百八十九話 久々の穏やかな日
僕達が共和国から帰ってきて数日。
僕の屋敷でも、色々と人の動きがあった。
先ずは馬車で倒れていた親子だけど、本来はもう少し早く故郷に帰る予定だったのだが僕達が共和国に行く事になったので、少し残って貰っていたのだ。
そして、今日めでたく故郷に帰ることになった。
「本当に色々とお世話になりました。故郷に帰ったら、旦那の供養もしたいと思います」
「お気をつけて。本当にバザール子爵領まで送らなくていいのですか?」
「ええ、この街に来るときは景色を見る余裕もなかったので、今度はゆっくりと周りを見てみたいと思います」
「また遊びに来てください」
女性へは殺害された旦那さんの賠償金も入っているが、僕からも今まで屋敷の事を手伝ってくれたお礼も込めて少し多めにお給金を支払った。
「「ばいばーい」」
「またね!」
小さな子とリズがお互いに手を振っている。
せめてこれからは幸せになって欲しい。
「お見送り終わりましたか?」
「ええ、無事に馬車に乗って行きました。お姉さんこそ、屋敷に残っていていいのですか?」
「もう故郷はないしね。新しい環境で、暫くお世話になろうと思ったのよ」
馬車乗り場から屋敷に戻ると、元違法奴隷のお姉さんが出迎えてくれた。
外務卿とクレイモアさんの交渉で、違法奴隷とされた人は共和国で保護される事になった。
ブッフォンの所から保護された幼児と共に、心のケアにあたるという。
しかし、年長だった二人のお姉さんは、そのまま僕の屋敷に侍従として残ってくれる事になった。
この二人には、共和国から慰謝料も払われるという。
「それに、冒険者にも少し興味があるのよ」
「二人が楽しそうに話をしてくれるのが、私達にも良い刺激でね」
「分かりました。でも、少しずつリハビリしていきましょうね」
という事で、元違法奴隷のお姉さん改めクロエさんとノラさんが屋敷の侍従になりました。
クロエさんとノラさんの両方ともに身長も高いしスタイル抜群。
クロエさんは、元々青いロングヘアだったのだけど、バッサリとショートヘアに切ってしまった。
違法奴隷の間は髪を切っていなかったらしくて、元々はショートヘアだったという。
ノラさんは緑色の肩までのセミロングヘアで、ノラさんもロングヘアを切っていた。
たまに動きやすい様に、ポニーテールにしている時がある。
髪を切ったら、だいぶスッキリしたと言っていた。
侍従のお姉さん達もお腹が大きくなってきて、クロエさんとノラさんはその分の補助をしていたので、侍従のお姉さんとしてもだいぶ助かっているという。
「やっと落ち着きました。本当に忙しくて、屋敷に全然いれませんでした」
「イレギュラー案件ばかりでしたから。こればかりは致し方ないかと」
「チセさんに、屋敷の事を任せっきりにしてしまいました。申し訳ないです」
「いえ、そのために私がいるのですから。ですが、暫くゆっくりしてください」
執務室で書類を片付けながら、チセさんと話をしていた。
春から夏にかけてドタバタだったので、屋敷の事はチセさんに任せっきりにしてしまった。
「とはいえ、この先も沢山のイベントが……」
「そうですわね。陛下の誕生日パーティに、ジン様の結婚式。リズ殿下の誕生日パーティが終わると、辺境伯領の五歳の祝いに王都での五歳の祝いがあります」
「うん、今年はイベントが盛り沢山だ。年末までに無事に終わって欲しいなあ」
「アレク殿下、殿下はまだ幼児なのにまるでご老人の様な発言ですわよ」
うう、分かっているよ。
でもこんなにもイベントが沢山あると、愚痴を言いたくもなります。
思わず執務机に倒れ込んでしまった。
そんなタイミングで、リズが頭の上にスラちゃんとプリンを乗せながら執務室に入ってきた。
「お兄ちゃん、バーベキューやろ!」
「バーベキュー?」
「うん、庭で皆わいわいやるの」
「良いのではないでしょうか? たまにはそういうのもいいかと思いますよ」
「そうですね。他の侍従の人も集めてやりましょうか」
「わーい」
リズとスラちゃんは先日の共和国の時に、駐屯地で兵がバーベキュー形式で焼肉をやったのを聞いて羨ましいと思った様だ。
スラちゃんには防壁での検問とかの手伝いでお給料が出たので、早速街の商店に一匹でバーベキューコンロを買いに行っていた。
いやね、スラちゃんだから買い物できると思うけど、普通スライムは買い物しないから。
スラちゃんは街の人にも知れ渡っているので、街の人も何も言わないだけだよ。
因みにプリンにもお給料がでていたけど、プリンはまだアイテムボックスが使えないので僕がプリンのお金を預かっている。
「お肉焼けたかな?」
「もう大丈夫ですよ」
「リズ、お野菜も食べようね」
「うん!」
屋敷の庭から、ジュージューと肉や野菜が焼ける音が聞こえる。
流石に僕とリズが肉を焼くのは危ないとの事なので、早速クロエさんとノラさんが肉を焼いてくれている。
庭にテーブルとかを出して、皆でお肉を食べています。
ミカエルは大きいお肉は食べられないので、細かくしたお肉を一緒に食べています。
スラちゃんもプリンも、お肉を堪能している様で満足そう。
「皆で食べるお肉は美味しいね」
「そうだね」
初夏の昼下がり、僕の屋敷の庭では皆の楽しそうな声が響いていた。
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