもうないけどね」


 バイザー子爵家の屋敷に着いて、リズとスラちゃんが興味深そうに辺りを見回している。

 僕達の育った離れはもう無いけど、何だか感慨深い気持ちもしている。

 そして、屋敷の一角にあるバイザー子爵家の墓にティナおばあさまと共に花を手向けました。

 スーッと風が吹いた気がしたので、両親が歓迎してくれたと何となく感じていた。


「こうして皆様がスクスクと育ってくれて、きっと先代様も喜んでいると思います」


 その後、屋敷の応接室に案内された僕達は、ベテランの侍従から話を聞いていた。

 応接室には一枚の絵が飾られている。

 貴族の夫婦に、何故か侍従が描かれている。

 なんだろうと不思議そうに見ていると、ベテランの侍従が教えてくれた。


「その肖像画は、皆様の祖父にあたる先代様です」

「リズのおじいちゃんなんだ!」

「左様で御座います」


 祖父は少しお腹が出ていたけど、バイザー子爵家らしく青い髪をオールバックに決めている。

 凛々しい顔なのは、絵画の影響なのかな?


「そして、その隣にいる御婦人が、アレク様とリズ様の祖母になります先代様の御夫人です」

「へえ、お兄ちゃんとリズのおばあちゃんなんだ。何だかお兄ちゃんに似ているね」


 先代夫人は椅子に座っていて、ウェーブのかかったロングヘアだ。

 僕の髪と同じくくすんだ金髪だ。

 確かに僕によく似ている。


「先代夫人は大変知的でおられました。まるでアレク様の様で御座います」


 何となく親近感が湧いてきた。

 こうして祖父母の話を聞くのは、とても大切だと感じた。


「そして、一緒に描かれている侍従がミカエル様の祖母になります。元々は分家の出となり、実は先代様とほぼ側室の様な関係でした」

「お祖父様とお祖母様は、この侍従の事を認めていたんですね」

「左様でございます。侍従に子どもができたときは、共に喜んでおりました。残念な事に産褥中に侍従は亡くなってしまいましたが、代わりに先代様が育てておりました」


 そう見ると、ミカエルに何となく似ている。

 髪型はおかっぱだけど、髪色や目の色はそっくりだ。

 気がつくと、ミカエルもこの侍従の事をじっと眺めていた。

 何か感じるものがあるのだろう。


「こうして、皆様がスクスクと育っていることを拝見でき、侍従一同感激しております」

「今までこうして来ることができず申し訳ないです。これからは時々やってくる様にします」

「有難う御座います。ご無理のない範囲でお願い致します」


 帰るときに、侍従全員が集まってくれた。

 色々あって複雑な感情も持っているけど、ここが僕達の実家だと改めて感じたのだった。

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